「カマキリ」という名の魚が見たくて。【日本淡水魚ロマン譚】

秋口。川の河口部に産卵準備のために溜まると言われている。カマキリことアユカケさん。写真はイメージです。

つい先日、チョウセンブナという外来種ながらレアな淡水魚を、茨城県の霞ヶ浦水系で探しあてたお話をさせていただきました。今度は、チョウセンブナほどではないですが、なかなか普段見かけないであろう変わった魚を探しに行った話をさせてください。その名は「カマキリ」。カマキリと言ってもあの昆虫のカマキリではありません。アユ釣り師には、ちょっと嫌がられるお魚でもあるんですが(アユを釣っていたら掛かることも!)、実はルアーでも釣れる魚…。さてさて…。

とっても愛嬌のあるレア魚。そして「いい川」に棲む魚

実は、カマキリというのは俗称で、正式名称を「アユカケ」といいます。こちらは先日の記事で先に紹介させていただいたチョウセンブナと違って、列記とした日本の在来魚です。福井県の一部河川(九頭竜川)では国の天然記念物に指定されており、国の定めるレッドデータブックでは、絶滅危惧Ⅱ類に分類されています。採捕に関しては法律を遵守してくださいネ。

精悍な顔つき。石化けする色合い…。カッコいいっしょ! この子がアユカケさんです。

このアユカケ、基本的に静岡県以西の川に多く分布しております。が、調べていくと茨城県の河川での繁殖も確認されているとのこと。でも、狙って捕獲したり釣り上げれるほどの個体数はいないんじゃないでしょうか。

ご覧の通り、独特なエラ張り、頭でっかちフォルムなんですが、そのエラで捕食する魚を切り裂くだとか、ぶちのめすだとか、アユを引っ掛けて云々だとかいう逸話から、カマキリだとかアユカケだとかいう名前が生まれたとのこと。(釣りキチ三平の話にもありましたね!)

ですが、じーーーっと岩に隠れて待ち構えて一気にドン!とエサを捕食するタイプの魚で、確かにかなりパンチはありますが、逸話のような捕食光景を飼っていても確認したことはありません(笑)

秋口。川の河口部に産卵準備のために溜まると言われている。カマキリことアユカケさん。写真はイメージです。

「単純に行きたいのもあるし、伊豆半島界隈の川をあたってみない?」

伊豆界隈の川は、急流です。が、急流であるがゆえに、ダムなどの不要な人工物が少なく、堰堤があっても魚道などが設置されていて、比較的遡上しやすいタイプの川が多いのが特徴です。我々、釣り人ですので渓流釣りや、河口でのシーバス釣りなどでよく界隈には訪れることから、だいたいのイメージがあるのも伊豆遠征の決め手になりました。

さぁ、そうと決まれば伊豆にいこうず!

めぼしい河川に狙いを定めて遊漁券を購入。

遠征先の伊豆のとある河川でアユカケを狙うことになったので、到着後、その川の遊漁券を購入し、アユカケを狙いにかかります。河川内でのタモ網での魚の採取はもろもろ議論があり、遊ぶ川の遊漁券を購入したところで、正直なところあまり意味はないのですが、それでもやはり買っておいて損はないでしょう!

(ルアマガ+サイト内 至高の淡水魚"オヤニラミ"をどこで採る?【釣った! 採った! で魚を飼ったり育てたり。アクアリウム奮闘記#03】内で見解を記事にしておりますので、ぜひ御覧ください)

今回の遠征、参加人数は4人。手分けして、目的のカマキリことアユカケを狙います。比較的小規模な河川で、遠征前日に降った雨の影響もあり、濁りはありませんが水量は多い印象。遠征が秋口で、秋口にはアユカケは河口部に近い場所にいるとの話もあり、河口部からのエントリーになりました。

「あ、ボウズハゼ採れたよ〜。これも狙いのひとつだったんだよね」

仲間のひとりがボウズハゼという、珍妙なハゼを捕獲。どうも、海に近い淡水域に多く棲むハゼで、苔などを主食にしている種とのこと。捕獲したときは黒っぽくて、なんだコレ?というハゼだったのですが、実際水槽で飼うと、しましまゼブラのなかなか粋なハゼ。こいつのせいで、別のハゼが欲しくなってしまったくらい愛嬌があります。

ボウズハゼ。吸盤みたいなので、吸い付かれました。キモ可愛い…。ちなみに、魚を手で触ると火傷する!というの嘘ですからね!でも火傷するよ!って大げさに言うのはアリです。扱い方さえ理解すれば、手で触っても大丈夫ですよ〜。それはまたいずれ。

しかし、本命のアユカケはなかなか姿を表しません。そこで、私は単独行動で広範囲にアユカケを探す作戦に。ほかの3人はアユカケのいそうな石周りを協力して探すことになりました。

この三角頭がアユカケ。初めてみた時はテンションあがりました!

そこから、歓喜のハイタッチです。やっぱり、私がいない間に採っていたんですね!

これだから釣りもそうですが、生き物を捕まえる遊びってやめられない。ポケモンでレアなヤツを捕獲するのも確かに楽しいですが、やはり苦労してリアルに捕獲した「かいじゅう」は記憶に残るハントになりました。

なんでも、急流の石を3人がかりでガサっていたらようやく1尾入ったとのこと。結局、この遠征でアユカケを採捕できたのは1尾だけでした。ということで、その1尾を飼うことが夢だったというひとりに、託すことになりました。

「もしかして、フカポンさんいないタイミングのほうがいいんじゃね? 採れるんじゃね?」

そんないじられ方を、今でもされます(笑) その時は自分が捕獲したわけではなかったのですが、それでも、異様に嬉しかったのを覚えています。

その後、別の機会に訪れた、静岡県の別の川でワラワラとアユカケが捕獲され、チーム内でのアユカケのレア度は急激に下がってしまいましたが、それでも、なんだか特別な思い入れのある魚なんですよね。だから、今年もまたアユカケに会いにでかけたいと思います。

別の機会に、別の川を探すとワンサカいました。アユカケ以外にも、ウツセミカジカなどのレア種も捕獲。静岡の川はとても健全なのであります。草履サイズのアユカケを見たいので、また探しに行きます!

ちなみに、この魚、大きいものでは25cmを超えます。魚食性の高い魚でもありますので、狙えばルアーでも釣ることができます。アユカケが潜んでいそうな川に出かけて、底石をタイトにコンタクトできるルアーを使って、じっくりと狙ってみてください。ドン!というパンチのある突進から繰り出されるバイトは、きっと普段の釣りとは違う手応えと経験を与えてくれると思いますよ。

こちら、アユカケと一緒に捕獲されたウツセミカジカ。通常のカジカよりも、レア種です。パンダ柄で愛嬌ありまくりです。

飼育難度は、かなり高め!

水温もヤマメやイワナほどではないですが、低温で飼育する必要があります。専用の水槽用クーラーを配置するか、室温を常時最低でも25度以下に設定することが条件。流れを好む魚でもありますので、流水ポンプの設置も必要かと思います。

また、餌付けが少々難しいので、常時エビなどの生き餌さを確保できる環境であるほうが良いでしょう。肉食魚用のペレットやアカムシなども食べるのですが、なかなか、それを食べてくれるに至るまでは時間がかかります。

では、また楽しい淡水魚ハントの話があれば披露させていただこうと思います。

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