【MLB】大谷翔平は「最もエキサイティングなDH」米メディアは二刀流復活にも期待

2年連続2桁本塁打を放ったエンゼルス・大谷翔平(左)【写真:Getty Images】

ブルペンで投球練習を再開させた大谷、二刀流復活へ期待も…

 26日(日本時間27日)に昨年の右肘靭帯再建手術以降、初めてブルペンで投球練習を再開させたエンゼルスの大谷翔平投手。来季の二刀流復活への期待が高まる中、米メディアは豪快なバッティングから「球界で最もエキサイティングなDH」と大絶賛している。

 今季投手として出場できない大谷だが、“一刀流”でも称賛を集めている。「ショウヘイ・オオタニが復活。球界で最もエキサイティングなDH」と特集したのは米メディア「ザ・リンガー」だった。

 メジャーではここ10年間で1300試合に一度の割合で達成されているというサイクルヒットだが、特集では6月13日(同14日)の敵地レイズ戦で日本人史上初となるサイクル安打を達成した大谷の偉業に注目している。

「最近達成されたサイクルはスタッツ好きの人々の間にも途轍もない興奮を生みだした。なぜなら、サイクル達成者はショウヘイ・オオタニだったからだ」と指摘している。

「オオタニは、2019年に登板できないというトミー・ジョン手術から回復する間、今季最初の5週間を欠場した後に復帰した。今季に関しては二刀流ではないが、ただただメジャーで最もエキサイティングなDHなのだ。そして、彼はなんという打者であろうか。非常に洗練され、パワフルで、ワクワクさせてくれている。そのため、途切れることのない打席での成功によって、彼の二刀流の将来に対する疑問すら浮上するのかもしれない」

 特集では打者・大谷をひたすら絶賛。ア・リーグ各球団がパワーヒッターを揃えるDHというポジションでも、「最もエキサイティング」と断定している。今季序盤の22試合では打率.225、長打はわずか3本と苦しんだが、V字回復に成功。今や打率.290、10本塁打33打点。6月の月間打率.333、7本塁打20打点と好調を維持している。

大谷の「wRC+」143はメジャー11位タイ

 打者大谷の実力はデータが証明している。特集では打席当たりの得点創出力を評価する指標「wRC+」を用い、大谷がデビューした2018年以降、500打席以上を記録したメジャー打者上位の成績を紹介。

 1位はエンゼルスの天才マイク・トラウト外野手が191とダントツだが、大谷はブレーブスのフレディ・フリーマン内野手と並ぶ11位タイの143と紹介されている。

 7位のドジャースのコーディ・ベリンジャー内野手は145、9位タイのヤンキースのアーロン・ジャッジ外野手は144で、メジャーを代表するスラッガーを肉薄する堂々たる強打者ぶりを示している。

 特集では、今季メジャー2シーズン目となる大谷の、打撃に関する変化を指摘している。ストライクゾーンの内角への投球に対するスイング率が僅かに上昇し、その一方で外角への球にはスイング率が僅かに減少していると言及。初球へのスイング率も前年度よりも高まっているという。初球にコンタクトした際、キャリアにおける打率は.446、長打率は1.054という凄まじいデータを紹介。「(それら微々たる変化を)一まとめにすることで、その僅かな違いがオオタニの全体的な攻撃面の成績を押し上げることに繋がっている」と評価されている。

 そして、マイク・ソーシア前監督が昨季代打起用することの多かった左腕という弱点克服にも注目している。

 得点力を表現する指標「OPS+」で平均的な打者の数値は100だが、昨季の大谷の左腕相手の数値は82だった。今季は137と平均を大幅に超えていることを紹介している。

 一方で、特集では打者・大谷の伸び代も指摘することも忘れていない。反対方向に飛ばすパワーや打球の初速の驚異的なスピードに対して、MLBのトレンドとは相反するグラウンダーの打球率の高さに注目。メジャー平均では昨季から今季これまでにかけてほぼ横ばいの43パーセントに対し、大谷は昨季の約44パーセントから55パーセント以上まで上昇しているという。

「これは問題だ。なぜなら、強烈な打球を放つことと、強烈な打球を正しい方向に放つことは全く異なる重要なステップだからだ」と記事では指摘。「外野フェンスを飛び越えるようなフライボールを打つのではなく、ゴロになってしまっているようでは、それ(速い打球)も無駄に終わってしまうことのほうが多くなる」と分析している。

 打者・大谷は優秀すぎるが故に、アメリカでは打者専念論もにわかに高まりを見せている。

「エンゼルスは彼をフルタイムの打者に変えたほうがいいと結論付ける人間もいるかもしれない。皮肉なことに、オオタニが米上陸時に多くの疑惑の声が上がっていた予想とは真逆だ。彼はマウンドで開花するので、打者にこだわらず、フルタイムの投手になる必要があるというものだった」

 記事ではこう指摘している。毎日打者として貢献し、強肩、快足、運動能力抜群の右翼手として「『非常に素晴らしい』と言わないまでも、『有能』なプレーをすることは疑いの余地はないだろう」と分析している。

多くの二刀流が現れたが「それらの選手全員と一線を画す」

 大谷の台頭で、メジャーでは二刀流選手を育成する機運が高まりを見せている。だが、二世候補とオリジナルは格が違うという。

「大谷はそれらの選手全員と一線を画す。なぜなら、打者か投手、いずれも無理して挑戦しているわけではないのだ。彼がもし野手に専念していたら、エンゼルスにとってトラウトに次ぐ、2人目のオールスター選手となっていることだろう。投手として健康なら、彼は奪三振数でトップになり、オールスターに到達するのだ」

 投打ともにオールスターレベルと絶賛されている大谷。記事では100年前に二刀流に挑戦したベーブ・ルースを引き合いに出し、「ルースですらこの役割は一年半しか続かなかった。負荷が対応できないほど多かったのだ」と振り返っている。

 米国でもメジャーの関心を集める特別な存在として認められている大谷。打者専念論が浮上する中、二刀流という険しい挑戦を続ける大きな意義を、特集では最大限評価していた。(Full-Count編集部)

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