ようやく梅雨入り

 個人的にそう呼んでいるにすぎないが、うちの近所に「アジサイ通り」がある。道路の脇に十何本か植えられていて、今月に入った頃からか、ピンク、青紫、赤紫の花を咲かせている▲通るたびに見とれるが、晴天にアジサイはどうも似つかわしくない。近頃は土に潤いを欠き、花々は生気を失っているように見えた▲干天の慈雨を待ちかねていたのは、アジサイに限るまい。本県を含む九州北部地方におととい雨が降り、ようやく梅雨入りした。統計を取り始めてから最も遅かったのは1967年の6月22日で、これをほぼ半世紀ぶりに更新し、平年よりも21日遅かったという▲じめじめして憂鬱(ゆううつ)な時季が来た、と例年ならば思う。「いいかげんやってこい」と、こんなにも梅雨入りが待たれた年をほかに知らない。田植えの時節に農家は胸をなで下ろしている▲長崎市などではきのうの日中、晴れ間も見えたが、予報では向こう1週間、雨が多くなる見込みという。5月1日以降、本県は少ない所で平年の3割台しか降っていない。遅れてきた梅雨はいつ“本降り”になるだろう▲きのう通った「アジサイ通り」で、花々は心なしか鮮やかさを増したように見えた。「異常気象の常態化」などといわれる昨今、少なすぎず、降りすぎず、梅雨の滴が土を程よく潤すことを。(徹)

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