6月18日付

 「異彩」という言葉がぴったりだ。延岡市で「英心窯」を開く黒木英勝さん(76)の陶芸品は、器の内と外すべてに金箔(きんぱく)、銀箔を施すという独特の技法。先例はなく、試行錯誤を重ねてたどり着いたのだという。鋳物師を引退し、約10年前から陶芸を始めた黒木さん。きっかけは、都内有名ホテルのロビーに飾ってあった作品を見て「これなら俺にもできるかもしれない」と感じたことだったという。すごいのは、ただ思っただけで終わらせず、そこから基礎を学んで独自の作風を追い求めるまでの境地に結び付けた情熱だ。元来の職人魂に火がついたか。芸術・文化には、もともと制約などない。趣味の世界ならば、なおさら自由だ。自分の感性を信じて表現できる日々は、さぞや楽しいだろう。

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