参院選のニュースでよく聞く「野党共闘」ってどういう意味?

もうすぐ国会が会期末を迎え、第25回参議院議員通常選挙(以下、参院選)が行われます。参院選に関して、多くのメディアで「野党共闘」という言葉を目にする方もいるのではないでしょうか。今回は野党共闘とはいったいどういう意味で、何を目的として行われようとしているのかを考えてみることにしましょう。

野党共闘とは、広く言えば、「選挙で野党が結束して協力すること」を意味します。通常は別々の政党であり異なる本部を構え、掲げる理念や政策にも違いがある野党が、選挙時に結束します。参院選の1人区(1人しか当選できない選挙区)や衆院選の小選挙区で、複数の野党が候補者調整を行い、候補者を1人に絞ったり、政党間での候補者を相互推薦したり、比例区での統一名簿を作成したり、「オリーブの木」などに代表される政党連合を結成したり、といったものが「野党共闘」の具体的な方法として知られています。

では、野党共闘は何のために行われているのでしょうか? どの政党も成し遂げたい政策や、作り上げたい国家のビジョンがあり、それらは政党ごとに違いがあります。そんな中、なぜ野党はまとまろうとするのでしょうか。

候補者調整―野党候補同士の共倒れを避けて野党全体の議席を最大化

参院選の1人区や衆院選の小選挙区では、当選できる候補が1人しかいません。そのため、野党から複数人立候補すると、与党や政権に否定的な有権者の票の行方が、複数の野党候補者に分散し、結果として野党候補が共倒れてしまう可能性があります。選挙区における野党の候補者1本化は、政権や与党に対する批判票を死票にしないようにするために行われているのです。
また、1人区に限らず、複数人区(2人以上の候補が当選する選挙区)でも、似たような形で野党共闘が行われることがあります。

例えば、2人区(2人当選する選挙区)において、与野党から2人ずつ立候補すると野党の票が分散し、与党候補の2人が当選、野党からは1人も当選しないということが起こる可能性があります。こうした状況を防ぐため、野党が候補者を1人に絞る方法で「野党共闘」が行われることがあります。与党候補2人が当選するよりは、与野党から1人ずつの当選、という結果となったほうが野党にとっては議席数の最大化が見込めるのです。
こうした「野党共闘」が、今夏の参院選でも進められています。6月13日の時点で野党5党派は、32ある全ての1人区で候補者を一本化する目途を立てました。また、3つの2人区でも立憲民主党と国民民主党が候補者調整を行っています。

野党共闘に関する各政党幹部の姿勢は?

野党統一候補を擁立するため、24人の公認候補の内21人の擁立を取り下げた共産党の小池書記局長は、野党5党派の幹事長・書記局長の会談において、「お互いに譲り合って候補者を調整するという点で、大きな前進が確認された」と、候補者の一本化を前向きに捉えています。立憲民主党と2人区での候補者調整を行った国民民主党の玉木代表も、同会談後は「単に一人に絞るということではなく、応援体制自体を一つにして当選につなげることが大事。1人に決まったのであればできる限りの応援をしていきたい」と発言しています。鹿児島などの選挙区で候補者擁立を見送った社民党の吉川幹事長は、国民民主党の平野博文幹事長との会談後、記者団に「じくじたる思いはあるが、野党が分裂すると今の政権を利することになる」と野党共闘への思いを語っています。
一方、与党である自由民主党の岸田政調会長は記者会見で「政策や理念に大きな違いがある政党が候補者を一本化するのは、選挙対策と受け取られるのではないか」と述べています。

参院選では、1人区で野党5党派による候補者一本化の目途がつきました。しかし、結党以来「永田町の数合わせには与しない」との主張を続けていた立憲民主党の枝野代表は、複数区(改選数が2以上の区)について静岡市での記者会見時、「複数区は野党各党が候補者を立てて切磋琢磨する。その中で(野党)全体としてのパイを広げていくべきだ」と発言するなど、野党の歩みに若干のずれがあるという見方もできる状況です。
与党である自民党・公明党が近年の国政選挙では勝利を重ねていますが、参院選での野党共闘は選挙結果にどのような影響を及ぼすのでしょうか。選挙時のみならず、選挙後も続くであろう与野党の対決の行方にも注目です。

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