植物性代用肉へ消費者の関心高まる:環境負荷を低減

大豆たんぱく質を使った植物性代用肉を製造する米インポッシブル・フーズ(Impossible Foods)は2019年のインパクトレポートを発行した。同社は最近、米バーガーキングと植物性代用肉を使ったハンバーガーを共同開発するなど話題を呼んでいる。(翻訳=梅原洋陽)

このレポートは、同社の取り組みがマーケット全体の環境負荷対策にどのような影響を与えているか、業務改革によってサステナビリティ目標をどれぐらい達成できているか、食生活を変革するという差し迫った目標をどれぐらい促進できているかを報告している。

同社の最終目標は、2035年までに動物への依存をなくすこと。読者には早急に行動を起こすことを求めており、気候や生物多様性、食に関して文化的そして科学的な視点から訴えかけている。

インポッシブル・フーズは、米ビヨンド・ミート(Beyond Meat)や欧州のマックス・バーガーズ(Max Burgers)、香港のライト・トリート(Right Treat)と並び、食物由来のタンパク質を生産するという世界的に拡大している動きをけん引する企業だ。米NGO WRI(World Resources Institute:世界資源研究所)は「Cool Food Pledge」に取り組み、WWFも報告書『未来の50食材』を発行している。さらに、ネスレも植物由来の商品を出しているなど大きな関心を集めている。

サステナブル・ブランドの新たな取り組み「#BrandsForGood」の共同研究では、多くの植物を食べるというのは「より持続可能な未来を築くために必要な9つの消費者行動の変化」のうちの1つだと発表されている。

インポッシブル・フーズはここ数年でさらに注目されるようになり、ベンチャー・キャピタルからの投資も集めている。同社は、健康に良い栄養価の高い食品を製造しながら、エコシステムを再構築し、増加する人口に持続可能な方法で食料を提供するというミッションの下、環境フットプリントが動物性の肉より遥かに少なく済む、植物性の肉をつくっている。

インポッシブル・フーズとバーガーキングが開発したインポッシブル・ワッパー

2019年、同社は商品の改良と共に牛ひき肉の使用をなくすという目標に向けて大きく動き出した。実際、Impossible™ 2.0のレシピは持続可能で栄養価の高い商品だという信頼性を集め、大人気の商品となっている。インポッシブル・バーガーは香港やシンガポール、マカオ、米バーガーキング、Live Nation、Qdoba、Red Robin、Umami Burger、White Castleなど 9000店以上のレストランで販売されている。

インポッシブル・フーズは、植物性代用肉を製造しているビヨンド・ミートと共に、2018年の国連地球大賞も受賞している。動物由来の肉に変わり、高品質のベジタリアン向けの肉を提供し、消費者に植物性の食事がもたらす環境に対する良い影響を伝えたことが評価された。

レポートは社内研究の結果を引きながら、インポッシブル・フーズの売り上げがそのまま環境負荷の軽減につながっていると報告している。肉を食べる消費者の嗜好をより環境に良く、地球に優しい肉製品へと変えているという。

消費者が2018年に牛肉を使用したバーガーでなく、インポッシブル・バーガーを意図的に選択したとすると、同社はアメリカの自家用車が2.5億マイルを走るのと同量の温室効果ガスの排出を防ぎ、サンフランシスコと同じぐらいの土地を守り、300万人が使用する量の水を節約したとなるようだ。

「動物を食べることは、地球の食料システムの中では当然で、仕方がないことだとされてきました。しかし、動物を食べるという傾向は加速するばかりで、環境、水源、生物多様性に与える影響は計り知れません。十分な認識がされるとは言いがたいのが現在の状況です。今すぐ行動をしていくべきです」とインポッシブル・フーズの創設者でありCEOのパトリック・ブラウン博士はいう。

インポッシブル・フーズが変革する

インポッシブル・フーズの成功の秘訣には同社独自のさまざまな取り組みがある。レポートによると、従業員や消費者、コミュニティ、地球に対する多くの取り組みを行なっている。

1月のインポッシブル・バーガー 2.0の立ち上げと同時に、同社はサステナビリティ・コンサル会社Quantisとライフサイクルアセスメント(LCA)を実施するために連携を始めた。

レポートは従来の牛肉のハンバーガーとインポッシブル・バーガーが環境に与える影響の違いに関して詳細に報告している。そして、よりフットプリントを減らし、本物の肉のような風味を出す分子ヘムやハンバーガーの製造に必要な水の量を減少させるイノベーションなど、今後展開していく戦略についても紹介している。
 
レポートは近く発表される研究の一部についても言及。この研究では、動物の代わりに植物由来の肉を製造していくことが、炭素を吸収していく可能性を持っていると伝える。飼料の生産や家畜によって荒らされてきた自然のエコシステムが本来の生物量と多様性を取り戻せるようになるかもしれない。この発見は、主に植物を食べる食生活が気候変動への影響をどれだけ低減できるかを教えてくれることになるだろう。炭素を抑えるために最も重要な土地が、食肉の生産のために次々と失われていることを忘れてはいけない。

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