「社会が壊れてしまう」 ヘイト規制へ条例を 相模原

ヘイトスピーチを防ぐ必要性を訴える安田浩一さん =相模原市南区相模大野のユニコムプラザさがみはら

 特定の民族や人種に対する差別と排斥をあおるヘイトスピーチを防ぐ方策を学ぶ講演会が16日夜、相模原市南区相模大野のユニコムプラザさがみはらで開かれた。4月の相模原市議選で選挙運動を装ったヘイトスピーチがあったことが報告され、人権侵害を防ぐための条例制定の必要性を訴えた。

 同市議選でヘイトスピーチを繰り返した極右政治団体に対し、落選運動を展開した市民団体「反差別相模原市民ネットワーク」の主催。ヘイトスピーチにどう立ち向かうかを多くの人に考えてもらおうと企画し、約80人が参加した。

 講演したのは、日本で暮らす外国人を長年取材してきたノンフィクションライターの安田浩一さん(54)。特定の民族に対して「出て行け」「死ね」「追い出せ」といった差別的言動が相模原市内を含む全国各地で横行している現状について説明した。

 安田さんは「ヘイトスピーチをしても誰も罪に問われない社会を、われわれはつくってしまった。いかなる理由があっても差別が正当化されることはない」と指摘。街頭で差別的言動が主張されていたら、まずは止めさせることが重要だとし「ヘイトスピーチを許すと社会が壊れてしまう」とその危険性を説いた。

 また、川崎市などの自治体で条例制定を目指した取り組みが進んでいることを紹介。「差別者にとって不自由な社会にすることが必要。『われわれの地域ではヘイトスピーチは許さない』という意思表示をするためにも、条例制定が必要だ」と強調した。

 講演後、同市内で活動している市民団体「ヘイトスピーチを許さないかわさき市民ネットワーク」事務局の山田貴夫さん(69)が活動を報告。成立から3年を迎えたヘイトスピーチ対策法の実効性が問われていることを念頭に、ヘイトスピーチを規制する条例には「明確で具体的な禁止条項を置き、ヘイトスピーチを含む人種差別には刑事罰を含めた制裁規定が必要だ」と訴えた。

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