身近なのに、身近じゃないクルマ
自動車メディアで原稿を書くというと、当然のように、何の断りもなくその「自動車」は主に乗用車を指します。商用車、いわゆる“はたらくクルマ”は個人ではなかなか買うことはしませんし、我々自身も「取材できる機会が少ない」もの。取材用の広報車もなかなか用意されませんし、商用車を話題の中心にする機会というのはなかなか限られます。
しかしながら街を見まわしてみると、実によく目にするのがそのはたらくクルマたち。そして多くの人がはたらくクルマの恩恵にあずかっています。
今回、日産自動車が開催した「#日産あんばさだー はたらくクルマ取材会」から既に3本の記事を掲載し、いずれも多くの方から反響を頂いたようで、筆者も嬉しい限りです。
実はこういう企画にこそ、クルマの根源的な魅力がたくさん内包されている、そんなことを感じる取材会でした。それではなぜ今“はたらくクルマ”なのか。この取材会そのものを少し振り返ってみたいと思います。
「みんなも、きっと興味あるんじゃないか」に企業広報活動の原点を見た
今回の取材会は、通常メディアやジャーナリスト向けに試乗会などイベントを開催する商品広報部ではなく、日本事業広報渉外部が企画したものでした。企画にあたった鵜飼 春奈(うがい はるな)さんは、中途採用で異業種から日産自動車に転職されたのだそう。そんな鵜飼さんに、どうしてこの機会を開催しようと思ったのか伺ってみました。
「もちろん日産自動車が生産しているクルマのことはそれなりに知っていたつもりです。でも入社して改めて商品ラインナップを見ていくと、知らなかったいろんなクルマがあることがわかりました。新しい環境で仕事を始め、刺激的な日々ではありますが、『こんなクルマもあったのか』という発見自体も新鮮な驚きでした。もしかすると、そんな感覚を世の中の人も持つのではないか。それが企画のきっかけでした。」
自ら“体当たりで”のはたらくクルマの魅力をアピールする鵜飼さん!
皆さんの近くにも、実はとてもたくさんの日産がある
日産自動車に入社されてから約二年の間に、ご自身が発見し気付いたことを、社外の人にも知ってほしい! GT-Rなど看板車種以外のもっと身近な日産を広く知ってもらうきっかけになれば、という視点。
確かにこのようなイベントを企画し、直接セールスにどれだけつながるかと言えば、なかなか難しい商品です。けれども「皆さんの近くにも、実はとてもたくさんの日産がある!」と訴求する鵜飼さんの視点は、なるほど目からうろこでした。
自動車のプロモーションというと、とかくペルソナ(対象者)を限定し、ターゲットを絞る戦略を前面に出すケースが少なくありません。生意気なようですが、クルマ記事を読む人が何を求めるか、そこばかりを気にした発信も多いように感じます。もちろんそれも大事ですが、事実として、クルマなんか興味もないという人も、日常の暮らしで実に身近に、クルマの恩恵を受けている。「そんなクルマもあるんですよ!」というメッセージだけでも、日産自動車にとっては大きな価値があるのではないでしょうか。