イケッコ、トーロ? 漁師町・三浦の方言がCDに

CD化に向けて音声の吹き込み作業に励む「ひばりの会」メンバーら

 三浦市の朗読サークル「ひばりの会」が、地域に残る方言を音声で保存する活動に取り組んでいる。地元出身の男性が書き留めた方言のメモを基に、今春からCD化に着手。「方言は次第に使われなくなっており、何もしなければなくなってしまう」と一念発起したメンバーたちは、来年の完成を目指し奮闘している。

 「イケッコ」「トーロ」「アカギ」「ナキンズラ」-。いずれも漁師町の同市白石町に伝わる方言だ。それぞれ「池」「クラゲ」「キンメダイ」「泣き虫」を意味する。6月下旬、市社会福祉協議会(同市南下浦町菊名)の一室に集まった同会メンバーが、手元のメモを頼りに標準語への言い換え作業を進めていた。

 同会は1988年、市主催の朗読講座を受講した主婦らで設立され、現在は60~80代の市民ら12人で構成する。月2回ほど勉強会を重ね、市内を中心に保育園や老人ホーム、グループホームでの読み聞かせを実施。同協議会が隔月発行している広報誌の音訳などにも取り組んでいる。

 方言の保存作業に乗り出したのは4月から。伝承役を担ってきた漁師の代替わりや住民の高齢化を背景に、近年は方言を耳にする機会が激減。「話せる人はもうほとんどいない。音声をいま残さなければ、取り返しがつかなくなる」。そんな危機感を抱き、1年ほど前から準備に当たってきた。

 参考資料として着目したのが、白石町出身の石渡喜一郎さん(83)の冊子だった。石渡さんは高校卒業後から方言に関するメモを書き留め、冊子には500以上の言葉とその例文が記されていた。

 同会は石渡さんに音声化への協力を依頼。方言のパートは石渡さんが、標準語への言い換えのパートは同会メンバーがそれぞれ吹き込むことにした。作業は今夏にも終わる予定で、編集作業を経て来年にもCDを完成させた後、市内の公共施設などに配ることを検討していく。

 「方言は地域ごとに全く異なり、特色を表す大事なもの。なくなるのは寂しい」と同会の脇坂清子会長(87)。「方言を通じ、地域の特色や懐かしさを感じてもらえたら」と話している。

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