スピニングリール最大の敵、糸ヨレ
こんにちは、リールマニアの佐藤稜真です。
みなさんは「糸ヨレ」という現象をご存知でしょうか。糸ヨレとは“ラインがねじれること”を指し、ラインブレイクやバックラッシュの原因となる非常に厄介な存在です。
スピニングリールは糸を回収する時に、ガイドを通って戻ってくる縦方向のラインが、スプールへ横方向に巻かれるため、必ず糸がねじれてしまいます。
キャスト→回収の動作を何度も繰り返すうちに、糸にねじれが蓄積され、ライントラブルの原因になるのです。
それを解消するためのラインローラー
構造上の問題とはいえ、ライントラブルが頻発したら堪ったもんじゃありません。そこで活躍するのが、ラインローラー。
ラインローラーは糸ヨレを解消する役割を担うのですが、ダイワには“究極”ともいえるラインローラー「ツイストバスター」があるのです。
ねじれた糸を逆にねじる!
ねじれた糸はなかなか元には戻りません。そこでダイワが打ち出したのが、“ラインローラーにテーパーをつける”という発想です。
ラインローラーにテーパーをつけることにより、糸が逆方向にねじれます。
つまり、ねじれた糸をねじり返すことで、ねじれがプラスマイナス・ゼロに近づいて糸ヨレが軽減されるのです!
理屈は分かるけど……
しかし、ここで「糸の種類によってねじれ方は変わるのでは?」と気づいたリールマニアの方もいるのではないでしょうか?
糸の種類や太さによって適切なテーパー角は異なるため、ダイワの技術者はなんと、キャストとリトリーブをひたすら繰り返してテーパー角を割り出したのです。
技術者魂の結晶
実験は初歩の初歩、糸ヨレを数えるところからスタートし、さまざまなテーパー角のラインローラーで実釣と検証を重ねたようです。
コンピューターによる計算ですぐに角度を割り出せそうですが、糸の太さや竿の角度によってヨレ方が異なるため、“実釣スタイル”にこだわってデータが集められました。
まさに、技術者魂の結晶と言っても過言はない代物なのです。
その歴史は長い
じつはこの技術、90年代後半にはもう登場していたんです。知らなかった方も多いのではないでしょうか?
現在はツイストバスター2とフロロライン専用設計のツイストバスターRがあり、エントリーからハイエンドモデルまでのダイワ製全スピニングリールに搭載されています。
気づいてないかもしれませんが、いまお使いのリールにも搭載されているはずですよ。
もっと知ってほしい!!
ダイワのサイトでは「(ツイストバスターは)空気のようなもの、しかしその大切さに気づいて欲しい」と語られています。
同社のマグシールドやAGSといった技術は大々的に宣伝されていますが、ツイストバスターの名前を聞くことは少なく、まさに空気のような存在になっています。
日々新たな技術やリールが登場していますが、20年近くも釣り人を支え続けている技術があることを、リールマニアはもっと知って欲しいと思うのです。
筆者紹介
佐藤稜真
某リールチューンメーカー在籍時、全国のイベントで年間100台以上のリールをメンテナンスしていた経験を持つ。
中学生の頃からカタログのスペックを暗記するほどのリール好き。関東のフィールドでのエリアトラウト・シーバスフィッシングをメインにしている。