長崎の教訓 無駄にしない EU大統領が献花 爆心地公園

原爆落下中心地碑に献花するトゥスク大統領=長崎市、爆心地公園

 20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)に合わせて来日した欧州連合(EU)のトゥスク大統領は26日、長崎市を訪問した。松山町の爆心地公園で原爆落下中心地碑に献花した後「世界の超大国のリーダーは被爆地長崎の教訓を無駄にしない責任がある」と訴えた。
 EU大統領の長崎訪問は初めて。2月に田上富久長崎市長と松井一実広島市長がG20参加国首脳に対し被爆地訪問を要請していた。
 トゥスク氏は長崎原爆資料館(平野町)で田上市長の出迎えを受け、館内を見学。隣接する国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館では、芳名録に「長崎の悲惨な教訓を記憶にとどめないと、われわれ人類は生き残れないだろう」と英語で記帳した。長崎市議会議長で被爆者の佐藤正洋氏と長崎原爆被災者協議会の田中重光会長と面会し、2人の被爆体験に耳を傾けた。
 トゥスク氏は爆心地公園で「相手を脅かすために核を利用する脅威はいまだに存在している」と指摘。北朝鮮やイランを巡る問題、米国と中国の貿易摩擦などに触れ「世界は瀬戸際に近い所に立っている。さまざまな事態や変化を完全に制御していると信じるふりを続けているが、それは幻想だ」と訴えた。
 田上市長は「世界のリーダーの被爆地訪問は事実を未来へ伝える上で大きな力になる」と語った。田中会長も他の欧州各国首脳の訪問を期待した。
 トゥスク氏はこの後、広島市も訪問し、原爆資料館を視察した。

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