ちょっと値は張るけど、旅の思い出には最高のホテルをピックアップ。
落ち着きを求める人に
「TWA」よりもさらに古い歴史を持つ建物で、なんと1928年建築。かつての「ジョージ・ワシントン・ホテル」であり、詩人W・H・オーデンや芸術家キース・ヘリング(建物内に在住)などが身を寄せたことで知られる。
そんなアーティストびいきの背景を持つ、ミッドタウンの「フリーハンド」の内装は、市内の高級レストラン「ル・クク」や「エースホテル」に携わったデザイン事務所「ローマン&ウィリアムズ」が作り上げた。木製家具を中心に、洗練されつつも趣のある、落ち着いた雰囲気が長旅の疲れを癒やす。客室はバード大学の学生・卒業生らが「自宅のような空間」をテーマにデザインした。ニューヨークの若者が描く、理想の部屋に泊まれるという興味深い試みだ。
併設バーは、ジェームズ・ビアード賞最優秀カクテル部門に輝いた、「ブロークンシェーカー」。南国を想起させる雰囲気が、夏のシーズンにぴったり。シックでアップスケールな夜には、もう一つのバー「ジョージ・ワシントン」もいい。
セレブが好きな人に
6ラインのアスタープレース駅ほど近くにある「ザ・バワリーホテル」を愛するセレブは数知れない。デービット・ベッカム、ジジ・ハディット、ジェシカ・シンプソン、そしてポール・マッカートニー、などなど。彼らを魅了するのは、高級感あふれる内装と、周囲に高層ビルがないゆえの、客室からのぜいたくなオープンビューだろう。
天井や壁、家具までもがマホガニー色に統一されたロビーは重厚感があり、足を踏み入れるだけで上流階級の仲間入りをしたような気分に。一方で、白を基調とした客室は品のいいシンプルさが売り。磨き抜かれた大理石のバスルームが落ち着く。窓からは、イーストビレッジ、そしてローワーマンハッタンの景観が楽しめる。部屋によってはバルコニーで優雅にティータイム…なんてことも可能。
ダイニングは、今年春よりイタリア出身の新シェフが総監督を務める、イタリア料理店「ジェマ」を併設。旬の食材を使った本格的なメニューをめしあがれ。ひょっとしたら、食事をしているセレブに会えるかも?
独創空間に浸りたい人に
先述の「ザ・バワリーホテル」と近接する「パブリックホテル」だが、そのアプローチは大きく異なる。前者が「伝統」であるならば、後者は「革新」のホテル。
「パブリックホテル」を手掛けたのは、起業家イアン・シュレーガー。彼こそ、現在のブティックホテル(客室100室以下の高級デザイナーズホテルを指す)というジャンルを築いたとされる人物だ。
青々とした植物で覆われた入り口をくぐると、ネオンが煌々(こうこう)と照るエスカレーターがお出迎え。その先の客室はどんなに派手なのかと思えば、部屋はトーンダウンした、静寂が支配するミニマリズムな空間。大都会らしい派手さと、隠れ家のような静けさが同居する、不思議なホテルだ。
ちなみに、フロントデスクは無人で、チェックイン・アウトはタブレットでのセルフサービス。英語での対人コミュニケーションが苦手な人に喜ばれそう。
併設レストランの総監督は、セレブシェフ、ジャン・ジョルジュ。晴れた日は庭園で、のびのびと食事しよう。
新感覚が欲しい人に
メキシコでデザイナーズホテルを複数展開する、「グルーポ・ハビタ」の米国進出店が「ホテル・アメリカーノ」。情熱の国・メキシコの、カラフルでエネルギッシュなトーンと雰囲気を思い浮かべる人もいるかもしれないが、このホテルはどこか無国籍で、時の流れがゆったりしている。
デザインを手掛けるのは、母国メキシコで数々の賞に輝いた建築家のエンリケ・ノーテン。ラテンとミッドセンチュリー・アメリカ、そしてなんと日本の文化的要素を織り交ぜたとのこと。確かに、まるで敷布団のような不思議な形をしたベッドを始め、客室はどことなく日本の旅館のような落ち着きを感じる。無駄な装飾を削ぎ落としたインテリアも相まって、開放感のあるホテルだ。
併設レストラン「ラ・セントラル」では、メキシコ、ペルーなど南米の味を、スペイン、そして中国や日本といったアジアの食文化と、複雑にミックス。この「どこでもない」文化が、何だかニューヨークらしい。今回紹介した中では最高級だが、泊まる価値がありそうだ。
1人で身軽に旅する人に
今回最後に紹介する「シチズンM」は、ビジネスホテルのような規模と利便性を兼ね備えながら、内装にこだわるユニークなホテルだ。タイムズスクエアとバワリーの2カ所にある。
ロビーの第一印象は、カラフルでポップ! 赤や緑のカラフルな家具、あちこちに伸びたライトスタンド、そして壁一面に陳列された、大小さまざまなオブジェなどが目に楽しい。デザイン事務所、あるいは子どもの遊び場に迷い込んだようなワクワク感がある。
一方、客室はほぼベッドと椅子だけの簡素な作り。丸みを帯びた部屋のフォルムがポップアートのようだ。複数で泊まるときゅうくつそうだが、出張やひとり旅など、あまりスペースが必要でない人は落ち着くかもしれない。
ちなみにこのホテル、超高速インターネット通信(有料サービス)を目玉としているので、ビジネスパーソンの利用にオススメ。
そしてもう一つの売りが、ルーフトップバー「クラウドM」。高層ビルに囲まれているので、夜の輝きはなかなかゴージャス。