大切なのは“登山の行程管理”ーーカシオ開発担当者に聞く『プロトレック』のベストな選び方 アウトドアウォッチの代表格、<CASIO(カシオ)>の“PRO TREK(プロトレック)”。登山をはじめ、釣りやゴルフなど、様々なアウトドアシーンで愛用されている人気の腕時計です。一言で“プロトレック”といっても、その種類は豊富。自分にぴったりのモデルがどれなのか悩んでしまう人も多いようです。そこで今回はプロトレック開発担当者を直撃! 自分の登山スタイルに合った1本の選び方を教えてもらいました。

登山用に『プロトレック』がほしい! どれがおすすめ?

みなさんは登山の時に腕時計をつけていますか? 筆者はいつもスマホで時間を確認しているのですが、出したり仕舞ったりがやはり面倒…。落とす心配もありますし、まさに今、腕時計の購入を検討しているところです。

候補は<CASIO>の“PRO TREK”

様々なメーカーがアウトドアシーンで使える腕時計を多数ラインナップ。その中で候補の1つとして考えているのが、日本の精密機器メーカー<CASIO(カシオ)>のアウトドア腕時計“PRO TREK(プロトレック)”です。

ということで、“プロトレック”のカタログを熟読。ところが…

そんなこんなで、メカ音痴の編集部員はラインやモデルごとの違いがイマイチ分からず混乱。「やっぱりスマホで時間を見ればいっか!」とあきらめかけたときに閃きました。

【開発担当者を直撃】プロトレックの選び方を聞いてきた!

早速、東京都羽村市にある『カシオ計算機株式会社 羽村技術センター』へ。 自分にぴったりの“プロトレック”の選び方を指南していただきました。

教えてくれたのは、プロトレックの企画開発を担当された牛山さん[右]と小島さん[左]。

編集部 荻原

登山用に腕時計がほしいのですが…多岐に渡るプロトレックのラインナップの中から、自分にぴったりの1本を選ぶコツを教えてください。

牛山さん

プロトレックを選ぶ際の最初の分かれ道は、ズバリ「地図読み」です。

すばやく現在地を確認したいなら『プロトレック スマート』

牛山さん

初めて行く山だと、今自分が歩いている道が正しいのかどうか常に不安な状態ですよね。そこの心配を解消して山登りをしたいのであれば、時計の中に地図を入れられるスマートウォッチタイプの『プロトレックスマート』がおすすめ。

GPSが入っているので現在地が地図上に表示されますし、自分のトレース(軌跡)も表示できますよ。

編集部 荻原

紙地図と併せてスマホで登山用のGPS地図アプリを使っていますが、腕時計なら見たい時にサッと確認できるので楽ですね。

牛山さん

『プロトレックスマート』はYAMAPさんと協力していて、GPS登山地図アプリ『YAMAP』を快適に使えるように作り込まれているんです。

編集部 荻原

YAMAPのアプリをそのまま時計に入れて、YAMAPの地図を見ることもできるとは! なんだかもう『プロトレック スマート』でいいかもと思ってきました。

牛山さん

ただ、GPSやカラー表示のために電力を食うんですよ。なので、長期にわたる縦走の際は、充電が必要になる場合もあります。

編集部 荻原

そうした点も踏まえて、腕時計で「地図読み」をしたいなら『プロトレック スマート』一択。地図表示が不要であれば、スマートウォッチではないラインを選べばいいわけですね。

牛山さん

腕時計で「地図読み」ができることの先にもメリットはあって。地図やGPSを時計に任せて、スマホの電源を切ることができる。そうすると緊急連絡用に充電を取っておくことができるんです。

スマホのGPS地図アプリと同様に、道迷いの危険が軽減されるという点で、スマートウォッチタイプの腕時計はひとつの選択肢になりますよ。

“ソーラー電波腕時計”は、とにかく手間がかからない!

編集部 荻原

では、スマートウォッチではないラインの特長は何でしょうか?

牛山さん

『マナスル』『クライマーライン』『マルチフィールドライン』は、太陽発電・電波時計なので、充電をしたり時刻を合わせる必要がなく、使う時に手間がかからないのが最大のメリットです。

編集部 荻原

長期の山行でも安心ですね!

「方位」「高度」「気圧」をフル活用! 便利な機能を搭載

牛山さん

デジタルとアナログで表現方法は異なりますが、「方位」「高度」「気圧」といった登山で必要な情報を得られます。高度計を使って等高線が何本かを測れるくらいの精度のものを搭載しているので、これでも十分に地図が読めるんですよ。

「高度」については、標高とは別に高度差を表示できるようになっている。

牛山さん

例えば尾根を下っているときに地図を

見てみると、80mくらい下ったら支尾根に入っていかなければならないとする。実際に80m下ったかどうかって、自分では分からないですよね。

編集部 荻原

分岐を見逃しそうになることあります!

牛山さん

そんなときにボタンを押して数字を一旦0にした状態で下っていくと、数字がマイナスになっていき、何m下ったかどうかを確認できるんです。“-80”になった時点で周りを確認すると、分岐を見逃さない。「気圧」を使った「高度」という情報をフル活用できるような作りになっているのも特長です。

「気圧」については、定期的に計ってグラフで表示。気圧が急激に下がるなどの特別な変化が表れたらアラームがなるような仕組みになっている。

牛山さん

テント場や山小屋に着いたら気圧計測の機能をオンにすると、到着時点からの気圧の変化を計測できます。急激に天気が悪くなるような傾向が表れたら、「ちょっと翌日は停滞しようかな」といった判断をするのに役立ちますよ。

編集部 荻原

「方位」「高度」「気圧」から、登山で役立つ様々な情報が得られるようになっているんですね。

使いたいフィールドに適した“ライン”を選ぶべし!

編集部 荻原

では、『マナスル』『クライマーライン』『マルチフィールドライン』の違いは何ですか?

牛山さん

山だけでなく水辺のアクティビティでも使うかどうかで、選ぶべきラインが分かれます。

編集部 荻原

『マナスル』って8,000m峰でも使える最高峰モデルですよね。一般登山者にはハイスペックすぎるのでは…?

牛山さん

よく言われるんですが、それは大きな誤解なんですよ。『マナスル』と『クライマーライン』は、機能的には同じです。

『マナスル』は傷がつきにくいサファイアガラスを使っていたり、金属にはチタンを使っていたりするので、時計としての仕上げの部分でグレードが高いんです。

小島さん

全体的に強化され、より耐久性が高い点が最高峰。値段も最高峰(笑)。表面硬度を上げるために、耐摩耗性に優れたTIC(炭化チタン)コーティングをしているので、どうしても高額になるんです。

編集部 荻原

そうでしたか、完全に勘違いしていました!岩場に行くことが多い方にも良さそうですね。

【登山の行程管理が肝!】デジタル派? それともアナログ派?

小島さん

自分にぴったりのラインが分かったら、デジタル表示とアナログ表示のどちらにするかを選びましょう。『マナスル』はアナログ表示だけですが、『クライマーライン』と『マルチフィールドライン』には、両方あります。

編集部 荻原

アナログとデジタル、これはもう好みですよね?

牛山さん

好みは半々くらいで分かれますね。現代のデジタルネイティブの人は数字で見て、残りの行動時間や日没までの時間を頭の中でパッと計算できるみたいなんですが、アナログで育った人や、普段アナログを使っている人は、針の角度で感覚的に捉えた方が簡単だしミスがないという場合もあるんです。

編集部 荻原

時間以外の表示方法も違いますよね?

牛山さん

はい、例えば「方位」であれば、アナログは秒針がコンパスに、デジタルはリング状の部分に■(四角)で表現されます。

とは言っても、一番見るのはやはり時間。時間は山を歩く中でも重要な情報です。時間をきっちり把握して行動する、時間を腕という一等地で頻繁に見ることで、登山の行程管理やリスクヘッジをしてもらいたいですよね。

編集部 荻原

アナログかデジタルか、自分が登山の行程管理をしやすい表示を選ぶのが重要ですね!

バンドの種類が豊富! お気に入りのデザインを選ぼう!

小島さん

アナログかデジタルか決まったら、あとは好みのバンドを選ぶだけ。それぞれのラインで展開している各モデルの型番ごとの違いは、デザインや色、素材などバンドのバリエーションです。

編集部 荻原

メタルやシリコーン樹脂などデザインが豊富で、見た目の印象も変わりますね。メタル素材って、雪山とかで冷たくないんですか?

牛山さん

時計は基本的に腕から外さないので、どんなに外気温が低くても、時計が冷えることはないんです。「凍傷にならないですか?」と聞かれることがあるんですが、凍傷になることはまずありません。

編集部 荻原

登山者に人気のバンドはどれですか?

小島さん

登山のときだけでなく普段も使いたいという方には、ビジネスシーンでも合わせやすいメタルが人気です。お客様の方で簡単にバンドの取り外しと交換ができるようになっているモデルもあるので、仕事の時はきちんと感のあるメタル、山ではシリコーン樹脂など、付け替えることもできますよ。

牛山さん

昨年発売して大人気だったのが、このカラビナ。クライマーの方とか、登山者もザックのショルダーストラップに時計をつけている人が結構いますよね。外れて落ちてなくしたりする人もいるんです。それを解消したいと思って作ったものなんです。時計が逆向きになるので、覗き込むだけで時間を確認できますよ。生憎、完売してしまったのですが…。

編集部 荻原

ベルトを付け替えて、シーンに合わせて楽しめるのは嬉しいです。

小島さん

アウトドアやファッションブランドとのコラボモデルも増えているので、お気に入りのモデルを見つけてみてくださいね。

→選び方をまとめたフローチャートをご紹介!

『プロトレック』の選び方をチャートでチェック!

CASIOの牛山さんと小島さんに指南していただいたポイントを踏まえて、まずはフローチャートで自分にぴったりのライン・モデルをチェック!

理想に合うモデルが分かったら、辿り着いた番号の製品へ。好みのバンドや素材、カラーを選びましょう。

【1】GPS搭載スマートアウトドアウォッチ|プロトレック スマート(WSD-F30)

プロトレック スマート(WSD-F30)

【2】アナログ×太陽発電・電波時計×山×高い耐久性|マナスル(PRX-8000)

マナスル(PRX-8000)

【3】アナログ×太陽発電・電波時計×山|クライマー ライン(PRW-50,60,6100)

クライマーライン(PRW-50)
クライマーライン(PRW-60)

クライマーライン(PRW-6100)

【4】アナログ×太陽発電・電波時計×山&水辺|マルチフィールド ライン(PRW-7000)

マルチフィールドライン(PRW-7000)

【5】アナログ×太陽発電・電波時計×タウン|その他ライン(PRG-6600)

その他ライン(PRG-6600)

【6】アナログ×太陽発電|その他ライン(PRG-600/650)

その他ライン(PRG-600/650)

【7】デジタル×太陽発電・電波時計×山|クライマー ライン(PRW-3100)

クライマーライン(PRW-3100)

【8】デジタル×太陽発電・電波時計×山&水辺|マルチフィールド ライン(PRW-3510,2500)

マルチフィールドライン(PRW-3510)マルチフィールドライン(PRW-2500)

【9】デジタル×太陽発電|その他ライン(PRG-330)

その他ライン(PRG-330)

登山の行程管理に『プロトレック』を活用しよう!

多岐に渡るラインナップの中から、自分に適したモデルを見つけられたでしょうか?

筆者が辿り着いた1本は、デジタル表示のソーラー電波時計かつ山に特化した「クライマーライン」の“PRW-3100”。早速、山で試してみました。

女性の手につけても大きすぎないサイズと軽さ、表示の見やすさ、操作性が◎。まだまだ使いこなせていませんが、「方位」「高度」「気圧」から得られる情報を登山でフル活用できそうです。

来年2020年に誕生から25周年を迎えるプロトレック。山行をサポートしてくれる画期的な新製品の登場が今後も楽しみですね!

【余談】<CASIO>といえば、G-SHOCKもあるけど…

編集部 荻原

そういえば、カシオには“G-SHOCK”もありますよね。頑丈なイメージで登山に良さそうですが、おすすめは“プロトレック”ですか?

牛山さん

例えばG-SHOCKの『マッドマスター』も、プロトレックの『マナスル』や『クライマーライン』と基本の機能は同じです。ただ、山で使うにはサイズが大きいですよね。重さと厚みもあるので、ザックを背負う時に引っ掛かったりする煩わしさを考えると、プロレックが使いやすいと思います。

編集部 荻原

耐衝撃でガシガシ使っても壊れにくい、防水性能も20気圧なので、「大きさや重さは気にしない、Gショックというブランドが好き!」という人にはGショックという選択肢もありですかね。

牛山さん

そうですね、ただ表示の見やすさが全然違います。山で使うことに特化しているプロトレックは時間・標高などの必要な情報を真ん中に大きく表示。Gショックは時間は下段、他の情報も一緒に表示されます。山での視認性にもこだわって作っているのが“プロトレック”なんです。

編集部 荻原

最近は山行のログを取りたいという人も多いですよね? G-SHOCK『レンジマン GPR-B1000』もログを取れますけど、やはり登山に特化しているプロトレック スマートがベターでしょうか?

牛山さん

ログさえ取れればいいという方なら『レンジマン』でもOKですが、自分の歩いた軌跡しか分からないんです。登山をする人なら、地図上で自分の現在地が把握できる『プロトレック スマート』の方がおすすめですね。

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