愛情ホルモン「オキシトシンより」も長時間作用・高効果が見込める化合物の合成に成功

金沢大学、大阪大学、東北大学、北海道大学の共同研究グループは、社会性行動の調節に重要なホルモンであるオキシトシン(OT)の類似体を有機合成し、マウス体内で天然に作られる内在性OTよりも長期間作用し、効果も大きい化合物を新たに見出した。

OTは子宮や乳腺のような生殖器官、心臓および中枢神経系に作用するペプチドホルモンである。OTはまた、神経活動調節作用も持ち、多くの哺乳動物種の社会的なふるまいや認知・記憶といった社会的なコミュニケーションに重要な役割を果しており、「愛情ホルモン」とも称されている。最近では、自閉症などの精神疾患の中心症状である社会性交流障害に有効である可能性が示されるようになってきたが、これまでのOT類似化合物では、充分な薬理効果を証明できず、新たなOT類似化合物が期待されていた。

そこで、本共同研究グループは、OTの環状構造を作る-S-S- 構造を-SC-に変えたOT類似体であるカルベトシンを基に、7番目のアミノ酸「プロリン」にフッ化ベンゼン化グリシン、またはヒドロキシプロピル化グリシンを付加したOT類似化合物を合成し、それぞれ「化合物2」と「化合物5」とした。興味深いことに、これらの化合物は、OTよりも強力で、効果持続が見込めることが検討により明らかになった。

本成果により、これらの新規合成化合物が、自閉スペクトラム症等の症状改善に関わる新規薬剤として将来有効利用されることが期待される。

論文情報:【Journal of Medicinal Chemistry】Development of a Highly Potent Analogue and a Long-Acting Analogue of Oxytocin for the Treatment of Social Impairment-Like Behaviors

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