YAMA HACK編集部のお土産置き場から声が……
とある、月曜の夜。
「土日にYAMA HACKは登山行ってたんだね」
「なんかさー、長野と言えば、いつも『雷鳥の里』買ってくるよね」
「もうちょっと新しいものを開拓しようって気はないんだろうかね」……。
ガサガサ、ガサガサ、ザザザ……
雷鳥(大)
新しいものとか言われちゃってるよ。ショック
雷鳥(中)
みんな僕らが何で“定番”になったか知らないんだよ。きっと
語り出した「雷鳥の里」のあの子たち
雷鳥(大)
はじめまして。雷鳥(大)です。体長約16cm。普段は大箱にいるからよく会ってるよね?
雷鳥(中)
雷鳥(中)。体長は約11cmだよ。9個入にいるんだけど、奇数ってラスト1個をみんな取り合うんだよね~
雷鳥(小)
僕は雷鳥(小)!体長は約7.5cmで……
雷鳥(大)
……誰?
雷鳥(中)
きみ、仲間なの?あまり見かけないんだけど
雷鳥(小)
えーー!!!仲間だよ!!!
突然語り出した雷鳥(大)(中)(小)。みなさんもどこかで会ったことがあるのでは?
今夜、彼らはどうやら「雷鳥の里」の秘密を、おしゃべりにしに来たようですよ。
秘密①:ミニ雷鳥は小袋パックのみのレアキャラ!
「雷鳥の里」を買うと封入されている雷鳥の絵(しおり)。16個/25個/42個の箱入りには(大)、9個の箱入りには(中)が収められていますが、5個の袋入りには(小)が入っています。この5個入りは一部店舗のみの販売のレアアイテム。
雷鳥(大)
どうりで顔を見ないわけだ。でも自分土産にちょうどいいサイズだよね。5個入りって。きみ、やるね
雷鳥(小)
でしょでしょ?
雷鳥(中)
でもさ、僕たちが商品の顔ならば「雷鳥」ってズバリな商品名でもよかったんじゃない?
雷鳥(小)
そんな単純な話じゃないんですよ、(中)先輩。僕たちの中の人(ニホンライチョウ)と長野県大町市とに秘密があるんだよ
秘密②:「里」とつくのは大町で雷鳥の飼育をしているから
雷鳥の里を販売している田中屋があるのは、北アルプス山麓の長野県大町市。「市の鳥」にも雷鳥が選ばれるなど雷鳥にゆかりがあります。先代社長の田中勝さんは最初「雷鳥」と名付けようと考えましたが、すでに登録商標済みの名称だったため「雷鳥の里」と名付けました。
雷鳥(大)
確かに中の人はよく針ノ木岳や蓮華岳でも見つかってるよね。登山者が「かわいいかわいい」って言ってくれて喜んでるよ
雷鳥(中)
でもニホンライチョウは減少していて、国の特別天然記念物にも指定されているんだ。だから会っても驚かせたりしないでね
雷鳥(小)
そんな中の人の生態を研究している施設も大町市にあるんだよ。そして「雷鳥の里」を買った人は、実はライチョウを保護する活動に協力してるんだよ
雷鳥(大)
???……どういうこと??
秘密③:売上金の一部は大町山岳博物館へ寄付される!
大町市にある「市立大町山岳博物館」。ここで1963年よりニホンライチョウの低地飼育・研究が開始されました。2004年に国内唯一の飼育が一旦途絶えましたが、2016年に再開。
2019年3月からはライチョウの姿を一般公開するなど、飼育や繁殖、保全活動に大きな役割を果たしています。『雷鳥の里』はその売上金の一部をこの博物館に寄付しているのです。
そして取り出した1冊の本。46年の歴史が明かされる!
雷鳥(大)
それにしても、きみ、ちっこいのに物知りですね。なんでそんなにいろいろ秘密を知ってるの?
雷鳥(小)
てへ。それは僕の「雷鳥の里」愛の深さもあるけど、この秘密の本を社長さんからもらったからなんだ
雷鳥(小)が持ってきた『雷鳥の里 一代記』という1冊の本。著者は「雷鳥の里」を販売している(有)田中屋の先代社長・田中勝さん。2010年に自費出版されたものです。戦後苦労された個人史とともに、1973年の誕生以来、“なぜここまで「雷鳥の里」が定番商品として広まったか”という謎を解くヒントが書かれています。
雷鳥(中)
……(熟読)。この田中勝さんって、当時としてはアイデアマンだったんだね
雷鳥(小)
そうなの。商品開発や販売方法も画期的。また1970年代後半~1990年代前半のスキーブームも販売の後押ししたのかもね
秘密④:OEMの先駆け、製造は地元菓子メーカー
実は田中屋は「雷鳥の里」の販売元ではありますが、製造は安曇野市にある小宮山製菓というOEM(original equipment manufacturer)商品です。
黒部ダムへの観光客へのお土産販売で試行錯誤していた時に出会ったのが、小宮山製菓が作っていた欧風せんべい。「目方はあるけれど量はないし値段も高い」と言われたお菓子を「うまければいいです」と社長の小宮山巌さんに直談判。焼き型と包装などの機器は田中屋が出すことで「雷鳥の里」が誕生したのです!
雷鳥(大)
量(かさ)がなくて高いという難点を、個包装にすることで解決したんだね。「うまければいい」かぁ。でも食べてみないと「うまいかどうか」はわからないよね
雷鳥(中)
そこで田中社長が思いついたのが「試食」というアイデアなんだよ。えっへん(熟読したから自慢したい)
秘密④:試食品も商品のミニサイズで妥協なし
土産物屋でよく見かける試食販売の先駆けが「雷鳥の里」って知ってましたか? これも田中社長のアイデア。しかも製造途中で出た割れや欠けなどのB品ではなく、試食用に一口サイズのものをわざわざ作っています。
本の中で小宮山社長は「試食品でも湿気ていたことがない。いつも気を配っていることの表れ」と寄稿。試食のおいしさでつい商品を買ってしまうのも、こういう秘密があるのです。
ちなみにJR信濃大町駅の横にある、直営店「アルプスロマン館」では試食とともにお茶のサービスもあり。こういった小さな心配りこそが“田中屋スピリット”なのかもしれません。
「おっと、食べる前に『雷鳥の里』をよく見てみて!」
雷鳥(中)
「雷鳥の里」にはいろんなアイデアが込められてたんだね。知らなかった!
雷鳥(小)
でしょでしょ?
雷鳥(大)
お菓子の話してたらおなかが空きました。オフィスも人がいないし、ちょっとつまみ食いしちゃおう
雷鳥(小)
おっと、食べる前に『雷鳥の里』をよく見てみて!!
雷鳥(大)
まだ秘密があるの?(小)くん
雷鳥(小)
もちろん!包装にもお菓子にも秘密があるんだよ!!
「雷鳥の里」の金色の化粧針金を結ぶのはすべて手作業。これには「手間をかける」ことで作り手の「ぬくもり」をお客様に届けたいという田中社長の強い思いゆえ。これは「雷鳥の里」の誕生以来変わらず続けられています。
よーーく見ると、菓子の表面に「雷鳥の里」の文字が浮き彫りにされています。これは焼き型がオリジナルであることを示すもの。つい見逃しがちですが、ぜひ確認してみてくださいね。
アイデアと愛情が詰まった『雷鳥の里』
夜が明けて、いつの間にか雷鳥たちのおしゃべりもおしまいに……。
「雷鳥の里」の空き箱には(大)だけが残っていました。
「空き箱を片付けなきゃ!」
はらはらと裏返しになって落っこちた雷鳥(大)。よく見ると何やらハンコが……
雷鳥(大)の裏を返すと「田上」というハンコが押されていました。これは箱詰めした担当者のもの。すべてに押されているわけではなく、ロットで誰が箱詰めしたかわかる場合には押されません。詰めた人の名前がわかると、その思いが伝わってくるような気がしませんか?
「雷鳥の里」の7つの秘密。いかがでしたか?
長年に渡って登山&スキー土産として愛されている裏には、ちゃんと理由があったのです。先代の田中社長はすでに他界されましたが、いつまでも変わらない味と心配りが息づく「定番の味」。登山土産を渡すときに、こんなエピソードも一緒に伝えてみてくださいね!