先進医療を積極活用 長崎大学病院長 中尾一彦さん

中尾一彦さん

 〈4月に就任。高度、先進医療への積極的対応などの抱負、地域医療を支える人材育成や医師の働き方改革などに関する懸案について語った〉

 -就任の抱負を。
 県内唯一の大学病院、(高度医療に対応する)特定機能病院であり、県内医療の“最後のとりで”として、しっかりとレベルを維持したい。
 先進医療にも積極的に取り組む。県内で手術支援ロボット「ダヴィンチ」を導入しているのは当院だけ。積極的にいろんな領域の治療に役立てていきたい。人工知能(AI)診断は、進歩すれば離島、へき地の医療向上にも役立ち、非常に可能性を秘めている。他の医療機関に引けを取らないよう、県民に不利にならないよう対応していく。

 -地域医療を支える人材育成に、どう取り組むか。
 離島、へき地の医師不足が大きな課題。長崎大医学部は、卒業後の一定期間、県内で働いてもらう「地域枠」を年々増やしている。
 問題は昨年度導入された新専門医制度。若手医師が現場で経験を積み、任意の診療科の専門医資格を取る仕組みで、県内で資格を取った人はそのまま定着する傾向がある。だが国は都道府県ごとに育成する医師の数に上限を設定しようとしている。医師が足りない診療科は大病院に集約する動きが加速し、県内の医師偏在に拍車が掛かる恐れがある。離島などを抱えている地域の事情への、こまやかな配慮が必要だと感じる。

 -働き方改革への対応は。
 過重労働させずに高度な診療を維持していくには医師の数を増やすしかないが、人材育成にしばりが掛かると簡単ではない。へき地などには総合的に診られる医師を重点的に配置し、大病院では専門性を発揮できるようにする拠点化、役割・機能分担を、いずれはやっていかなければならない。医師でなくてもできる業務は看護師などに移行するなど、限られた時間を専門性に特化することも重要だ。

 -消化器内科医として、どんな仕事をしてきたか。
 私自身の専門は肝臓病で、ウイルス性肝炎と肝硬変、肝臓がんなどの治療。内視鏡を使った消化管がんの早期診断、治療や研究も行っている。消化器を専門にしたのは疾患が日常的で診療機会が多く、扱う臓器の種類も幅広いから。外科に行くか悩んだが不器用だから内科を選んだ。

 【略歴】なかお・かずひこ 五島市出身。1983年長崎大医学部卒、第1内科入局。日赤長崎原爆病院勤務などを経て2009年、長崎大学病院消化器内科診療部長。19年4月から現職。中尾郁子元五島市長の長男で、祖父は故久保勘一元知事。趣味はゴルフ、読書など。

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