近世以来の川崎支えて 「二ケ領用水」国文化財登録へ

文化財として登録される見通しになった二ケ領用水。春には市内有数の桜の名所として親しまれている=4月、川崎市高津区

 川崎市内を流れる二ケ領用水が、国の文化財として登録される見通しとなった。登録されれば市内5件目。市は近世から川崎の暮らしを支えてきた水辺の歴史的価値を見つめ直し、かけがえのない財産として次世代に伝えていく考えだ。

 市内を南北に縦断する二ケ領用水は全長18キロで、このうち、市が管理する3区間計12.4キロの登録が検討されている。登録文化財となることで、説明板の設置など広報に関する費用は文化庁からの補助金の対象となる。

 用水は江戸時代初期の1611年に完成。徳川家康の江戸入府に伴い、多摩川下流域の治水と新田開発のために工事が始まり、用水奉行の小泉次太夫が14年かけて完成させたと伝わる。「二ケ領」の名は当時稲毛領と川崎領にまたがっていたことに由来するという。

 市は400年にわたる歴史だけでなく、時代とともに役割を変化させながら川崎の繁栄の礎を築いてきたことに価値を見いだす。完成以来、市内全域の田畑を潤すとともに、生活用水として暮らしを支えてきた。やがて近代化への歩みの中、工業用水としても活用。さらに現在は親水護岸や遊歩道などが整備され、憩いの場として親しまれる。

 市は景観の保全や整備に取り組みながら、歴史的・文化的価値の高さを伝えていくため、2013年に「二ケ領用水総合基本計画」を改正。登録文化財を目指し、14年から調査を続けてきた。指定文化財制度に比べて緩やかな保護措置を講じる点が登録文化財制度の特徴で、文化庁へ届け出を行うことで改修工事なども可能という。

 今月、文化庁に意見書を提出し、12月の文化審議会を経て来年3月の正式登録となる運び。県が管理する区間についても登録に向けて協議を進める。

 市建設緑政局の担当者は「二ケ領用水は時代が移ろうとも絶えず川崎の人々に寄り添ってきた。登録を機に、文化財としての価値を市民に再認識していただき、後世に残していきたい」としている。

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