「一発勝負支える」 元甲子園球児、医師で“初出場” 高校野球神奈川大会

 7日に開幕する第101回全国高校野球選手権神奈川大会。真夏の炎天下で白球を追う高校生の体を守ろうと、元甲子園球児の整形外科医・中沢良太さん(36)=桐蔭学園高出身=が張り切っている。準々決勝以降の出場選手に義務づけられている試合後のメディカルチェックに、スタッフとして初めて加わることになり、「この青春は一回きり。後悔のないよう全力を出してほしい」と球児を陰から支える。

 「お世話になった神奈川の高校野球に携われて光栄ですね」。整形外科医として生まれ故郷の山梨県山梨市の総合病院に勤務する中沢さんは、念願の“初出場”に興奮を隠せない。大会中は横浜スタジアムでアクシデントに備えて試合を見守り、試合後は肩肘を中心に後輩たちをケアする。

 ちょうど20年前の1999年夏。桐蔭学園高は神奈川大会を制して甲子園に出場した。2年生の中沢さんは二塁手のレギュラーとして活躍。甲子園でも8強に進んだ。主将を任された最後の夏は5回戦で東海大相模高に惜敗したものの、仲間との日々は、今でもかけがえのない宝物だ。

 大学でも野球を続けるつもりだったが、医師の父親の存在と土屋恵三郎監督(現星槎国際高湘南監督)の勧めもあり、「スポーツに関わる医者に」と医学を志した。それまで野球一筋で「偏差値27からのスタート」と笑うが、2浪の末、日大医学部に合格。卒業後は東大整形外科の医局に進んだ。

 真夏の横浜スタジアムでプレーする過酷さをだれよりも理解しているからこそ、球児へのアドバイスは具体的だ。「試合後は翌日に疲れを残さないよう、チームで場所を確保してしっかりストレッチの時間を設けてほしい」。自身も2年夏の準決勝の後、疲れ果ててストレッチを怠り、翌朝は起き上がれないほど腰を痛めたという。「決勝は力を出し切れない中でプレーした」と振り返る。

 運動後の栄養補給も欠かしてはならないという。「運動後は2時間以内に食事をすることで、筋肉の回復力がまるで違う。揚げ物などは控え、エネルギーを補給することが大事」。短い日程で連戦が続く場合は、より重要になってくる。

 医師として、同じ神奈川で戦った先輩として、中沢さんは球児たちにこれだけは伝えたいという。「高校野球は一発勝負。だからこそ本番でその全力を出し切れるよう、体のケアを決して忘れないでほしい」

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