元球児で被爆者・田栗さん発案の油彩画 球場に展示 母校の長崎西高美術部が制作

作品「平和なればこそ」と美術部、野球部の生徒=長崎市、長崎西高

 「平和だから野球ができる」-。平和の大切さを球児らに伝える絵画を長崎市の県営ビッグNスタジアムに展示しようと被爆者が発案し、県立長崎西高美術部が制作。完成披露式が4日、同市竹の久保町の同校であった。式の後、第101回全国高校野球選手権長崎大会の開幕(11日)を前に、同スタジアムに常設展示された。
 作品は縦194センチ、横112センチの油彩画。タイトルは「平和なればこそ」。投手が投げた白球に「PEACE(平和)」の文字が浮かんでいる構図。背景の色とりどりの花や青空、草原も平和を想起させる。
 制作、展示を発案したのは同校野球部OBで長崎原爆被爆者の田栗静行さん(79)=東京都八王子市=。田栗さんは昨年夏の第100回記念大会初日に、元球児の被爆者として同スタジアムでの開会式に招待され、平和への願いを次世代に引き継ごうと絵画展示を思い立った。母校や県教委に制作、展示を依頼。同校美術部が制作を引き受け、1~3年の部員が3月ごろから共同で描き、田栗さんは費用を支援した。
 式には美術部員10人、野球部員8人が出席。渡川正人校長は「令和最初の大会に合わせて飾られるのは、うれしいこと。球場に来た人が目にして元気が出るんじゃないか」と述べ、労をねぎらった。式の後、美術部の2年、竹川明香里部長(16)は「構図はみんなで考えた。絵を描けるのも平和だからで、ありがたいと思う」と話した。
 作品は同スタジアムに運ばれ、資料展示室入り口横の壁面に展示された。田栗さんは取材に「平和でなければ野球は続けられない。犠牲者への弔いと平和を築いていってほしいという思いを後輩に託した。皆さんのおかげで実現してうれしい」と語った。

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