男女同数に、大磯町議選 “保守”の町は変わるのか

有権者に支持を訴える大磯町議選の女性候補ら=28日午後7時25分、JR大磯駅前

 6月30日に投開票された大磯町議選は定数14に対し女性7人が当選し、女性議員の占有率が県内の地方議会で唯一、5割に達した。「政治分野の男女共同参画推進法」が昨年成立し、国が女性議員を増やそうと旗を振るが、当選した女性たちは「男も女も関係ない」と声をそろえる。いまだ男性優位の風潮が残るといわれる“保守”の町は変わるのか。

 「町内会など地域の代表者はほとんど男性。まだまだこの町は男性社会」

 返り咲きを果たした玉虫志保実さん(59)は今回の結果を冷静に受け止める。過去に町長選に名乗りを上げたこともあったが敗北。女性がトップに立つことへの反発を実感した。

 今回の選挙戦では“ママチャリ”を走らせ、住宅街で演説を繰り返した。集まるのは女性の支援者ら。長年、食育をテーマに市民活動を続け築いた独自のネットワークを生かした。

 海外暮らしを経験した鈴木玲代(たまよ)さん(56)は2期目を迎えるが、町役場で部長職以上の女性が一人もいないことを嘆く。「議会は女性が多く開かれた場なのに、これで女性の声が行政に届くのか。見えない壁が歴然と存在している」

 それでも全国的にも珍しい男女同数の議会は先人の手で切り開かれた。最多の6回当選を決めた鈴木京子さん(65)は新人時代を振り返り「確かに『女は黙ってろ』という空気もあったが、めげずに明るくやってきた」。他の議会では女性議員がお茶くみ係だったと聞いたが、強要されるようなこともなかった。

 5期目となる渡辺順子さん(73)も「女性議員が多い分、福祉や教育分野だけでなく、男性議員が得意とする政策分野も任せてもらえた」とキャリアを積み重ねた。

 女性議員のほとんどは子育てが一区切りついた母親世代。加えて大半の女性議員が市民活動を経験しているのが特徴だ。町議選の候補者にアンケートを行った市民団体「町民立環境ネットワーク☆大磯」の新倉常代さんは「街中の活動から声を吸い上げて、政策につなげていく女性議員が多い」と話す。地盤に寄らないネットワークで選挙に強く、今回の町議選でも8人の女性候補者のうち当選したのは実に7人に上る。

 一方、今回の町議選では新たな動きも。これまで女性議員の支持基盤だった若い母親世代を中心に支持を広げた新人の吉川諭さん(37)がトップ当選。6人の子どもを育て料理もこなす“イクメン”で「子育て世代の声を町政に」と訴えた。新倉さんは「女性議員の数ばかりが注目されるが、町民にとって男女は関係ない。若い人から選ばれた議員が新しい風を起こしてほしい」と期待する。

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