一筋の光明

 本県など西日本一帯に被害が広がったカネミ油症は、発覚から今年で51年。多くの被害者は今も差別と偏見を恐れ、油症であることを隠している▲2012年に救済法がようやくできた。しかし被害者団体、国、カネミ倉庫で具体的な救済策を話し合う3者協議は、13年のスタートからほとんど進展が見られない。特に国は消極的▲これまでの被害者代表らは高齢化。近年油症認定された被害者がカネミ倉庫に損害賠償を求めて起こした裁判は、提訴が遅かったなどとして敗訴が確定。救済運動は袋小路に入った▲この15年ほどで新たに運動に加わり始めたのが、有害化学物質汚染の食用米ぬか油を幼い頃に食べた世代、そして被害者の子どもら汚染油を直接食べていない次世代被害者だ。この二つの世代は、50代ぐらいから子育て中、若者まで幅広い▲そんな若手らが中心となって、各被害者団体の全国連絡会をこのほど設立した。世話人会代表は50代、事務局長は40代。医師、学者らも巻き込もうとしている。被害者自身が主導し、主体的に進むべき道を探り、意見をまとめ、市民や有識者と結び付いて解決を目指す。これまでにない動きだ▲長いトンネルを走ってきた救済運動の継続に一筋の光明が差してきたと捉えたい。被害者たちの次の一手に希望を込めて。(貴)

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