綾瀬 落合・吉岡土地区画整理が暗雲 地権者同意不足で

工業系用地の開発準備が休止した落合・吉岡土地区画整理事業予定地=綾瀬市南部

 2020年度上半期に開通が予定されている東名高速道路の綾瀬スマートインターチェンジ(IC)を生かした企業誘致の受け皿として、綾瀬市内で準備されてきた工業系用地の確保を目指す土地区画整理事業が暗礁に乗り上げたことが、明らかになった。地権者の合意形成が難航しているためで、施行主体になる組合の設立準備会が5月、活動休止に追い込まれた。

 落合・吉岡土地区画整理事業は、市南部の藤沢市境に広がる農地など約14.5ヘクタールを工業系用地として組合施行で開発する計画。地権者は92人おり、組合設立に向けた準備会が16年12月に設立され、説明会や意向確認が行われてきた。

 市などによると、準備会から5月7日付の書面として「準備会は権利者皆様からの機運が高まるまで活動を休止」などと記された通知が4月下旬、関係者に送付された。賛同率が78.3%で目標とした80%に達せず、県による組合設立認可が見込めないためとしている。

 工業系用地の確保は、製造業の集積度が高い綾瀬市にとっては重要施策。綾瀬スマートIC開通で周辺の交通利便性が高まり、企業誘致の好機との認識が広がったことから、受け皿の候補用地探しが始まったという。

 当初は市主導で1997年、新たな産業拠点として検討が本格化。2008年に勉強会がスタートし、今回の事業予定地を含めた周辺約50ヘクタールを対象に事業化を目指した。しかし、賛同者が増えず、14年に断念した経緯がある。

 その後、地権者有志が中心となり、規模を縮小するなどして計画を修正。土地区画整理法に定める組合設立認可基準である地権者の3分2以上(68%)の同意をクリアして16年12月に準備会を設立。民間の事業協力者も選定し、19年度中の組合設立を目指していた。

 開会中の市議会6月定例会に、地元住民が事実確認などを求める陳情を提出。松本春男氏(共産)も17日の一般質問でこの問題を取り上げた。

 松本氏は「農業を続けたいという地権者がいる以上、土地区画整理事業を進めるべきではない。市が主導した時代から問題提起してきたのに生かせなかった」などと指摘した。

 古塩政由市長は「準備会の活動休止を重く受け止めている」と答弁。「落合・吉岡地区のまちづくりは企業立地や雇用確保から、持続可能な発展を目指す本市にとって必要な事業であるとの思いは変わらない。(地権者の事業化への)機運が高まるよう環境整備に努力したい」と説明した。市は準備会へ助成金約7900万円を支出してきた。

 準備会の加藤功副会長は「農業従事者からの反対意見が強く、賛同率を80%に上げる見通しが立たず、休止の判断に至った。現時点で再開時期は未定。計画見直しの可否などを再検討し、この1年で結論を出したい」と話している。

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