「この標識、いったい何?」五感で感じる新しいトレッキングのカタチ 九州の色んなところに増えてきた謎の標識。一体何なんだろう?と疑問を持っている方多数。特に九州以外の人は初めて見る馬のオブジェに興味津々のようです。さて、これらは何なのでしょうか?競馬場の看板?木馬?いえいえ、これはトレッキングの新しいカタチのシンボルなのです。歩くことが大好きなあなたにぜひ知ってもらいたい「オルレ」・・・。

突然ですが、ここで問題です。

これはいったい、何でしょうか?

登山者

え!?うーん、これは馬…だよね?”馬=競馬”…あ、コースって書いてある。

では、これはどうでしょうか?

登山者

ローマ字の「K」に見えるね。でもよく見たら矢印にも見えてきた…。

では最後、これは?

登山者

あ、登山道でよく見かけるテープに似てる!
それにさっきの馬のデザインが。

これらの標識、一般的な登山道ではあまり見かけた事ないのではないでしょうか?
実はこれらはすべて、あるトレッキングスタイルのコース上にある標識なのです。

この標識を使ったトレッキングスタイル、その名も

聞き慣れないこの言葉。
「何語?」「どんなトレッキング?」

今回は全く新しいトレッキングスタイル「オルレ」の正体に迫ります。

登山でも、街歩きでもない「オルレ」

オルレとはトレッキングの一種。欧米的な「登山中心のトレッキング」とも、いわゆる「街歩き」とも違う、新しいトレッキングスタイルです。

韓国から九州、そして宮城へ

(韓国 済州島 城山日出峰)

オルレの発祥は、韓国の済州島。自然豊かな済州島で、海や山を五感で感じるトレッキングスタイルとして定着していきました。「通りから家に通じる狭い路地」という済州島の方言が由来となっており、普段では通らないような裏道や路地を自分のペースでゆっくり楽しめることも魅力の一つとなっています。

その後、地理的に近い九州に上陸し、日本の歴史や文化とも融合しながら、今では宮城県にも広まっています。

”五感で感じるトレッキング”、その魅力とは?

「海や山を五感で感じるトレッキングスタイル」というオルレ。その魅力とはいったいどんなところにあるのでしょうか?
実際に筆者が歩いた感想も交えて、その魅力を紹介します。

魅力①:ディープな裏道にドキドキ

オルレのコースは、車道をなるべく通らないように、歩道をうまくつなぎ合わせて進んでいきます。地元の人たちしか知らないようなディープな裏道を通ったり、普段では歩かないようなコースを通る場所も。登山とはまた違った景色にちょっとドキドキしますが、それもオルレでしか出会えない景色の一つです。

魅力②:地元の方も知らないような素敵な風景が

歩いている途中に出会った地元の人に話しかけてみると、「ここにそんないい場所があったのか!」と驚かれることがあります。地元の人でも知らないような、ちょっとマニアックな場所から見る景色はツウ好みですね。

魅力③:名所がとってもおもしろい!

オルレのコースでは、いわゆる”観光地”と呼ばれるような、歴史を感じる場所も通ります。しかし、ここがオルレの面白いところ。
観光ガイドブックに載っているような、有名な名所・旧跡はほとんどありません。

例えば、写真の場所は「太閤水」という旧跡。1587年頃、豊臣秀吉が実際に水を汲んで飲んだ場所だそうです。
普段なら気にも留めないようなマニアックな名所旧跡を巡るのも、オルレの魅力です。
思わず、「へ~~~…」と、うなるような場所もありますよ!

オルレを歩く前に、注意しておきたい4つのこと

①レベルを選んでコース選び

オルレの公式サイトでは、各コースの、距離、所要時間、難易度、高低差がわかるようになっています。自分のレベルに合わせて選びましょう。
九州旅ネット宮城オルレ公式サイト

②オルレの標識を知ろう

冒頭でも紹介したオルレの標識。普段あまり見かけない標識だからこそ、事前に勉強しておきましょう。

これは「カンセ」。馬の頭の方向が歩く方法です。

この標識も方向を示す標識。青は正方向、赤は逆方向を示しています。赤の通り戻ればもとに戻れるわけです。よく考えられていますね。

要所にはオルレコースを示すリボンもあります。そのほか、岩や道路にペインティングされた矢印などもたくさんあるため、初心者でも安心して楽しむ事が出来るでしょう。

③足元はしっかり準備しましょう

舗装されていない砂利道や草地など、意外と足元が不安定なオルレ。場所によっては街歩き用のスニーカーではちょっと厳しいかもしれません。しっかりとしたミッドカットの靴がおすすめです。

④マナーを守って楽しく歩こう

オルレは生活道路を歩くこともあります。素敵な出会いもありますが、場合によっては迷惑になることも。マナー守って楽しく歩きましょう。

【オルレのマナー】
1.民家の庭にみだりに入らない。
2.人や個人のものを撮影するときは同意をもらう。
3.ゴミは必ず持ち帰る。
4.道沿いの農作物を勝手に採らない。
5.道端に咲いている花や木の枝を採らない。
6.民家付近等で大声で叫んだり、騒いだりしない。
7.次に訪れる人のために、リボンを持ち帰らない。
8.道案内の看板にはさわらない。
9.未舗装の道は、決まった経路を通る。
10.風景を楽しみながらゆっくりと歩く。
11.車道を歩くときは、車に気をつけて歩く。
12.コースから外れた急傾斜地等での危険な行動は控える。
13.途中出会う旅行者や地元住民の方々と笑顔 で挨拶を交わす。
引用:九州旅ネット九州オルレ オルレのマナーより

《九州オルレ》厳選4コース

九州オルレコースは、2012年からはじまり、2019年6月現在全21コース。どれも魅力があるコースですが、特色のあるコースを4つ選びました。

秀吉ゆかりの史跡歩きの後は海の絶景!|唐津コース

(波戸岬)
  • コース所在地: 佐賀県唐津市
  • 距離: 11.2km
  • 所要時間: 4~5時間
  • 難易度: 初~中級

まずは、歴史好きの方におすすめしたい豊臣秀吉ゆかりのコースから。
秀吉が朝鮮出兵のために築城した名護屋城跡からスタート。約400年前の「歴史・文化」エリアから、唐津焼窯元などがあるのどかな町を抜け、玄界灘をのぞむ波戸岬の海岸トレッキングを楽しむコースです。多くの歴女・歴男が訪れているそうですよ。

【ちょっと寄り道】

名護屋城跡周辺には、徳川家康を筆頭に、前田利家や伊達政宗、上杉景勝など、戦国時代の大スターたちの陣跡が点在しています。こんなにも戦国大名が陣を張ったのはおそらくここだけ。ぜひ、巡ってみましょう。

【交通アクセス】
マイカーの場合
福岡市内より1時間30分。ゴールの波戸岬第1駐車場に駐車し、波戸岬バス停から昭和バス 呼子・波戸岬線 呼子行でスタート地点(名護屋城博物館入口バス停)へ移動する方法がおすすめ。

公共交通機関の場合
行きは、JR唐津線・筑肥線「唐津駅」から昭和バス「呼子線」「値賀・名護屋線」を利用し約40分で、スタート地点の名護屋城博物館入口バス停に到着。
帰りは、波戸岬バス停より昭和バス「呼子・波戸岬線 呼子行」で殿の浦入口へ、「呼子線 宝当桟橋行」に乗り換えJR唐津線・筑肥線「唐津駅」へ。
昭和バス唐津市 九州オルレ唐津コース

九重を眺めながら高原を歩こう|九重・やまなみコース

  • コース所在地: 大分県玖珠郡九重町
  • 距離: 11.1km
  • 所要時間: 3~4時間
  • 難易度: 初~中級

九州の登山人気ナンバーワンの九重。たまには九重を「見ながら」のんびりと歩いてみませんか?

まず、九重の新しい観光地「九重“夢”大吊橋」からスタートし、四季を通して美しい飯田高原を歩きます。クライマックスはラムサール条約登録湿地「タデ原湿原」の絶景!。とにかく自然を満喫したい方におすすめ。ゴールは九重の登山口「長者原」です。

【ちょっと寄り道】

スタート地点の「九重“夢”大吊橋」は、日本第1位の高さを誇る吊橋です。日本の滝百選にも選ばれている「震動の滝」や紅葉の絶景を楽しむことができますので、ちょっと観光してみましょう。

《九重“夢”大吊橋》
料金:中学生以上500円小学生200円
営業時間 : 8:30~17:00 (1月~6月/11月~12月)
8:30~18:00 (7月~10月)
定休日 :無し
電話:0973(73)3800

九重”夢”大吊橋公式サイト

【交通アクセス】
マイカーの場合
大分自動車道「玖珠IC」より25分。ゴールの長者原の駐車場に駐車。「九重登山口みやまバス停」より九重(ここのえ)コミュニティバス「豊後森・豊後中村駅行き」に乗車し「大吊橋中村口バス停」へ移動する方法がおすすめです。

公共交通機関の場合
行きは、JR久大線「豊後中村駅」より九重町コミュニティバス 「九重登山口」行きに乗車し「大吊橋中村口」下車。
帰りは、「九重登山口みやまバス停」より九重コミュニティバス「豊後森・豊後中村駅行き」に乗車しJR久大線「豊後中村駅」へ。
九重町(ここのえまち) 九州オルレ 九重・やまなみコース

風情ある街歩きの後は温泉!|武雄コース

  • コース所在地: 佐賀県武雄市
  • 距離: 12km
  • 所要時間: 3.5~4.5時間
  • 難易度: 中~上級

適当に田舎で適当に市街地で、そんなところを適当に歩きたいならこのコースがおすすめ。しかも最後には温泉に入れるというお楽しみが待っています。
スタートはJR佐世保線「武雄温泉駅」。駅前の市街地を抜け、郊外の自然を楽しみます。その後、昭和の香りが残る武雄温泉街へ。まるで竜宮城への入り口のような「武雄温泉楼門(重要文化財!)」をくぐるとゴールの武雄温泉です。温泉に入る前に、昔の温泉を改装した温泉資料館(無料)を見学しましょう。

《武雄温泉 元湯》
入浴時間:6:30~24:00(受付は1時間前まで)
入浴料金:大人400円 小人(3才~小学生)200円

【ちょっと寄り道】

武雄温泉街をまっすぐ歩けばゴールの武雄温泉ですが、途中から桜山公園に入るとちょっとした山歩きが楽しめます。春は桜、秋は紅葉、山頂の奇岩と、ふもとのお地蔵様が見どころです。
九州オルレ 武雄コース

【交通アクセス】
ゴールの武雄温泉はJR武雄温泉駅の近くなのでスタートもゴールも同じJRの駅を利用できます。
マイカーの場合
長崎自動車道「武雄北方IC」より約10分。武雄温泉駅周辺の有料駐車場へ駐車します。

公共交通機関の場合
JR佐世保線「武雄温泉駅」。

いにしえのロマン 神話の里を歩く|高千穂コース

  • コース所在地: 宮崎県西臼杵郡高千穂町
  • 距離: 12.3km
  • 所要時間: 5~6時間
  • 難易度: 中~上級

宮崎県の高千穂は「天孫降臨」の地と言われる神話の地。先にご紹介した九重の開放的な大自然とは違う、神秘的な空気が漂う森や渓谷が魅力です。
スタートしたら高千穂神社に参拝。高千穂の一番の観光地「高千穂峡」遊歩道を歩き、観光ではあまり入らない山のトレッキング。神々が作ったのでは?とも思わせる奇岩の絶壁や滝など、高千穂らしい自然を満喫した後は、ゴールの「がまだせ市場」に到着します。

【ちょっと寄り道】

オルレコースでは、高千穂峡は遊歩道から日本の滝百選に選ばれている「真名井の滝」や、柱状節理の断崖に囲まれた五ヶ瀬川の渓谷を楽しみますが、もし、時間があれば貸しボートで渓谷の中を遊覧するのもおすすめ。しぶきがかかるほど近くから見上げる真名井の滝は大迫力です。

《高千穂峡貸しボート》
料金:1隻30分/2000円 定員3人(未就学児は2名で1名に数える)
住所:高千穂町向山
電話:TEL:0982-73-1213(高千穂町観光協会)
営業時間:[通常の営業時間]8:30~17:00(最終受付16:30)
[夏休み期間の営業時間] 7:30~18:00(最終受付17:30)

九州オルレ 高千穂コース

【交通アクセス】
スタートの「まちなか案内所」とゴールの「がまだせ市場」は高千穂バスセンターの近くなので便利です。

マイカーの場合
九州自動車道「益城熊本IC」より約75分。「がまだせ市場」からスタートすることもできます。

公共交通機関の場合
高千穂バスセンター下車。高千穂バスセンターには、熊本や福岡、宮崎など各方面からバスが運行しています。
産交バス
西鉄バス
宮崎交通

《宮城オルレ》厳選4コース

宮城オルレは、つい最近、2018年10月からのオープンですが、開始から8か月でなんと1万人が利用したそうです。まだ2コースですが、これからどんどん増えていけばいいですね。

奇岩絶壁と打ち寄せる波の大迫力!|気仙沼・唐桑(からくわ)コース

  • コース所在地: 宮城県気仙沼市唐桑町
  • 距離: 10km
  • 所要時間: 4~5時間
  • 難易度: 中~上級

三陸ジオパークにも指定された絶景を見ながら歩くオルレです。
スタートは唐桑半島先端の「唐桑半島ビジターセンター」から。御崎岬などのリアス式海岸の絶景を楽しみながら、途中、津波で打ち上げられた巨岩の津波石に自然の驚異を感じます。唐桑の町に入ると海の安全の祈る数々の神社を歩き、海岸に咲くニッコウキスゲやハマギクが美しい半造がゴールです。

【ちょっと寄り道】

ゴールの半造からちょっと先に足を延ばすと、景勝地の巨釜(おがま)があります。海岸の数々の巨大な岩礁に太平洋の波が押し寄せる巨釜には、1896年の津波で先端が折れた高さ16mの石柱「折石」を見ることができ、津波の高さや威力に驚きを禁じえません。ここはオルレオプションコースとして整備されていますので迷うことは無いでしょう。
宮城オルレ 気仙沼・唐桑コース

【交通アクセス】
マイカーの場合
東北自動車道一関ICから車で80分。ゴール地点の半造駐車場へ駐車。約20分歩きミヤコーバス御崎線「巨釜半造入口バス停」より、 約15分でスタート地点の唐桑半島ビジターセンター前にある「国民宿舎バス停」で下車します。

公共交通機関の場合
JR大船渡線・気仙沼線の気仙沼駅より徒歩10分の ミヤコーバス三日町停留所から、御崎行(約45分) に乗り、スタート地点の唐桑半島ビジターセンター前にある「国民宿舎バス停」へ。
宮城交通

まるで絵画!日本三景の絶景歩き|奥松島コース

  • コース所在地: 宮城県東松島市
  • 距離: 10km
  • 所要時間: 4時間
  • 難易度: 中級

日本三景「松島」の原風景を楽しむならこのコース。
スタートは復興多目的施設の「セルコホームあおみな」。縄文時代の史跡を見学後、昔は海だった痕跡が残る「陸の奥松島」を歩き、太平洋に突き出た新浜岬(しんはまみさき)へ。再び内陸部に入り、標高105.8mの大高森(おおたかもり)の頂上展望台までがんばって登ると、クライマックスは奥松島の絶景!スタート地点の戻ってゴールです。

【ちょっと寄り道】

奥松島は歩いて巡ってもいいですが、時間があれば遊覧船で巡ってみては?
スタートゴール地点の「セルコホームあおみな」近くに、奥松島遊覧船の乗船場があります。ここから日本三大渓である「嵯峨渓」を巡ることができます。「渓」というと山奥のイメージですが、海の中の渓谷美ともいえる風景が堪能できます。

時間:60分
料金:中学生以上2000円 小学生1000円
電話:0225-88-3997
最終運航:4月~9月 16:00 10月~3月 15:00

【交通アクセス】
スタートもゴールも同じ「セルコホームあおみな」ですので便利です。

マイカーの場合
三陸自動車道「鳴瀬奥松島IC」から約20分。セルコホームあおみな駐車場へ。

公共交通機関の場合
JR仙石線「野蒜駅」からタクシーで10分。周辺にバス停はありません。

大きな荷物はいらない。マイペースで楽しめるオルレ

オルレに大きなバックパックは要りません。身軽なデイパックを背負い、カメラをぶら下げてのんびり歩きたい、そんなコースばかり。一番大切なのは、自分のペースで歩くこと。そしてそれがオルレの一番の魅力。たまにはコースタイムなどを気にせず、気楽に自由に歩いてみませんか?

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