国民民主党・玉木雄一郎代表「家計第一の経済政策で、 地方と家計から日本経済を盛り上げる」|参院選2019政党インタビュー

選挙ドットコムでは参院選の比例代表に候補を擁立している各政党・政治団体(以下、各党)の代表・幹部に参院選の争点・政策や政治・選挙の意義について聞く取材依頼を行い、取材を受諾した各党の代表・幹部にインタビュー形式で取材しました。今回は国民民主党・玉木雄一郎代表へのインタビューの模様をお届けします。

参院選の一番の争点は経済対策。「家計第一」をスローガンに、ポストアベノミクスとなる我々流の政策を訴えていきたい

‐‐ 選挙ドットコム編集部(以下、選挙ドットコム)
最初に、今回の参院選の争点はどこにあるとお考えですか?

玉木雄一郎 国民民主党代表(以下、玉木氏)
第一の争点は、やはり経済政策です。みんなが心配しているのは「自分たちの暮らしがどうなっていくのか」ということ。

アベノミクスの政策は、株価を上げたり雇用状況を改善できたという点において、私は一定の評価をしています。ただやっぱり、一部大企業だけ、一部の都会だけよくなって、なんだかあんまり個々の懐に響いていないなあということを感じているのも確かな事実ですよね。

そこで私たちはアベノミクスに対して「家計第一」の経済政策を挙げました。一言で言うと、消費を軸とした好循環を作っていきたいと。とにかく家計をあたためて、可処分所得を増やしていく。安心して物を買ったり、旅行に行けたりできるように「入っていくものを増やして、出ていくものを少なくする」ということで、消費をね、活性化させたいの。GDPの6割は消費なので、ここを元気にしていくというね。私たちなりのポストアベノミクスというか、我々流にアベノミクスを補う方策としての「家計第一」の考え方を柱に、しっかり訴えていきたいですね。

近江商人の「三方よし」の精神で、大企業や都会だけでなく、地方や家計も潤うバランスの取れた経済成長を目指す

‐‐ 選挙ドットコム
「家計第一」の経済政策とは、どのようなものでしょうか。

玉木氏
今回の参院選に当たって我々は「家計第一」というスローガンを立てて、こんなパンフレットを作ったわけですが、多くの方に「けっこう響くね」と言われました。私の顔は覚えてくれないんだけど(笑)、家計第一という言葉はまさに心というか懐に響くフレーズだってことですよね。

株価が上がって雇用が増えて景気がいいというけれど、結局、所得が増えていないんですよ。令和の時代を迎えて、改めて平成という時代を振り返ると、家計所得の中央値っていうのは120万円以上下がってしまっている。率としては約2割。家計に関していえば、以前よりも2割も、貧乏になっちゃっているんです。

景気がいいと言われも、それぞれの懐具合は厳しいから全然、実感できない。さらに農家所得も落ちているんですね。これが地方における消費の減退に拍車をかけている。

今までアベノミクスは、どちらかというと家計よりも企業、地方よりも都会という軸で経済対策を行ってきました。これまでアベノミクスで光が当たりにくくなっていた家計や地方に光を当てて盛り上げていけば、全体としてぐっと盛り上がってきて、バランスの取れた経済成長ができるんじゃないかと。

私は、近江商人の心得である「三方よし」という言葉好きなんですよ。「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」っていうね。売り手と買い手がともに満足し、また社会貢献もできるのが商売であると。世の中の経済も全く同じで、どこか1つのところが全部富を独占してしまうと、結果として全体はよくならないし、さらに富を独占していたところも悪くなっちゃう。あんたも私もみんなもいいっていうのが、一番いいわけ。

そういう意味で三位一体のバランスが大事なんだけど、明らかに企業セクターばかりよくなっていて、家計や地方が細っているので、ここをね、元気にしていきたい。それでこそ日本全体が成長していけるわけです。

国民の一番の心配は、ぶっちゃけ「お金」。家計をあたためるためには、今、消費税を上げるべきではない

‐‐ 選挙ドットコム
たしかに好景気と言われても、自分の懐具合は厳しくて、全然実感がわかないという声も聞きますよね。将来の年金も不安だから、お金を使おうというムードにもならないかも知れません。

玉木氏
そうなんです、好景気の実感がまったくない。さらに「なかったこと」になっちゃった報告書じゃないけど、年金問題とかも家計の圧縮に直結してくる不安要素なんですよ。みんな、今の暮らしもだけど「自分の老後、どうなっちゃうのかな」と不安なわけです。政治の大きな役割はみんなの安心できる暮らしを作っていくということだから、あえてはっきり言うと、ぶっちゃけお金=経済の話になりますよね。なので我々は、ここにびしっと焦点を当ててね、税制とか社会保障とか、いろいろなことを提案していこうと。

ひとつは家計を温めるためにはね、やっぱり消費税は今、上げちゃダメだってことです。これは明確に申しあげたい。私は財務省の出身なので、財政再建の必要性はよくわかっているんですよ。ただ明らかに昨年の年末から景気の動向は下降局面にある。家計や消費を軸として好循環を作るためには、今、消費税は絶対にあげるべきではない。

もうひとつは、法人税が低すぎるんじゃないかなと。今、各国で法人税の引き下げ競争をしているから「うち(日本)だけ高くしたら外に逃げますよ」となるんだけど、これは各国協調して、ある程度の水準まで引き上げていくことが大事。最低賃金という言葉があるでしょ、私は法人税の最低税率っていうのを作ったらいいなと。そうすれば各国ある程度、法人税の税収が見込めるしね。

GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの米4社のIT企業のこと。それぞれの頭文字を取って称される。)みたいにね、すごく儲けているけど、既存の法人税体系では国に税収が入ってこないような事態も起こっているので、こういう対策もきちんとやりながら、でもその中で従業員に賃金やボーナスをたっぷり払ったところには、法人税減税も同時に行っていく。

これ以外にも賃上げや減税の方策も「家計第一」の政策の中では、たくさん提案しています。とにかく家計をあたためるありとあらゆる手立てを、国民民主党みんなで知恵を絞りつくしてまとめたものですから、これを強く提案していきます。

一人区に野党統一候補を立てる理由は、まずは今の一強状態を是正して、緊張感のある国会を取り戻すため

‐‐ 選挙ドットコム
今回の参院選では全野党が協力して、1人区に統一で候補を立てることになりましたが、政策の違うほかの党と組んで候補者を立てるのはなぜでしょうか。

玉木氏
それぞれ政党が違いますから複数の人が当選する地域では、もちろん各党が切磋琢磨して争いますよ。比例名簿もそれぞれ違うしね。

でも一人区は、1人しか当選しない。与党1人の候補者に対して、野党が複数というか2人候補者を立ててしまうと、その時点で負けが決まるんです。そこで与党と野党で1対1の構造に持ち込むために、みんなで話し合って野党の候補を1人に絞ろうと。今年の1月28日に野党の党首間で話をしまして、主張はいろいろあるけれど、32ある一人区は1人に絞ることに決まりました。

ただ、野党側の候補を1人にするだけじゃ勝てないと思うんですね。自民党や公明党の与党はやっぱり強いですよ。だから1人にしたうえで、1人区については野党すべてが自分の党の候補者だと思って、一生懸命応援していこうよということも取り決めました。

‐‐ 選挙ドットコム
そこまでして、野党の議席を増やそうとする理由は?

玉木氏
野党全体の議席を増やして、政治にもっと緊張感を作りたいんです。今は、いわゆる一強状態ということで、自民党が衆参とも3分の2近く議席を占めているわけです。そうすると「おかしいじゃないか!」って声を上げても、全部数のちからで弾かれてしまって、中身のある議論がやりにくい。

この一強状態は、国民の関心が政治に向かない原因にもなっている。プロ野球のペナントレースでもそうなんだけど、1チームだけめちゃめちゃ強かったら球場に行こうと思わないでしょ、つまんないもん。ある程度「どっちが勝つかな」「今夜打つかな」みたいな、ワクワク感というか緊張感がないと。

そもそも、得票数はそんなに変わらなくても今の選挙区だったり、選挙のある種の制度的な特徴によって、実際に入れた票以上に議席数に差がついているというのもあって、あの議席数が民意をちゃんと反映しているのか、というところもありますけどね。

とにかく私は、与野党がひっくり返るまで行かなくても、かなり接近した議席数になれば、お互いリスペクトもするし、相手の意見を尊重しながらいい議論ができるようになってくるのかなあと考えているので、まずは国会の環境を変えるためにも統一候補で戦おうと。
これで緊張感のある国会を取り戻したいなあと考えています。

今、政治家に求められるのは、国民の代表としての「コミュニケーター」の役割

‐‐ 選挙ドットコム
今回のインタビューの企画として、さいころを振っていただいて、こちらが用意した質問にランダムで答えていただくというのがありまして。

玉木氏
よしやろう! お、5番が出た。

‐‐ 選挙ドットコム
それでは、5番の質問です。「若い人は政治・政治家に無関心。政治は若い人を向いていないという声をどう考えますか? そのような中で今、政治家に求められることはなんでしょうか」

玉木氏
政治家に求められているのは、コミュニケーション力だと思いますね。私もネットで叩かれたりするんですけれど、それもコミュニケーションのひとつと捉えています。これをきっかけに自分の考え方をもっと知ってもらいたいなと。

「最近、いいこと言うようになってきたじゃないか」とも、よく言われるけど、私は前から言っていることは同じなんですよ。逆に「じゃあ前はどんなイメージ持ってたんだ?」と聞きたくなるくらい。でもこれは、我々が思っている以上に、政治家が知られていなかった証拠でもあると思うんです。最近になってやっと、玉木という政治家があんなこと言ってるぞ、と認知されてきたということですよね。

自分たちの率直な考えや思いをいろんな場面で一生懸命伝え、同時にみなさんの考えや思いを真正面から受け止めて、それを政策に反映していくという地道な努力が、大事だと思うんです。

みんな安倍総理に「これを聞きたい」と思っても、聞けないじゃないですか、直接は。テレビで国会中継見ていても。でも、そんなみなさんの思いや考えを、私の口を使ってね、安倍総理にぶつけていくことは可能なんです。コミュニケーターとして、総理や政府と有権者の間に入ってつなぐ、代わりに聞く、代わりに議論する。これぞまさに代議士=政治家の仕事ですよね。昔の政治家みたいに偉いんだ~と人の上に立っている感覚ではなくて、有権者の声をたくさん聴いて、有権者の代わりに総理や政府とコミュニケーションする姿勢が非常に大切ではないかと。

だから最近私は、代表質問に立つときや党首討論に立つ前に「総理に聞きたいことある?」とネットで呼びかけて、出てきた質問や意見を踏まえて質問するようにしています。世の中の変化が速いから、自分で勉強するだけじゃなく、どんどんみなさんからインプットをもらって、オープンイノベーションで世の中の様々な意見や知恵も借りながら、自分たちの政治・政策を組み立てていくのがこれからの新しい政治家像だと思っているので、ぜひみなさん私と国民民主党にいろんな意見をください。

若い世代に政治に関心を持ってもらう機会になると手ごたえを実感。どんなにdisられてもYouTubeで発信し続ける!

‐‐ 選挙ドットコム
玉木さんと言えば、国会議員としてYouTuber宣言をいち早くされた方として有名ですが、ご自身の「たまきチャンネル」でも活躍していますね。反応はいかがですか?

玉木氏
ははは(笑)。批判も多いんだけどね。めっちゃdisられるし。

でも今回、自分のチャンネル内で、例の「高齢化社会における資産形成・管理」っていうなかったことになっている報告書をね、プレゼントするよ、といったんです。これ、ふせんがついてて実は玉木が中にマーカーまでひいててさ、総理に渡して安倍総理が直接握ったやつ。レアものですよ(笑)!そうしたらなんと、100人以上の応募があってね。多くは10代・20代の人から。

‐‐ 選挙ドットコム
若い世代からそれだけ反応があるって、すごいですね。玉木チャンネルは若い人の政治離れ対策ということでもあるんですね。

玉木氏
某調査会社の世論調査で、国民党の支持率は、全体では1.6%とか、1%台が多いんだけど、以前の調査の内訳では29歳以下の男子の支持率は10.2%とか出たこともあるんだ。この世代では自民党に次ぐ、第二党の支持率になっていたりするわけ。今もそれはあんまり変わらなくて、最新の調査だと29歳以下の女性の支持が高かったりとかね。

新聞やテレビなどの既存のメディアで私のことを全く知らなかった人が、唯一YouTubeの「たまきチャンネル」で私のことを知って、アンケートに「国民民主党」って答えているとしか思えないような調査結果なんですよ。

本当にうれしかったのは、あれ見て「1回国会に来たい」「玉木さんの部屋がみたい」って、メールを送ってきてくれて、本当にこの部屋を訪れた高校生がすでに3人いるってこと。あのチャンネルを見て、私や国民民主党や国会に興味を抱いてさ、自分で勇気だしてメールして、ここまで来るっていう行動を、若い世代が起こしてくれたことがうれしいわけ。

ネットで政治というとすぐ、右か左かっていう話になるけれども、私はね、右とか左とか言ってるところでダメだと思うんですよ。ネットで政治に少しでも興味を持ったらね、今度はテレビで国会中継見たり、実際に国会に足を運んだり、いろんな新聞読んだりしてさ、ネットに書かれているような極端に右・左に偏る論争はどっちもウソだと実感してほしい。真実を、自分の目や頭で発見していく、その力を若い人が身につけてくれたらそれが一番うれしいなあ。

私自身も彼らにメールをもらって、実際に会ってみて、あーだこーだと既存のメディアに批判されてはいるけれど、一生懸命発言したことは、ちゃんと若い人たちに届いているという手ごたえを感じました。

正面から問題に向き合って、おかしいことはおかしいと言って、代わりの解決策をきちんと示していきたい。改革中道の国民民主党を、若い人はもちろん、世代を問わず多くの人にぜひ知ってもらいたいんだなぁ。

そのためにも、私たちの声をみなさんに届ける新たな手段として、どんなにdisられてもYouTubeで発信し続けようと思っているんですよ。今はネットの時代だから、ウソやきれいごとは全部ばれてしまう。きちんと正しいこと、信じたことを言って、間違えたらしっかり謝る、という姿勢でやっていかないとね。

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