日本語弁論大会で外務大臣賞 五島市国際交流員の金さん 「忘れかけた自分」を再発見

韓国語講座で日韓の文化などについて受講者と話す金さん=五島市内

 長崎県五島市の国際交流員、金烔秀(キムドンス)さん(30)=韓国済州島出身=が、先月開催された「第60回外国人による日本語弁論大会」(一般財団法人国際教育振興会など主催)で、最高賞の外務大臣賞を受賞した。島民との穏やかな交流を通し、人生を見詰め直した経験を約6分間でスピーチ。五島の魅力を「忘れていた本当の自分に気付かせてくれる島」と語った。

 金さんは琉球大に留学して専門的に日本語を学ぶなどした後、日本の行政を学ぼうと国際交流員に応募した。当初は北九州市や札幌市などの都市部を希望していたが、赴任先に決まったのは五島市。同じ離島とはいえ故郷の済州島は人口約60万人の都会で、それより格段に小さな五島への派遣は「予想外でショックだった」と正直に明かす。

 それでも見学に訪れ、市民の優しさや魚のおいしさが気に入り、2017年に市国際交流員として着任。観光物産課に所属し、韓国人観光客向けの情報発信や韓国の旅行会社への営業などを担当している。他にも韓国語講座の講師として日韓の文化について市民と語り合ったり、6月に市内で開催されたトライアスロン大会に初出場したりと、五島生活を満喫している。

 公私を通じた市民との交流の中で、将来の夢についても変化が生まれた。五島に来た頃は、いずれ韓国の国家公務員になりたいと考えていたが、「上を目指すことよりも、人々と触れ合いながら地域のために働きたいと思うようになった」。国際交流員の任期後は、済州島の消防士として働きたいと願う。

 弁論大会の演題は「私が私に還る島」。野菜や米を分けてくれたり自宅に誘ってくれたりする島民の優しさに触れながら、韓国の競争社会を離れて暮らす中で「自分について考える時間ができ、新しい人生を見つけた」とスピーチ。さらに「五島と済州島の間を仲間と(リレー方式で)泳いで渡りたい」と、両島の“懸け橋”としての壮大な夢も発表した。

 今大会は国内外に暮らす29カ国・地域の123人が応募。このうち12人が予選審査を通過し、6月1日に青森県八戸市で開催された本大会に臨んだ。

© 株式会社長崎新聞社