DV解決へ接し方学ぶ 加害者更生プログラム・記者が体験 被害者支援で広がる取り組み

更生プログラムを体験する記者たち=長崎市魚の町、市男女共同参画推進センター・アマランス

 社会問題化して久しいドメスティックバイオレンス(DV)。DV対策といえばこれまで、被害者の女性が「逃げる」、関係機関が「保護する」ことに力点が置かれてきた。ただ近年、加害男性への更生プログラムを通じて解決を図る取り組みも広がりつつある。長崎市の団体が実施するプログラムを体験した。

 5月31日夜。長崎市内の会場に、県内の新聞社やテレビ局で働く男性記者7人が集まった。マスコミ向けのプログラム体験会で、主催したのは専門家でつくる「ながさきDV加害者更生プログラム研究会」。約1年前から、加害男性を対象にしたプログラムを実践している。

 昨年6~11月に第1期、今年1~5月に第2期をそれぞれ実施し、40、50代の男性計4人が受講。参加者同士の議論やロールプレイ(役割演技)を通じ、暴力を用いずに相手と接する方法を学ぶ。参加者は、パートナーや職場での人間関係が改善されるなどの効果が表れているという。

 宮本鷹明代表は「プログラムはあくまで被害者支援の一環。男性の『暴力』を解決しなければ、DV被害は減らない」と話す。

 体験会では宮本代表と女性臨床心理士が進行役を務め、まず「暴力とは何か」を話し合った。「ののしる」「手を出す」「放置する」。参加者から一通り意見が出ると、宮本代表は「暴力とは相手の意志や尊厳をないがしろにし自分の意志や要求を押しつけること。本質は相手の支配(コントロール)」と説明した。

 家族の食事の場面で夫役の男性が突然サンマの焼き方をめぐって怒りだすビデオを見て「怒り」の理由を考えたり、暴力につながりやすい考え方の有無などを探る質問票に答えたりした。無意識にふたをしていた自分の内面を見つめ直すようで少し緊張した。

 終了後、参加した記者たちは「DVの傾向があるのではないかとハッとさせられた」「感情をコントロールする技術を学校でも指導した方がいい」「相手のことを考え、行動するのが大切と痛感した」などと感想を言い合った。

 ただ、加害者に対し強制的に更生プログラムを受けさせる仕組みはない。加害者更生に取り組む全国の団体が国に法制化を求めているが、実現するかは見通せない。

 同研究会の佐藤紀代子副代表(臨床心理士)は「先進国のカナダでは加害者が無料でプログラムを受講できる制度がある。日本でも配偶者に対する暴力で逮捕されたりした人たちには強制的に受けさせる仕組みがないと、真の被害者救済につながらない」と話す。

 ■第3期プログラムの受講者募集

 「ながさきDV加害者更生プログラム研究会」は、7月から実施する第3期プログラムの参加者を募集している。6月28日午後7時から長崎市魚の町の市男女共同参画推進センター・アマランス会議室で事前説明会を開く。参加無料。
 第3期は7月16日午後7時から長崎市内で開始。週1回、全18回実施する。対象は男性で、パートナーとの関係を改善したい人。年齢は問わない。料金は全18回で計4万8000円。
 問い合わせは同研究会(電070.2833.7399、ファクス095.807.2361、電子メールinfo@nondv.com)

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