偏見の広がりに懸念 「引きこもりイコール犯罪者ではない」 経験者らがトークイベント

引きこもり経験者の中村さん(中央)らが登壇したトークイベント=長崎市興善町、長崎市立図書館

 東日本大震災の被災地でボランティア活動に参加した引きこもり経験者の中村秀治さん(33)=長崎県北松佐々町=が16日、長崎市内のトークイベントに出演した。川崎市で児童らが殺傷された事件などの影響で、引きこもりの人を危険視する考え方に懸念を示し「偏見が広がってほしくない」と訴えた。

 中村さんは小学6年時に不登校となり、定時制高校を卒業後に就職したが、人間関係に悩み1年足らずで引きこもった。東日本大震災の後、「自分に何かできることがないか」と思い立ち、被災地で3カ月間、仮設住宅を訪問するなどの支援活動に従事。経験をまとめた本「おーい、中村くん~ひきこもりのボランティア体験記~」を出版した。

 中村さんは、引きこもり時の心境を「社会の役に立っていない。何の価値もない」と罪悪感に悩まされていたと振り返った。だが、被災地では「僕を否定せずに受け入れてくれる人がいた」と感じ、ボランティアや執筆活動を「母が否定せずに見守ってくれた」と感謝した。

 容疑者が引きこもり傾向にあったとされる川崎の事件については、引きこもりと事件を安易に結び付ける考え方に違和感を示し「引きこもりイコール犯罪者ではない」と強調した。

 イベントは医療関係団体や障害者団体などでつくる「医療と福祉を考える長崎懇談会」主催。約90人が参加した。

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