腹部に鉗子、23年間放置 激痛訴えるも「加齢」と説明

By 太田清

北オセチア共和国

 日本でも手術後にガーゼやチューブなど異物を残したまま縫合してしまい、後に見つかり大きな問題となる場合があるが、ロシアの場合は、比較にならないほどひどい医療事故が明らかになった。女性の骨盤部に23年間にわたって手術用の鉗子が放置されていたことが判明、女性は摘出手術を受けようやく鉗子を取り出した。大衆紙コムソモリスカヤ・プラウダ(電子版)が24日までに伝えた。 

 被害に遭ったのはロシア北カフカス地方の北オセチア共和国に住むエベタ・ゴベエワさん(55)で、1996年、同国首都ウラジカフカスの病院で帝王切開の手術を受けた。手術後、下腹部に激しい痛みを訴え何度も地元の病院を訪れ、超音波検査などを受けたが原因不明とされ、「加齢によるもの」などとの説明で鎮痛剤を処方されるだけだった。ゴベエワさんは教師の資格を持っていたが、痛みのため働くこともできなかったという。 

 駅や店舗の入り口の金属探知機(テロや犯罪を警戒し普通のスーパーでも探知機を置く店は多い)を通ると、いつも反応したがゴベエワさんはポケットの硬貨や鍵が反応したと思い込み、気にも留めなかった。最近になり膝の痛みから偶然、骨盤部を含むレントゲン写真を撮ったところ鉗子があるのが見つかり、長年の激痛の原因がようやく判明。ゴベエワさんは同共和国ベスランの病院で鉗子の摘出手術を受け成功した。ゴベエワさんの夫は帝王切開をした病院側に損害賠償を請求するとしているが、手術を担当した医師は既に死亡しているという。

  同紙によると、ロシアでは同様の医療事故が相次いで明らかになり大きな問題となっている。バシコルトスタン共和国では男性の腸の部分に15センチの鉗子が17年間にわたり放置され男性は死亡。クラスノヤルスクでは半年間にわたり女性の体内に20センチの鉗子が残された。 (共同通信=太田清)

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