実刑確定で横浜地検が収容しようとした男が逃走した事件で、休校が続いていた愛川町と厚木市の公立小中学校45校が24日、再開した。5日ぶりの登校風景に子どもたちの明るい表情が戻った一方で、保護者らからは不手際続きの捜査機関への苦言が相次いだ。
「おはよう」「頑張ってね」。男の自宅から徒歩圏内にある愛川町立田代小学校。ボランティアや保護者らの声掛けを受けながら、学びやに向かう児童たちに笑顔がのぞく。
19日の逃走開始から、約90時間後の23日に事態はようやく収拾。男が車を乗り捨てたアパートに近い厚木市立三田小でも24日朝、友人らとの再会に子どもたちは笑みを浮かべた。
三田小3年の次男に付き添った会社員の母親(47)は「不安で外出できなかったので、子どもにもストレスがあったと思う。久しぶりに友達に会え、これで安心して通わせられる」と胸をなで下ろす。三田小で子ども見守り隊を務める大澤雄次さん(75)も「子どもの明るい顔が見られ、本当に良かった」とほっとした様子だ。
ただ、地域住民や保護者らの捜査機関への不信は根強い。
田代小の通学路に立った70代の主婦は「(地検職員ら)7人もいて何とかできなかったのか。警察官も何のために同行していたのか」と逃走を許したことを憤る。「相手は4カ月も出頭してこない人間。逃げられないようにする体制が不十分だったのではないか」と疑問を投げ掛けた。
地検の公表が事件発生から3時間以上も経過した後だったことへの不満も消えていない。保護者の女性は「男が逃走した時間帯が子どもの下校時間だった。出くわしてていたらと思うと今も怖い」と話す。田代小近くの70代主婦も「地元への連絡が遅すぎる。逃走の失敗を取り戻そうとしたのかもしれないが、住民の安全は大事じゃなかったのか」と語気を強めた。
三田小の清水良校長(55)は「捜査の都合で出せない情報もあると思うが、地域の安全のために早めに情報を出してほしかった」と残念がる。「休校中、子どもの声が聞こえない学校を寂しく思っていた。保護者、地域と連携して今後も子どもらの安全確保に努めたい」と語った。
19日の事件発生後、愛川町と厚木市の両教育委員会は20、21日、全公立学校で休校の措置を取った。男が確保されない場合でも、警察官らによる見守りを強化した上で24日から再開することを決めていた。