外来植物群生 生態系に危機 五島・高浜 景観損なう恐れも

高浜海水浴場そばの砂丘で、高さ1.5㍍ほどに成長したビロードモウズイカを確認する上田さん。既に花を付け始めている=五島市三井楽町

 長崎県五島市を代表する景勝地の高浜海水浴場(三井楽町)近くの砂丘に、駆除が難しい外来植物「ビロードモウズイカ」が群生している。在来植物の生息場所を脅かす上、景観を損なうことも危惧される。園芸植物としても出回る植物で、島の自然環境に詳しい同市の五島自然環境ネットワーク代表、上田浩一さん(49)は「砂丘を花で彩ろうと誰かが安易に植えたのではないか。生態系を壊す恐れがあり大変な問題」と警鐘を鳴らす。
 高さ約1~2メートルの2年草で「ニワタバコ」とも呼ばれる。ヨーロッパ原産で、日本には明治初期に観賞用や薬用として輸入された。6~8月ごろに多数の花を咲かせ、1株で数万個以上の種を作る。上田さんは昨年6月ごろ、高浜で初めて発見。それ以前から生えていたとの情報がある。近くに民家などもないため、少なくとも数年以上前に人為的に植えられた可能性が高いという。
 上田さんと現場を訪れると、海と砂丘を隔てる国道から見える場所に、花を付けたビロードモウズイカが1.5メートルほどに成長していた。種ができる前に引き抜き枯らすことで駆除できるが、種は100年も発芽能力を保ち続けることがあり、靴底などに付いて拡散される恐れもあるという。実際、砂丘のさらに奥に進むと数百株が群生しており、上田さんは「既にかなりの数の種があたりに散らばっているはずで、どうすればいいか分からない」と途方に暮れる。
 上田さんによると、過去には高浜同様に西海国立公園内にある鐙瀬(あぶんぜ)海岸近くにも、人為的にハーブが植えられていたことがあったという。「福江島では以前から、園芸植物や外来生物を野外に捨てたり勝手に植えたりされてきたが、たとえ、花を植えて見栄えを良くしようという善意であっても、決してすべきではない行為」。上田さんはそう厳しく指摘する。
 また同公園の管理や保全を担う環境省五島自然保護官事務所(五島市)の半田浩志自然保護官は「在来植物や景観への悪影響があっても、人に直接の害がなければ対策が後回しにされる傾向がある」と指摘。その上で「ビロードモウズイカは種子の寿命を考えると、今から始めても完全な駆除には100年以上の時間がかかる。外来種はそれほどやっかいな存在だと知ってほしい」と話す。

砂丘に群生するビロードモウズイカ。枯れた穂の先に無数の種が付いている

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