なぜ雨の日に山に登るの?レイニーハイクを楽しんでいる人に聞いてみたらみんな「山への愛」に溢れてた 登山と言えば、やはり青空広がるド快晴の日に登りたいもの。 でも、意外に雨の日に登っているハイカーさんって多いんです。 ナゼ雨の日に登るの? そんな素朴な疑問を、実際に雨の日ハイクで出会ったハイカーさんたちに聞いてみました。 そしたら、やっぱり皆さん山への愛が溢れてました!

雨の日のハイク、実は重要だったりします

(濡れた木の根はよく滑る)

登山は天気の良い日を狙って、というのが一般的です。 青空、木漏れ日、清々しい空気感、そして絶景。 安全面の観点から言っても、やはり登山は晴れた日が一番ですよね。
低山、里山の日帰りハイクでは、好天予報を狙って行けば、よほど雨に降られることはありませんが、微妙な天気予報でも歩きたいとき、アルプスなどの大きな山へ泊まりで行くとき、または大きな山では一時的な天気の急変など、雨に降られるリスクは多々あります。
そんな時、もし雨の中を歩くのが初めてだったとしたら・・・。

雨の日は別の技術が必要?!

(岩は滑りやすいものとそうでないものがある)

快晴のときと違い、雨の中を歩くのは少し様相が異なります。
ウェアや装備面では、レインウェアの性能、きちんと防水できる着方が出来ているかどうか、ザックの防水は充分か、など、知識では充分と思っていることが、実際の雨中ハイクではきちんと使いこなせず、雨に濡れてしまうことも珍しくありません。雨に濡れた衣服が乾くとき、気化熱で体温が奪われ、特に高山では低体温症の危険があります。
また、通気性の高い素材のレインウェアを着ていても、行動時の暑さは不快感と疲労を増し、想像以上に堪えます。

(ツルツルの木の根)

加えて、濡れた木の根や岩などは非常に滑り易く、雨の日独自の足の置場の目利きと歩行技術が求められます。そのため、時々雨のハイクを行ない、ある程度経験を積んでおくことが更なる安全登山へと結びつくことになるのです。

ただし、繰り返しますが、雨の日のハイクは危険が伴います。 特に、アルプスのような大きな山岳地帯では、想像を絶する暴風雨や雷雨など、クリティカルな危険に晒されることもあるため、基本的に入山を控えましょう。

(雨で増水し水流も強い)

また、渡渉 (としょう:川を渡ること) が多いルートなどは、沢の増水により流されたり、鉄砲水などのリスクが伴うため、基本的に近づかないようにしてください。
3,000メートル級の稜線での暴風雨は、雨が真横に飛び交い顔に当たるとBB弾かのごとく痛く、雷は顔のうぶ毛がサワサワと総毛立ち生きた心地がしません。
よって、普段歩きなれた低山や里山など、熟知しており危険が少ない山で、雨ハイクのトレーニングを行いましょう。

ナゼ雨の日に登るの?北八ヶ岳で聞いてみた!

さて、まずは雨ハイクのリスクをお伝えしましたが、実は雨の日ならではのハイクの楽しみ方もあるのです。経験充分でストイックな人ならトレーニングと割り切り、トレランやスピードハイクなど、運動量の多いシャワーランやシャワーハイク。
また、人と遭遇することは激減するため、貸切のような静かな山歩きを楽しむ贅沢ハイク。その他、雨だからこそ輝く苔やシダを楽しむ植物観賞ハイク。

梅雨時の今回、比較的歩いている人が居るだろう雨の北八ヶ岳に行き、出会ったハイカーさんたちに「ナゼ雨の日に山に登るの?」を、ズバリ聞いてきました!

その① 貸し別荘活用、お洒落リッチな仲良し男性トリオ

6月某日、日本列島全体が梅雨入りし、期待通りの雨となった週末、北八ヶ岳にてまず最初に遭遇したハイカーさんたち! 愛知県からお越しの、カワケンさん、クッチャンさん、ライオンさんの仲良しメンズトリオ!

ライター三宅

良かった、本日1時間歩いてようやくハイカーさんに出会えました!

ライオンさん

私たちはにゅう経由で来ましたが、ほぼ誰にも会っていません。 やはり人が少ないですね。

ライター三宅

こんな雨降りの中、どうして北八ヶ岳に来たんですか? 雨降りの登山はよくするのですか?

クッチャンさん

いえ、基本的に雨の日は登りませんよ(笑) 貸し別荘に前泊して、本当は唐松岳を予定していたのですが、雨予報になってしまったため、風のなさそうな北八ッへと変更しました。

ライター三宅

前泊で貸し別荘ですか?!お洒落ですね!
山中にもよく泊まってらっしゃるのでしょうか?

カワケンさん

貸し別荘は自由気ままで良いですよ。
まだ山で泊まったことはなくて、ぜひ小屋泊をしてみたいですね!

普段は鈴鹿の山々を歩いていて、年に数回、貸し別荘での前泊+登山で、アルプスや八ヶ岳に遠征に来ているとのこと。荒天時の唐松岳は、稜線主体で暴風雨や雷のリスクがあるため、樹林帯が多く風の穏やかな北八ヶ岳へと変更したのはとても良い選択です。 雨でも会話が弾んでおり、とても楽しそうに歩いていかれました。

その② 体力アリアリ、爽やかハイカーさん

仲良しトリオさんと別れ、立て続けに第2ハイカーさんに遭遇! こちらは金沢から来た若く体力アリアリの爽やかハイカー、ナベちゃんさん!

ライター三宅

濡れて滑り易いトレイルでも足運びが軽やかですね!
今日はどうして北八ヶ岳に登山に来たんですか?

ナベちゃんさん

天気持ちそうと思って来ましたが、結局雨になっちゃって・・・。晴れてたら良かったんですけどね!

ライター三宅

なるほど、天気は残念でしたね。
よく八ヶ岳には来るんですか?

ナベちゃんさん

いえ、滅多に来ないんです(笑)金沢に住んでるので、よく行く山域は、白山や北アルプスですね。学生時代、中長距離の陸上をやっていたので、往復40kmのハイクとかもするんですよ!

ライター三宅

それはすごい体力ですね!やっぱ陸上経験があると違いますね。

ナベちゃんさん

えぇ、体力には自信あります!

濡れた木の根や岩はとても滑り易く難儀しますが、石ゴロトレイルを事も無げにアップテンポなスピードであっという間に視界から消えていきました。 体力だけでなく、体幹やバランス感覚も非常に優れていることが見て取れました。やはりスポーツで鍛えただけありますね!

その③ 母娘、苔を愛でるため日本東西から合流ハイク

次に出会ったのは、今回はじめての女性たち。 しかも、母娘! お母さまは東京から、お嬢さまは京都から、ここ北八ヶ岳で合流し、久しぶりの親子ハイクを楽しむ「みぃさん」と「アワっちゃん」!

ライター三宅

まさか親子だとは思いませんでした!
雨の日もよく登られるんですか?

みぃさん

そういうわけではありませんけど、ここは過去に2度来ていて、晴れの日と曇りの日だったんです。

ライター三宅

結構頻繁に来られてるんですね!今回は雨ですが・・・

みぃさん

はい、なんだか晴れている日は苔が「乾いている」気がして、雨の日に来て、苔本来の美しさを見たかったので、今回の雨はうれしいんです!

ライター三宅

なるほど、北八ヶ岳の苔の美しさは、確かに雨の日こそ艶が出ますしね!
お嬢さまは雨の日のハイクはどうですか?

アワっちゃん

登山を始めたのが昨年11月で、今回が初めての雨の日ハイクですが、北八ヶ岳の苔の美しさを堪能できて、雨ハイクもとても楽しいです!

しっとりとした北八ヶ岳本来の苔鑑賞を楽しみに来られたお二人、滑り易いトレイルに難儀しながらも、雨ハイクを本当にエンジョイされていました! 雨ならではの楽しみを求め山に入られるのは、相当な山好きです!

その④ カメラ女子ハイカー、苔を求めて北八ヶ岳

続いては、東京からお越しのソロ女性ハイカー、ヨッシーさん! こちらは、目的があれば雨でも歩くツワモノです!

ライター三宅

結構な重装備ですね!
今日はお泊りですか?

ヨッシーさん

いえ、元々雲取山テント泊を予定していたのですが、雨の中テント泊もどうかなと、急遽、雨に濡れた苔を撮影したいと思い、北八ヶ岳へ変更したんです。

ライター三宅

それで重装備なんですね、納得!
で、撮れ高はどうですか?
雨降りの今日は撮影日和ですよね!

ヨッシーさん

それが思いのほか雨が強いため、ザックから一眼カメラを出すことができず、まだ1枚も撮れてないんです(笑)

ライター三宅

そうなんですか!でも確かに大粒の雨にカメラ濡らしたくないですものね。雨の日もよくハイクするんですか?

ヨッシーさん

はい、目的があれば雨でも歩きます。
例えば、山の中の温泉めぐりとか・・・。

ライター三宅

それはすごい!
公共交通機関で急遽の変更に対応できるし雨でも歩くし、山も下界も旅慣れてるんですね。

ヨッシーさん

特に雨の日は、足運びとか学ぶことが多いので、晴れた日とは違うんですよね。

ライター三宅

そのとおりですよね、さすがです!

ヨッシーさんは雨ハイクの経験を積んでおり、雨ならではの歩行課題も理解されていました!
その後、無事小雨になってきたため、バスの時間まで白駒池周りの苔の撮影に出掛けていかれました。

やっぱり皆さん、山への愛に溢れてた!

その後、見る見る青空が広がり天気が回復。 予報では終日雨でしたが、結局午後からは青空広がる晴天に。 こんな予想外のご褒美も、天気が変わりやすい山ならでは!

今回、雨の北八ヶ岳で4組のハイカーさんと出会い話を伺いましたが、やっぱり皆さん、雨でも山を歩きたい!という、山への愛に溢れたハイカーさんばかり! それぞれのハイカーさんから楽しいお話が聞け、それだけでも充実したハイクになりました。

その翌週末、「横殴りの雨」予報だったため、トレイルランナー取材にこれは好機と里山へトレランに行った筆者でしたが、予報が悪すぎて、一人のトレイルランナーにも出会えなかったという後日談も・・・。
やはり何事も適度であることが大事ですね。それでは皆さま、安全に配慮しどうぞ良いレイニーハイクを!

文・撮影 三宅 雅也 (山岳ライター、長野県自然保護レンジャー)

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