喫煙の風景

 いろいろ仮説を立てては立証を試みるテレビのバラエティー番組がある。いつか「喫煙所への道のりが困難でも、愛煙家はそこへ向かうのか」という“実証実験”をやっていた▲何も知らされずロケ地に来た芸人が、たばこ吸いたさに喫煙所を目指し、気が付けば1キロ以上も歩く。笑い仕立てだが、労をいとわないさまに「よくやるなぁ」と「気持ちは分かるなぁ」と、何年か前に「煙」とはお別れした身に二つの感想が湧いた▲喫煙する人が「吸えるどこか」を求め、移動するさまが、町の風景になるのかどうか。学校、病院、行政機関など多くの人が利用する施設で、敷地内を原則禁煙とする改正健康増進法がきのう一部施行された▲例えば長崎市役所の敷地内では、屋外を含め六つの喫煙所が全てなくなった。改正法では例外的に屋外の喫煙所の設置を認めるが、このように全面禁煙になった例もある▲とすれば、敷地の外に吸う場所を求める人もいるだろう。「敷地内の禁煙」が「敷地外での喫煙」を招くとすれば、受動喫煙に手を打つという改正法のそもそもの目的に反しないか▲場所が敷地外へと広がることで、喫煙する人の肩身がいっそう狭まりかねない。吸えるどこかを求めるさまを見て「よくやるなぁ」とも「分かるなぁ」とも、この先はどうも言い難い。(徹)

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