ミシュラン コンフォートタイヤ「プライマシー4」試乗|穏やかに、かつ正確に

コンフォートタイヤ「MICHELIN PRIMACY 4」(ミシュラン プライマシー4) テスト走行

ドライバーの意思に忠実に反応してくれるタイヤこそ理想の姿

筆者は学生時代から始めたレーシングドライバーを経てタイヤのテストドライバーになったが、いまはモータージャーナリストが本業になった。もう一方で、免許を持ったドライバーのための安全運転スクール「BMW Driving Experience」のチーフインストラクターも1989年から30年も続けている。

そんな運転にこだわった長年の職業経験から、一般道を走る乗用車用の理想のタイヤはどんな特性が良いか? と問われれば、「ドライバーの意思に忠実に反応してくれるタイヤ」と答える。ドライバーに忠実ということは、操りやすいということで、気を使わずに走ることができる。操りやすいということはいざというときの危険回避能力も高まるから、安全性を高めることにも繋がる。

乗用車でもレーシングカーでも、タイヤに求める性能の本質は同じ

実は最近のレーシングタイヤも過敏ではなく、どちらかというと穏やかになっている。

2018年の8月にオーストリアのレッドブルリンクでBMW M Track Trainingを受講した。BMW M4 GT4というマシンを使ってサーキットをレーシングスピードで走るトレーニングなのだが、このマシンが履いていたのがミシュランのレーシングスリックタイヤだった。これは操るのが難しいだろうなと昔の経験から予想していたが、走り始めるとその穏やかな反応とわかりやすいグリップによってすぐにアクセル全開で走れるようになった。もしこのタイヤの反応が鋭く、ちょっとハンドルを切っただけでピュッと曲がってしまったら、手に汗をかきながらマシンと格闘していたことだろう。

正確に操るため、強いては速く走るためにも、レーシングタイヤでさえハンドル応答性もグリップの変化も穏やかな方が良いのだ。

その特性は一般道を走る乗用車用タイヤならなおさらで、応答性の穏やかさと正確性は必須条件といえる。これは長距離ドライブでも疲れないというメリットも生む。

そんな視点で、最新の乗用車用コンフォートタイヤ「MICHELIN PRIMACY 4(ミシュラン プライマシー・フォー)」に試乗してみると、正に現代風の穏やかで正確な反応をするタイヤであることがわかった。

では具体的にミシュラン プライマシー4を試乗したときの印象をお伝えしよう。

コンフォートタイヤ「MICHELIN PRIMACY 4」(ミシュラン プライマシー4) テスト走行

アウディ A4アバントとゴルフをテストコースに持ち込んで様々なテストを実施

テストコースでハンドリングをテスト

テスト車両として用意した2台の車、アウディ A4 Avant 1.4TFSI(FWD)には225/50R17 98Y XL、フォルクスワーゲン ゴルフは205/55R16 91Wサイズのプライマシー4を履かせ、一般道は高速道路も含めて長い距離を走り、限界を超える領域やウエット路面でのテストはGKNのテストコースを借りて試した。

テストコースのハンドリング路をアウディ A4で走ると、プライマシー4はしっかり感のあるグリップが印象だった。コンフォート系というゆるい感じがない。コーナーを攻めていっても腰砕けになることがなく、最後まで良く踏ん張っている。

とても気に入ったのは、グリップの限界付近でも予測が付く動きで、基本的には弱いアンダーステアで走れる。コーナーの途中でハンドルを切り足していったときに追従してくれるしフロントが逃げないから安心感がある。コーナリング中に突然アクセルオフにしても乱れず、安定感も高く保たれている。グリップ限界を超えて滑り出すときはとても穏やかでゆっくりと出ていくからコントロールしやすい。スキール音はなかなか出にくく、最後のところで軽くキー音が聞こえる程度だった。

コンフォートタイヤ「MICHELIN PRIMACY 4」(ミシュラン プライマシー4) テスト走行
コンフォートタイヤ「MICHELIN PRIMACY 4」(ミシュラン プライマシー4) テスト走行

限界領域でも穏やかな特性|プライマシー4が扱いやすい理由とは

フォルクスワーゲン ゴルフのハンドリング路での印象はA4よりさらに良く、A4より操舵力が軽めで楽に走れた。またゴルフも攻めていってもスキール音がなかなか出なかった。パワーオンでもアンダーステアが弱く、タイトターンが連続するハンドリング路であるが気持ちよく走れた。ちょっとしたスポーティタイヤのレベルのグリップがあった。

プライマシー4のしっかりとした高いグリップは、新しく開発されたトレッドコンパウンドのお蔭だ。また限界付近でもグリップの変化が穏やかで扱いやすい理由は、接地面形状の変化が穏やかだからだろう。トレッドのプロファイルをみると、ショルダー部分がなで肩なので、横Gがかかってゴムの接触するゾーンが変わっていっても、急激な接地面積の変化が小さいデザインになっている。

落ち着いた反応でロングドライブでも疲れ知らず

周回路でプライマシー4を試すと、微小操舵での応答性と手応えが良かった。直進時のニュートラル感がとても穏やかで良い。センター付近の無駄な遊び感がほとんどなく、しかし反応が過敏でないから操りやすいのだ。応答性はハンドル角に比例した動きで応答遅れも感じられない。この大人で落ち着いた反応は、長距離ドライブでも疲れ知らずで走れそうだ。

こうしたニュートラル感の良さや応答性の素直さも、トレッド面のプロファイルが丸くなっていることが良い結果を生んでいるのだ。

A4、ゴルフともに、ハイスピード走行で危険回避を想定した急激なレーンチェンジをしても素早い動きをこなしてしまう。ゴルフは素早いノーズの動きがあり、急操舵で大きな舵角まできるとややリアが出るが、ESCの作動によりすぐに収まるから問題ないだろう。A4はリアがしっかり路面に食いついていて、動きは素早いが安定を持続する。

コンフォートタイヤ「MICHELIN PRIMACY 4」(ミシュラン プライマシー4) テスト走行

梅雨どきや台風シーズンに備え・・・ウェット路面でのブレーキング性能をいろいろ試してみる

テストコースではプライマシー4のウエット路面でのチェックもした。これは比較テストだが、ゴルフを使って先代のプライマシー3と同じ条件で急ブレーキでの制動距離を比べた。

80km/hから10km/hまで落ちるまでの距離は、プライマシー3に比べてプライマシー4では3.5%短い距離で止まった。フィーリングとしては、ブレーキペダルを踏み始めた最初から制動感があった。数字としてはほぼ互角だが、新しいプライマシー4の方がやや有利という結果だ。

さらに、摩耗して溝が2mmまで浅くなったタイヤを特別に用意して比較テストをしてみたところ、プライマシー4の制動距離は断然有利になった。80km/hからなので、ブレーキの踏み始めの時点でハイドロプレーン現象が若干起き、当然ながら新品タイヤとの差が出た。それでも摩耗したプライマシー3と比べると、13%も短い距離で止まっている。これはちょっと驚きで、摩耗していってもプライマシー4のウエット制動性能の落ちは小さいのだ。

摩耗してからもウエット性能を確保できている理由は、プライマシー4では溝の断面形状を逆台形やV字型にしないでスクエアにしているからだろう。溝が浅くなっても幅が広いままなら水はけも悪くなりにくいからだ。

まろやかな乗り心地、振動や騒音も気にならず

コンフォートタイヤ「MICHELIN PRIMACY 4」(ミシュラン プライマシー4) テスト走行

プライマシー4の乗り心地は、まろやかという印象。路面凹凸に対して角がある振動や衝撃は伝わって来ないから良い。かといって腰はある感じ。しっかりした走行フィールを保ちながらも、うまく角を取っているから感触は良い。ダンピングもうまく抑えられていて、あとに残る振動は少ない。

音に関しても気になることはなかった。パターンノイズも大きくないし、耳障りなロードノイズも聞こえてこなかった。

細かい話だが、東京から東北道でテストコースに向かうときよりも、帰り道の方がタイヤの感触が良かった。往きはまだタイヤの慣らし運転が終わってなかったからだと思う。新品タイヤは数百kmの慣らし運転は必要だ。

筆者が理想とするタイヤ像を実現させたミシュラン プライマシー4

ミシュラン プライマシー4は、穏やかで正確なハンドル応答性によって長距離ドライブでも疲れず、危険回避能力も高い。まさに筆者の理想のタイヤ像だ。さらにウエット性能も高く、安心感があり、摩耗しても性能低下が小さいのも安心感につながる。

こういうスイートスポットが広い特性なら許容範囲が広くなるから、多くのクルマにマッチするだろう。

[筆者:菰田 潔/撮影:日本ミシュランタイヤ]

コンフォートタイヤ「MICHELIN PRIMACY 4」(ミシュラン プライマシー4) テスト走行
コンフォートタイヤ「MICHELIN PRIMACY 4」(ミシュラン プライマシー4) テスト走行

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