「そのガンダム、買わせて下さい」 白血病の息子のためにガンプラを買おうとした父親が見た“信じられない奇跡”

ガンダムのプラモデル「ガンプラ」は日本のみならず東南アジアのタイでもそのまま「ガンプラ」と呼ばれて人気があるのですが、今、そのタイでガンプラをめぐる心温まる出来事が話題となっています。

ガンプラの売買をするFacebookグループにある男性が組み立て済みのガンプラを200バーツ(約640円)で買いたいと投稿しました。添えられた理由にはこう書かれていました。

「息子のトビーが白血病で学校に行けなくなりました。トビーはガンダムが大好きだと気付いたので私がプラモデルを組み立ててあげようとしたものの、慣れていなくて時間がかかり上手く作れません。そこで息子のために買わせてください」

この男性の息子トビーくん(5)は急性リンパ性白血病で3月から学校を休んで治療をしているのです。

この投稿はすぐにSNSで話題になり、タイ全国からのみならず海外からもトビーくんのもとに完成品やまだ組み立てていないガンプラが届き始めたのです。お父さんのFacebookやこのことを取り上げた有名Facebookページにはガンプラを寄付した人のコメントが多く寄せられています。

「早く良くなりますように。メッセンジャーで急いで送るね」
「僕もガンダムを送りましたよ。ご家族を応援しています。息子さんが早く治りますように」
「明日には君はタイで一番沢山ガンプラを持っている人になると確信しています。おめでとう。早く治りますように。ガンバレ!」

最初に届いたガンプラの山にトビーくんは目をまん丸にして今まで見たことがないほど大喜びしました。「朝起きて、夢ではないかと真っ先にガンプラを確認しに行った時のトビーの輝いた目をガンプラを寄付してくださったみなさんにお見せしたかったです」とお父さんはFacebookに綴っています。

6月8日時点で届いた荷物の数は180箱。1箱には1~3体、多いと10体入っていることもあり、合計約500体がトビーくんのもとに届きました。お父さんはその1体1体に送り主の名を貼る作業をしています。

他県から何時間も車を運転して持ってきた人もいました。バンダイのタイ正規販売代理店Dream Toy社の役員までが入手困難なモデルでタイ屈指のモデラーによる完成品を持参した上で、トビーくんに自らSDガンダムの組み立て方を指南。トビーくん自身初となるガンプラ組み立てを一緒に楽しんだりもしました。

「連邦軍とジオン軍の両軍が、組み立て時間を費やしてくれたみなさんの心とともにトビーの体内の悪い癌と一緒に戦おうとどんどん集結しています」
「みなさんの愛したプラモデルを手にしてトビーはとても喜んでいます。もはや癌は息子に何もできないって。息子は元気を貰いました」

お父さんの感謝の言葉です。いいこと言いますね。トビーくんは今、夢の中でもガンダムの数々の名言とともにガンプラを操縦して白血病の癌細胞と戦っているのかもしれません。(取材・文◎赤熊賢)

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