天に蓋を

 おととし、昨年と、7月に入った頃の小欄の切り抜きをめくってみると、雨のことを必ず書いている。梅雨の晴れ間が待ち遠しい、とつづったのではない。どれも天の非情を記している▲おととしの7月4日、長崎市付近に台風3号が上陸した。翌5日から6日にかけて福岡、大分県を襲った記録的な大雨は「九州北部豪雨」と呼ばれる▲昨年は七夕の頃に「西日本豪雨」があり、岡山、広島、愛媛県を中心に死者は220人を超えた。「平成最悪の水害」といわれ、「長崎大水害以来、最悪の豪雨被害」といわれる▲「雨を待っていたのに、このありさまだ」と、熊本県益城町の米農家の男性が、きのうのテレビニュースで嘆いていた。水田に土砂がなだれ込み、植えたばかりの苗がごっそり倒されたという。今年もこの時期に、天の非情を思う▲活発な梅雨前線が停滞し、九州南部を中心に激しい雨に襲われている。あすにかけて西日本で猛烈な雨が降る恐れがある。土砂災害に、川の増水に、警戒を怠れない▲天のふたが壊れたように雨が降るのを「天蓋(てんがい)がばれる」と言うらしい。1週間前、九州北部がやっと梅雨入りしたとき、梅雨の滴が土を程よく潤すように、と書いたが、願いはたやすく通じない。そうと知りつつも「天にふたを」と祈らずにはいられない。(徹)

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