【外付けNG】というけど、誰も”どれくらい危険”か教えてくれないので検証してみた いろんな装備がザックに外側についた『外付けザック』。一般的に危険と言われることが多いですが、実際どんなことがどんな風に危険なのでしょうか。なかなか迫ることのない「外付け」のリスクについて、とことん検証をしてみます!

登場!外付け増々ザック!

いろんな物が外側に付いた状態のザックを背負った登山者に山で出会ったことはありませんか?
また、コップをザックに外付けしていると「危ないよ」という優しい注意や「やめろ!」と怒鳴られるなんて苦い経験をしたことがある人も。

「ザックへの外付け」に関して賛成派・反対派の意見を聞いてみた

皆さんはこの『外付け』に対してどういう印象を持っていますか?
外付け賛成派と反対派の意見を聞いてみました。

【外付け賛成派の意見】

外付け賛成派A

他人に迷惑をかけていなければ、好きなスタイルで良いと思う。

外付け賛成派B

冬山に行く人場合、外付につける装備が山盛りなので抵抗なし。

【外付け反対派の意見】

外付け反対派A

ザックにジャラジャラぶら下がってると、歩いているうちに引っかかったり、うるさかったりする。

外付け反対派B

あまり意味のない外付けが多い気がする。外付けは引っかかったりして危ないから、なるべくしないのが現在の主流の考え方。

「ザックへの外付け」と言っても、その理由は様々。

反対派の方が言う「外付けは危ない」というのはよく聞きますが”何がどれくらい危険なのか”は、ほとんど誰も教えてくれません。
そこで今回、より安全に登山を楽しむためにザックへの外付けにどんな危険が潜んでいるのか検証してみました。

外付けの有無で”どれくらい危険度が変わるのか”徹底検証!

(重量は各ザックともに1泊2日で平均的な12kg程度)

今回はテント泊(1泊2日)を想定し、以下の3パターンの状態で検証。

以下の3つのシチュエーションを想定し、実際のフィールドへ。

①枝が生い茂った道を歩いた場合
②細い登山道をすれ違った場合
③転滑落で外付けした物の落ちやすさ

ケース①:枝の生い茂った道を歩いた場合

整備があまりされていない登山道では、木々が道まで飛び出していることもしばしば。ザックが木に引っかかってしまった経験がある人も多いのではないでしょうか。

【検証をしてみて】
❶:ザックのバランスが悪く動きにくいため、枝を避けずにそのまま低い姿勢で突き進むだけに。案の定、枝に思いっきり引っかかっています…。
❷:感触としては枝を避けたつもりなのですが、雨蓋に付いたコップが引っかかってしまっています。
❸:ザックの重さは感じるもののスイスイと枝を避けながら進めました。
わかったこと

・ザックから飛び出ていたりブラブラな状態のものは木の枝に引っかかりやすく、体勢を崩したり転倒する恐れがある。

・❶は重心が不安定なため、背負った感覚が❷、❸と比べて重く感じる。

ケース②:細い登山道をすれ違った場合

テントマットなどは、ザックのサイドに取り付けることも多くなります。そういった外付けの想定で検証をしてみました。

【検証をしてみて】
❶:左右のバランスが異なるため、若干左右にフラれながら歩くことに。すれ違い時に「足を滑らせないか」という緊張があり、やや道の中央に寄って通過した結果、右側のテントマットが歩行者をかすり、相手も反射的に仰け反るような格好に。
❷:歩行感覚は❸と変わりません。今回はトレッキングポールが左側に付いていますが、右側だった場合、相手の目をかする位置に来てしまっています。
❸:横に装備が付いている不安もなかったので、相手との距離間を考えながらスムーズに通過することができました。
わかったこと(進行側)

・左右のバランスが悪いためフラつきやすく、転倒・滑落の危険がある。また、いつも通り歩いているつもりでも激しく体力を消耗していく。

・仮に歩行者とぶつかってしまった場合、自分だけでなく相手を危険に晒してしまう可能性もある。。

わかったこと(待機側)

・突然ぶつかってこられたので「うわっ!」という感じで反射的に体が動いてしまった。体勢が悪い場所での待機は怖い。

・できる限り待機する側は平らで広い場所を選ぶことが望ましい。必要であれば広い場所まで戻ることも大切。

ケース③:外付けした物の外れやすさ

仮に滑落してしまった場合、ザックは崖を転げ落ちボロボロになってしまうでしょう。しかし装備がザック内に残っているかどうかが、生死を左右する可能性もあります。
転倒・滑落時を想定し、ザックがひっくり返った際の物の外れやすさを検証してみました。

【検証をしてみて】
❶:ほとんどの物がザックから飛び出しています。今回はカラビナで繋げているので落ちはしませんが、滑落して転げ落ちた場合はこの中のほとんどの物が飛び散ってしまう可能性が高そうです。
❷:ポーチが首に引っかかりそうになっています。ブラブラした物の外付けは、滑落時に首を締めてしまう可能性もありそう。
❸:何も付いていないので何かが外れることはありませんが、ザックが背中にくっついてくれている安心感がありました。
わかったこと

・外付けした装備は、ちょっとした衝撃や引っかかりで簡単に取れてしまいそう。物を紛失したりゴミを落とすことも。

・しゃがんだ時に外付けした荷物が頭などに当たり、バランスを崩す可能性がありそう。

・ヒモなどのブラブラしたものは、首に引っかかる可能性もあり危険。

外付けの『何が危険』だったのか考えてみた

検証で上のようなことを感じました。もう少し深く考えてみましょう。

①バランスが悪くフラつく

外付けされた装備はザックの中心から離れた部分に付けられているため重心が安定せず、身体がフラつきやすくなります。バランスが悪い中での歩行は体力の消耗も激しくなります
し、狭い登山道ではすれ違いの時に邪魔になったり、不意の接触で転倒や滑落の危険も。

特に岩場や鎖場、狭い登山道では命の危険につながることもあります。

②木や岩に引っかかる

外付けされた装備はザックからはみ出していたりブラブラな状態になっていることが多く、木の枝や岩に引っかかりやすくなっています。引っかかることでバランスを崩し、転滑落のリスクになったり装備を紛失してしまいます。

特に引っかかることが多かったのは、トレッキングポールでした。先端がザックよりも高い位置に飛び出ていることや突起した形状をしていることが要因として考えられます。
またストックに引っかかった場合は気付かず進んでしまうことが多く、画像のような「枝の跳ね返り」にも注意が必要だと感じました。

③装備やゴミを落としても気付かない

外付けした装備やゴミ袋は、引っかかると簡単に落ちてしまいます。装備の紛失にもなりますし、落としてしまったものは山に残り自然を汚してしまうため、落としものをしないようにしましよう。

1時間程度のヤブ歩きでゴミ袋はあっという間にボロボロに。ゴミ袋の外付けはやめましょう。

外付けになりがちなアイテムはこうやってパッキング!

基本的な考え方として「不要な外付けはせず、なるべくザック内に収める」ということを意識したパッキングが大切。
もし装備が入りきらず外付けが多くなってしまう場合は、ザックの容量を大きくしたり、持っていかなくてもいい荷物も減らすなどしましょう。

コップ&サンダル

コップやサンダルは基本的にどちらもザック内に。

サンダルはテント設営後に使用するものなので、ザックの下部に眠っていても問題ありませんし、コップも基本は休憩中に使うので、ザック内のすぐ取り出せる場所でOKです。

ゴミ袋

ゴミ袋の外付けはNGです!山の自然を守るためにも、ザック内に入れることを徹底しましょう。まず準備段階で不要なゴミを減らす工夫が大切

例えばお菓子などの紙パッケージは、登山に必要ないので置いていけますし、ビニール包装も全部出してしまって、1枚のジップロックにその日の行動食をまとめてしまえばさらにゴミを減らすことが可能。
また、ジップロックがニオイや液漏れをシャットアウトするゴミ袋代わりにもなります。

トレッキングポール

トレッキングポールは外付けすることが多いアイテム。ザックの形状によって取り付け方法は異なってきますが、ザックの高さを超えずになるべくザックと密着することをイメージしてパッキングしてみましょう。

また、トレッキングポールの種類によってはコンパクトにパッキングができる三つ折り可能なモデルもあるのでおすすめです。
※)今回の検証では、トレッキングポールの引っかかり具合を確かめるために、ザックの高さを超える位置にポールを取り付けています。

テントマット

テントマットも外付けになりやすいアイテムの代表格。一概に「ここに外付けすると良い」というのはなく、①すれ違い時に邪魔にならないこと②バランスを取りやすいことの2点を考慮しながら、山行内容やルートに応じてパッキングしてみましょう。

少しコツが必要ですが、ロールタイプのものは筒状にしてザック内に入れ込む方法があり、マットを収納するための有効な手段として使えます。

どんなリスクがあるかがわかれば、必要なものが見えてくる

山行スタイルや行く場所によってはどうしても外付けをしなくてはいけない場面は出てきてしまいます。しかし、今回の実験で外付けに潜む危険がどんな風に危険なのかわかったと思います。

大切なのは「外付けがなぜダメなのか?」「どのくらい危険なのか?」を頭に入れてパッキングを行うこと。

パッキングが終わったザックを眺めながら「この外付け必要かな?」「もしかしたらもっと工夫できるかも」というのを考えてみてください。それを癖づけていくことで、登山そのものの『安全』に対する意識も変わっていきます。

また、不要な外付けを見つけてアドバイスしたい場合もいきなり怒鳴りつけるのではなく、しっかりと理由やそこに潜むリスクを伝えましょう。そうすればきっと不要で危険な外付けは減らせるはずです。

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