風魔忍者、進むブランド化 小田原、「哲学」など重視

甚川さん(中央)にならい、邪気を払う「九字」を切る講座参加者=おだわら市民交流センターUMECO

 戦国時代、小田原北条氏に仕えたとされる忍者・風魔一党のブランド化が進んでいる。一般への普及のため、9月の本格講座の前のプレ講座も始まった。観光資源として期待する小田原市は“忍者アドバイザー”と連携し、チャンバラや手裏剣などの娯楽性は尊重しつつも、「哲学」「文化」を重視した内容を目指している。

 「忍者は美男美女は向きません。諜報(ちょうほう)活動をするため、平凡で存在感がない人が向いています」。5日のおだわら市民交流センターUMECO(小田原市栄町)。講座「風魔忍術道場」で、集まった受講者を前に、忍者を職業とする甚川浩志さんが次々と忍者の固定観念を破っていく。耳新しい話の連続に受講生も引き込まれていった。

 甚川さんはかながわ西観光コンベンションビューロー(同)の専任忍者で、小田原市観光協会の「風魔一党指南役」でもある。今回の講座は風魔忍者の普及などを目的として、9月に本格的に開かれる講座のプレ講座だ。小田原のほか、北条氏の支配拠点があった横浜市や東京都八王子市でも開かれる。

 小田原市では6、7年前から、風魔忍者を観光資源とする取り組みを進めている。2015年に日本忍者協議会の発足メンバーとなり、これまでに「風魔まつり」などを開催。今年4月には旧歴史見聞館を改修して「小田原城NINJA館」をオープンさせた。

 並行して甚川さんらと風魔忍者のブランド化にも取り組んでいる。ただ、現在の国内観光地にあふれるチャンバラと手裏剣の忍者とは一線を画した、日本文化としての忍者を目指す。

 「娯楽性は否定しない」という甚川さんだが、それだけでは現在の忍者人気はブームに終わるという。「外国人が学びたいのは哲学。敵味方を決めつけず、できるだけ戦いを避けた忍者の『和の心』を伝えれば、たとえ忍術体験が高額でもやって来る」。政府が30年の訪日客数の目標を6千万人に設定するなどオーバーツーリズムが懸念される近い将来で、客単価に着目した観光に転換できるという。

 「小田原の地元でもこうした和の心を持った人が増えれば、訪日客に本物(の日本人)を見せられる。本当の忍びの里になる」と甚川さん。プレ講座は7月3日(小田原)、4日(横浜)、12日(八王子)にも開かれる。問い合わせは、小田原市観光協会電話0465(22)5002。

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