ニッチな部分に切れ込む「れいわ新選組」は、参院選で躍進できるのか(安積明子)

多額の寄付と多様な候補

7月4日に公示される参議院選で、「れいわ新選組」が台風の目になりつつある。「れいわ新選組」は代表である山本太郎氏が4月10日に立ち上げたものだが、3か月もたたない期間で2億2570万円も寄付を集め、目標と掲げている3億円にも到達の自信を見せている。

参議院選に出馬予定の候補者も多様だ。山本氏の他、北朝鮮による拉致被害者家族の会の蓮池透元事務局長、女装の学者として有名な安富歩東京大学東洋文化研究所教授、自立ステーションつばさの木村英子事務局長、元セブンイレブンオーナーの三井義文氏、沖縄創価学会壮年部の野原善正氏と環境保護NGO職員の辻村千尋氏、元金融機関ディーラーの大西つねき氏の8名だ。とりわけ注目したいのが、生後8か月に事故で重い障碍を負った木村氏だ。立憲民主党が比例区候補として擁立する斉藤りえ元東京都北区議会議員と重なる。

「れいわ新選組」の戦略は他党の票を喰うことだ

斉藤氏は1歳10か月で聴力を失った。その後、紆余曲折を経て上京し、銀座のクラブで「筆談ホステス」として名を馳せた。社民党の参議院議員だった堀利和氏から「15年ぶりの障碍者の代表」として支援も得て、有力候補として躍り出た。

木村氏の出馬は斉藤氏の得票に少なからず影響を与えるだろう。何よりも出馬会見を見る限り、「重い障碍者はほぼ社会から隔絶された生活を強いられている」「介護が手薄になると、食事もままならない」と体験を踏まえて現状を訴える木村氏の方が説得力が勝るからだ。

辺野古基地移転問題を巡って、昨年9月の沖縄県知事選で三色旗(創価学会の旗)を振りながら玉城デニー氏支持にまわった野原氏の存在も小さくはない。この県知事選で創価学会は原田稔会長は自ら沖縄に入り、青年部ら5000名を送り込むほどの力の入れようだった。にもかかわらず、自公が推した佐喜眞淳氏は玉城氏に惨敗。筆者は県知事選投開票日に沖縄に入ったが、その夜に自民党関係者は「創価学会婦人部に負けた」と述べ、肩を落としたのを覚えている。

山本氏の賭けと国民の賭け

「れいわ新選組」の戦略とは、雇用や年金で年配層よりも冷遇されている若年層に焦点を当てることだ。公務員増員や最低賃金1500円などは、そうした若者をターゲットにした政策といえる。

さらには既存政党のニッチな部分に斬り込んでいくことも重要だ。エッジの効いた候補を立てることで、他党の票を奪っていく。立憲民主党が元タレントなどを擁立し、話題や知名度重視の候補擁立するのとは大きく違う。また与党からあぶれた票を集めていく。現政権も7年目に入って緊張感がなくなってきたのか、さまざまなボロが出てきている。「れいわ新選組」が狙っているのは、いわばその隙間を突くというものだ。

折しも7月2日夜、山本氏が比例区に鞍替えすると報道された。2013年に続いて東京都選挙区に出馬すれば、議席を確保することはほぼ確実。しかしなんとか比例区の票を伸ばしたいのだろう。だがそれは大きな賭けだといえる。

参議院比例区では1議席を獲得するのに100万票が必要だ。山本氏は100万票を上回って獲得しなければ、他の候補を当選させれない。また東京都選挙区での「山本票」がそのまま「れいわ新選組」の公認候補に入るとは限らない。

しかし山本氏には自信と確認があるのだろう。17日間の選挙期間でどのくらい伸びるのか。「れいわ新選組」が大化けするなら、日本の政治は大きく変わるかもしれない

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