「そうだ難民しよう!」 ヘイト表現にNOを

 出版関係者らでつくる「ヘイトスピーチと排外主義に加担しない出版関係者の会」は21日、都内で会見を開き、漫画家はすみとしこ氏のイラスト集「そうだ難民しよう! はすみとしこの世界」(青林堂)について、「差別を助長しかねない」と批判した。

 同会と「のりこえねっと」(ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク)の主催で、会見には同ネット共同代表の辛淑玉さん、同会の岩下結さんらが出席した。

 同書は青林堂(本社・東京都)が19日に出版。はすみ氏は、シリア難民や在日コリアン、従軍慰安婦らとみられるイラストとともに「だって私は難民様」「そうだ慰安婦しよう!」「そうだ在日しよう!」などのコラムを執筆している。

 会見で岩下さんは、「表現の自由は認められているが、あからさまな人種差別も正当化されてしまうのか」と指摘。「書店や流通関係者はただ本を仕入れて陳列するのではなく、中身を読み、どう扱うべきか判断してほしい」と呼び掛けた。同会は、民族や出自など変更のできない属性に対する差別は公正な言論を破壊するとしている。

 また、イラストが政治風刺の一端であるとの指摘に対し、辛さんは「風刺は、権力を持つ強者に向けて行うもの。(この本は)風刺ではない、市民社会を攻撃するものだ」と訴えた。

 はすみ氏はことし9月、シリア難民少女の写真をもとに描いたイラストに「そうだ難民しよう!」と文言を付け、自身のフェイスブックに掲載。これに対し、「人種差別や偏見を助長する」と削除を求める署名活動が起き、海外メディアなどでも報じられていた。

 青林堂の担当者は「言論の自由は保障された権利。書店などへの圧力があるとすれば、言論の自由の封殺になる」と話した。

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