はやぶさ2とVサイン

 小理屈をこねるようだが「大(だい)の大人」とは奇妙な言い方だと、長いこと思ってきた。「大きくなった大人」とは変だな、と。本当はそうではなくて「大の」には「一人前の」「分別をわきまえた」という意味があるらしい▲りりしく、若々しい笑顔にこそ、Vサインは似つかわしい。分別あるはずの、落ち着き払った「大の大人」が一斉にやると、不似合いな感じがするはずだが、この人たちが取ったそのポーズは「すがすがしい」の一言だった▲探査機はやぶさ2が小惑星りゅうぐうに2回目の着陸を果たした。地下にある岩石の破片の採取に、世界で初めて成功したとみられる。管制室で見つめていた運用チームの人たちは、そろってVサインを見せた▲皆さん、落ち着いた面持ちで「最大の任務」を見守ったという。拍手をし、爽やかなVサインで喜びを表す。ああ、想定通りにいってよかった。そんな安堵(あんど)の“産物”でもあったろう▲岩石の破片を地球に持ち帰り、太陽系の起源に迫るという。生命はどうやって始まったのか。この先さらに、とてつもない成果が期待される▲会見で運用チームの人は、はやぶさ2を「仲間の一員」と呼んでいた。チームと同じく、落ち着いた、分別ある行動で任務を全うしたように見える探査機に“同志”のVサインは届いたろうか。(徹)

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