こんなの頼んでない

 こんなものを頼んだ覚えはない、今すぐに引っ込めてほしい…無理に例えるなら、お昼に入った食堂で、ラーメンを注文したのにチャーハンが出て来た時のような言い草だ▲しかも、出て来たものはラーメンとチャーハンほどには違っているようには見えない。さまざまに論議を呼んでいる金融審議会の「老後2千万円」報告書問題▲年金だけでは老後の生活費が大幅に不足するので、せっせと利殖に励んでほしい-乱暴に言えば、こんなふうに要約できそうな報告書だ。確かに言いたいことは山ほどある。不安を感じるなというのも無理な相談▲だから受け取りを拒否する、と麻生太郎金融担当相。「取りまとめの表現に問題があった」という。だが、大臣がどう言おうと報告書の中身は“なかったこと”にはならない▲そもそも、今回の話に限らず、専門的な視点から自由な議論を…というのはあらゆる審議会の大原則だ。だったら、出て来た結論はきちんと受け止めるのが当たり前の作法。不都合な報告ならいらないと言い出したら「お知恵を拝借」の仕組み自体成り立たない▲好みの味付けと少しでも違ったら一口も食べない-そんなお客は外食に出掛けないのが一番だ。受け取り拒否を7割が問題視している、と世論調査結果。当然の反応というほかない。(智)

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