米ドラ1右腕、鷹入団は正解か “最強助っ人”クロマティ氏は支持「最高の機会」

MLBのエクスポズ・巨人で活躍したウォーレン・クロマティ氏【写真:荒川祐史】

米ドラ1右腕スチュワートの日本“流出”、巨人史上最強助っ人はどう見る?

 ソフトバンクと電撃契約し、日米球界で大きな話題を呼んでいるのが、昨年ブレーブスにドラフト1巡目(全体8位)で指名されながら入団に至らなかったカーター・スチュワート投手。19日に来日後初めてブルペン入りした19歳右腕について、巨人史上最強の助っ人と呼ばれたウォーレン・クロマティ元外野手はFull-Countのインタビューで「日本野球の強化に繋がる機会になるかもしれない」と分析している。

 身長198センチの長身から繰り出す最速157キロの剛速球とカーブに定評があるスチュワート。ソフトバンクでは7人目の外国人選手で、現在はファームで新天地への適応をじっくりと進めている。

 現実的には来年以降の戦力として期待のかかる19歳については、クロマティ氏も注目していた。

「19歳のスチュワートがソフトバンクにやってきたことは私にとっても大きな驚きだった。アメリカでも話題になった。日本でプレーすることは、彼のキャリアにとっては間違いなくいい経験になる。私もそうだったからね。私が来日したのは31歳の頃。選手としては全盛期を迎える頃だった。野球というスポーツは変わらないが、新しい文化、これまでと違う言葉と環境、新しいチームメートとプレーすることは選手としてのみならず、人間としても成長する最高の機会になる。彼はまだ19歳。なおさら成長のチャンスになると思うよ」

 クロマティ氏は自身の体験を踏まえながら、こう語った。1973年にMLBドラフトの1巡目(全体5位)指名でモントリオール・エクスポズ(現ワシントン・ナショナルズ)に指名されて、プロ入り。3年目にレギュラーとなった。そして、1983年のシーズンオフにFAとなり、巨人に移籍した。

 19歳のスチュワートは今年も全米ドラフトの上位指名候補とされていた。MLB球団に入団していれば、1Aや2Aなどのマイナーリーグからレベルアップを目指すことになった可能性が高い。MLBの下部組織での鍛錬の日々と、ソフトバンクで1軍を伺う現状では、どちらが最善の選択だったのだろうか。

今後のトレンドになるかはスチュワート次第「彼が日本で成功するのか、失敗するのか」

「ここでも持論を言わせてもらうが、成長するには最高の舞台で、最高のレベルでプレーするしかない。勝ち負けは別として、成長するにはそれ以外に道はない。自分よりも優秀な選手とプレーしなければいけない。そういう意味では、(日本の)1軍でプレーできるならソフトバンクに来ることは良かったと思う」

 マイナーシステムの下部組織よりも、レベルの高いソフトバンクでプレーできれば、それは成長を早めることに繋がり、結果としてスチュワートのキャリアにプラスになるとクロマティ氏は分析している。

 日本の若き実力者が次々とメジャーに流出するという従来の流れとは“真逆”のような昨年ドラ1のプロスペクト(若手有望株)の福岡上陸。これは日米球界のトレンドを変えることになるのだろうか。

「今後、アメリカから第2のスチュワートがやってくるのか? それはわからない。なぜなら、スチュワートがこれからの流れを生み出すための大事なサンプルになるからだ。彼が日本で成功するのか、失敗するのか――。メジャーの各球団は彼の状況を綿密にチェックすることになる。私がジャイアンツに移籍した際、メジャーのチームが私の活躍具合をチェックしていた。同様に、メジャーの球団はスチュワートの成長曲線に注視することになる。彼らが成功とみなせば、他のチームや選手も右に倣えとなる。そうすれば、アメリカから有望な若手が流入するトレンドが生まれるだろう。そうすれば、日本の球界を強化する機会になるかもしれないね」

 スチュワートは日本で才能を開花させることができるのか――。35年という年月を経て、日本という新天地に挑戦する若き才能に、クロマティ氏も温かい視線を注いでいた。(Full-Count編集部)

© 株式会社Creative2