日本共産党・小池晃書記局長「消費税ストップも賃上げも可能。明日に希望を持てる政治を作りたい」|参院選2019政党インタビュー

選挙ドットコムでは参院選の比例代表に候補を擁立している各政党・政治団体(以下、各党)の代表・幹部に参院選の争点・政策や政治・選挙の意義について聞く取材依頼を行い、取材を受諾した各党の代表・幹部にインタビュー形式で取材しました。今回は日本共産党・小池晃書記局長へのインタビューの模様をお届けします。

第一の争点は、年金問題についてと消費税増税問題。これを3つの独自政策で解消し、国民に明日に希望がもてる生活を取り戻す

‐‐ 選挙ドットコム編集部(以下、選挙ドットコム)
今回の参院選の最大の争点はなんでしょうか。

小池晃 共産党書記局長(以下、小池氏)
やっぱり争点のひとつは年金ですよね。年金を中心にした暮らしの問題が、今回の選挙の大きな柱になると思うんですよ。

年金がね、毎月5万5千円足りなくて、それを補うのに2000万円必要だと。あの問題は本当に、非常に残念です。でも現実問題としてね、今の若い人は2000万円じゃすまないんです。これからも年金は減っていきますから。このままじゃ、全く暮らしていけないような数字になってしまうのではないかなと。

国民年金は今、40年間毎月保険料を納めて、月6万5千円の支給。これでも足りないのに、今の年金制度だと41歳以下の人はみんな月4万5千円になってしまうんですよ。老後を支える年金が、そういうまずしい年金でいいのか。税金の集め方や使い方を今すぐ変えなきゃいけないんじゃないかと我々は考えています。

たとえば富裕層や儲かっている大企業にもっと負担してもらうとか、あるいはF-35なんていう最新戦闘機に何兆円もつぎ込むより、そのお金で、みんなで年金を支えるようなそういう制度にしようじゃないかと。毎日の生活も大変な中、将来の老後に備えて必死で2000万円貯金するよりも、あなたの一票で政治を変えるほうがよほど簡単ではないですか、と。そういうことを訴えていきたいです。

もうひとつは消費税をこれだけ景気が悪くなっているときにあげていいんですか? ということですね。税の在り方にいろんな意見の違いがあるとしても、こんなに暮らしが大変な今、さらに消費税を上げたら、本当に日本の景気はどん底になってしまうのではないですか。だから消費税増税は中止して、家計を温める政策が必要だと考えます。

‐‐ 選挙ドットコム
憲法改正についてはどう考えていますか?

小池氏
自民党は、すごく憲法改正を言っていますが、本当に今、憲法を変えるのかというのも大きな争点のひとつですね。

どんな世論調査をやっても「安倍政権に何を期待するか」という質問に対して「憲法改正」というのは、一番下のほうに出てくる答えですよね。国民のほとんどが、今すぐ憲法を変えてくれと言ってるわけではないんですよ。そもそも憲法というのは権力の側を縛る法律ですから、縛られている側の総理大臣が率先して、自らその縛りを緩めようと改憲しようと主張すること自体、間違っていると思います。

それにあのトランプさんが日米安保の見直しを言い出すというのは「一緒に戦争できる国になってくれ」って言っているってことじゃないですか。「アメリカの若者は血を流すけど、日本の若者は血を流さない、これでいいのか。不公平だ」っていうんですよ。つまり日本は、アメリカと一緒に血を流す国になれっていうのがトランプさんの主張。そういう方向にどんどん進むような改憲、していいのか、できるのかっていうことです。

原発の問題も、そもそもコストの面で原発は成り立たなくなってきている。海外への輸出は全部、失敗しました。結果、ビジネスとしては全く先が見えない状態です。「原発はクリーンで安全だ」というのも、福島でそれが嘘だとはっきりわかりました。そして原発事故の処理のために莫大な費用が必要なことも国民は知りました。「原発が安全だ」というのも、ウソだということがわかりつつあるわけです。だからやっぱり再稼働という選択肢ではなくて、再生可能エネルギーに進んでこそ、地域の雇用も経済も活性化できるし、安全だと。これも大きな争点ですね。

さらにいえば、マイノリティの権利、個人の尊厳、あるいは民族差別やヘイトスピーチのようなものをなくしていくことも真剣に考えていかなくてはならない。本当に一人一人が自分らしく生きていける社会にしていくということですね。これも重要。

安倍さんは、大阪城にエレベーターをつけたのが最大のミスだと言いましたけど、僕はやっぱりお年寄りも障害を持った方も、ベビーカーでも大阪城のてっぺんまで登りたいたいっていう願いに応えるのが、今の世界の流れだと思うんです。私は平然とあんなスピーチをする総理大臣がいることこそ、最大のミスじゃないかと思っていますよ。こういう問題をきっちり訴えていきたいと思います。

「明日に希望が持てる政治に」をキャッチコピーに、3つの政策で誰もが当たり前に充実した人生を送れる社会を作っていきたい

‐‐ 選挙ドットコム
今回の参院選で、共産党としてとくに訴えたい政策はどのようなものですか。

小池氏
我々は今回、大きく3つの政策を訴えていきます。

ひとつめは「8時間働けば、普通に暮らしていける社会」の実現です。最低賃金が低すぎますから、ただちに全国どこでも1000円、できれば1500円に引き上げる。そして正社員があたりまえの雇用環境を作ります。

ふたつめは「暮らしを支える安心な社会保障」への改正です。高すぎる国保料を引き下げ、物価が上がっても年金額が上がらない仕組みを廃止して「減らない年金」に。低年金者の年金支給額を底上げします。

みっつめは「お金の心配なく学び、子育てができる」環境づくりです。学費の無償化と自民とは言っていますが、その対象は全体のわずか1割。すべての学生を対象に授業料を半額にして、段階的に無償化をめざします。また、返済不要の給付型奨学金制度を70万人の学生が利用できるようにします。子育てについては認可保育園を大増設し、保育士の給料も5万円あげます。

今言った事を全部実現するための財源は、消費税ではありません。大企業の法人税をせめて中小企業並みに引き上げる。、株で大儲けしている富裕層から、きちっと平等に所得税を徴収する。そして在日アメリカ軍への思いやり予算の圧縮。これらの政策の実現で確保した税金を充てるというのが、我々共産党のプランです。

こうした政策を「明日に希望がもてる政治に」をキャッチコピーに実現して、国民みんな、地方に住む人や今、困窮している人、マイノリティの人も、だれもが将来に明るい希望が持てる充実した人生を送れる社会を作っていきたいと考えています。若者を中心に蔓延する「自分の力では現状は変えられない」という諦めを払拭するためにも「政治が変われば社会は変わる!」と発信し続ける

‐‐ 選挙ドットコム
今回の参院選に期待することはなんでしょうか。

小池氏
とくに若い人たちにとってみると、政治が遠くなってしまっているし、日本全体に「自分の力ではなかなか政治って変わらないんじゃないか」、「苦しい現状なのはしょうがないかなって」諦めるムードみたいのがありますよね。別に、今の安倍政権がやっていることがいいと思っているわけじゃないけど、これしかないのかな、仕方ないな、みたいに思っていらっしゃる。

でもそうじゃないよと。みんなで力を合わせれば政治は変えられるし、政治が変われば暮らしをもっと支える仕組みも作れるし、暮らしが楽になればそれぞれの懐もあったまって、本当の意味での景気回復につながっていく、そういう希望の持てる政治が作れるんだよというメッセージを我々は発信していきたいと思っています。

我々は、ただ安倍政権を「悪い」「ダメだ」とだけ言っているんじゃないんです。安倍政権を終わらせた後、こうやったら世の中を変えられるよ、こういう方向に社会が進めば希望があるんだという建設的な案をたくさん出して、訴えていきます。

一人区での野党統一候補擁立を決めた理由は「変わるかもしれない」という期待・希望が持てる選択肢を提示するため

‐‐ 選挙ドットコム
今回の参院選では、いくつかの野党が協力して、1人区の候補者を一人に絞ったところにも注目が集まっています。統一候補を立てた狙いはどんなところにありますか?

小池氏
これは先ほどお話しした「希望」とのかかわりが大きいです。政治に対しての諦めは、それを作る選挙にも及んでいて、若い人たちを中心に「どうせ1票を投じても、もともと自民党に決まっちゃってるんでしょ」というのがあるじゃないですか。そこで我々野党は、全国に32ある1人の当選者が出る1人区に狙いを定めました。

ここにそれぞれの野党がバラバラに出て戦ったら「安倍政権はいやだ」という意思表示として、野党の候補に入れる票も割れてしまい、勝てません。だから「投票したって意味がない」「どうせ変わらない」となってしまう。だから1人を選ぶ1人区に限っては、野党が候補者を一本化して自民党としっかり戦える体制を作ったわけです。これなら「安倍政権はいやだ」という意思表示の投票は、1本化した野党候補ひとりに集まって、NOという意思表示が結果としてあらわしやすくなる。

参議院選挙はとくに1人区がどうなるかで力関係は大きく変わります。ここで大きな流れができると、比例代表選挙や複数の選挙区にもエネルギーが及んで行くし、次の選挙の追い風にもなっていって、自民党を少数に追い込んでいくような形にできるかもしれません。

暮らしに希望を与えるための、第一段階としての希望、希望の源が野党で一致して闘うことだと我々は考えているんです。もちろん細かなことを言えば野党間の政策の違いはあります。でもそれを乗り越えて大同団結してやろうじゃないかと。

そして今回は、13項目の共通政策の一致も共闘する野党間で確認しているんです。単に、選挙に勝つだけではなく、安倍政権に代わる新しい政治・政策をしっかり打ち出しています。内容としては、消費税増税を注視して公平な税制を作るとか、原発ゼロを目指すとか、沖縄の普天間の早期返還・撤去を求めるとか、ジェンダーの平等を保障するとか、憲法9条は変えさせないとかね。こうした共通政策を力強く訴えて、1人区は野党の統一候補でなんとしても勝ちたいと、そう思っています。

我々の声が若い人の心にも届くように、サポーターたちの声を取り入れてサイトや宣伝物をイメージチェンジ。ポジティブなメッセージを全面に

‐‐ 選挙ドットコム
共産党さんといえば、最近、積極的にイメージチェンジを図っておられる印象が強いです。SNS活用のほかサイトも非常にスタイリッシュで、若い人たちからの反応も大きいのでは。

小池氏我々の党ではずっと議論を重ねて、昨年、サポーター制度というのを作りました。正式名称は「JCPサポーター」というんですが、共産党をもっと開かれた政党にするために、若い人の声を取り入れるための制度です。現在、このサポーター数が1万人を超えているんです。とくに若い人が中心なんですが、そういった人たちに共産党の見せ方というかイメージについての意見を募ったら「あらゆる宣伝物がダサイ」という声が多くてね。ダサイだけじゃなく、ネガティブな言葉のチョイスが多いという指摘もありました。なにかにつけて「反対」とか「中止」とか「ストップ」とかいう言葉を使ってアピールしているけれど、もっとポジティブに、前向きな形、言葉で日本を変えるんだというメッセージを出してほしい、という声も非常に多かったんです。

そうした声をもとに議論して、サイトも新しくし、宣伝物もかなり工夫しました。サポーターのサイトは、クリックすると選挙者の事務所にも飛べるし、事務所に来てください、ボランティアお願いしますなどというメッセージも出せる仕組みにして。あと街頭演説するときなんかの告知も、すぐ見られるように改善しました。

サイトでは動画もかなり力を入れてやっています。アニメーションもこれからどんどん発信していくつもりだしweb広告も強めたいと思っています。YouTubeなどにも色々出してやっていますけど、今とくに若い世代はネットで情報を収集して、いろいろなことを判断する傾向が非常に高いと思いますので、全力でとりくんでいます。

個人では乗り越えられない壁は、政治で乗り越えるしかない。世の中の障壁を壊し、多くの人の幸せを実現できる環境を作るのが政治の役割

‐‐ 選挙ドットコム
このインタビューの企画として、さいころをふっていただいて、出た目の番号の質問についてお答えいただきたいと思うのですが。

小池氏
いいですよ。1番が出ましたね。

‐‐ 選挙ドットコム
1番の質問です。「政治」で何ができますか?「政治」でないとできないこととは何ですか?

小池氏
僕は国会議員になるまで医者をやっていたんです、病院でね。ひとりの医師としてできることっていうのは、生涯かかっても限りがある人数の患者さんの治療に携わること。これも非常に重要だと思うし、意義ある仕事だと思っていますが、医師として仕事をするうえで医療制度の不備や医療現場の苦しさなどに大きな疑問を抱えても、これを医師の立場でどうにかしていくっていうのはすごく難しいことだと痛感したんです。

例えば、医療スタッフみんなが必死で治療して、ある程度よくなってきても、医療制度が阻んで、完治するまで長期入院していられない。退院したあと行く病院がなくて、転々としているうちに亡くなってしまう方。本人には当然、自覚症状があって辛かったはずなのに「なんでこんなになるまで病院に来なかったの?」と聞きたくなるような、働き盛りのガンの患者さんもいましたよ。その人は「仕事がとても忙しくて、病院にかかって休みをとるだけの経済的余裕がなかった」っておっしゃっていました。個人タクシーの運転手さんで、糖尿病でずっと診ていた方は、病状が深刻でどんなに入院を勧めても「先生、車を買い替えたばっかりだから、入院なんかできないよ。いっそ死んだら保険金が入るから、そのほうが家族のためには都合がいいんだ」なんて言われたこともありましたね。

こうしたことは、ひとりの医師として患者さんにどんなに尽くして治療をしても、社会のありかたが理由となって患者さんの回復を阻んでいるわけですよね。ひとりの人間でやれることはいっぱいあると思うし、素晴らしいことだと思う反面、何度もこのような経験をして、ひとりの人間・医師としての限界を感じたというのが、私が政治家を目指すことになった大きな理由なんです。

個人じゃどんなに努力してもそれを阻む、乗り越えられない壁というものがある。それは政治で乗り越えていくしか、ないのではないかと。たとえば一つの法律を作る、不備のあった制度を改正することで、個人ではとても乗り越えられない壁を壊して、希望を与え、結果的に何百万人、何千万人の命を守ることができる。

僕自身の政治家としての経験では「オプジーボ」という抗がん剤が、以前まで数千万円というめちゃくちゃ高い薬価だったのを、安倍首相に予算委員会で引き下げを迫り、実現できました。この「オプジーボ」というのは、高い。高いけれどもガンの治療にはかなり画期的な薬だったんです。当時、アメリカとかドイツに比べて、日本ではその薬価が何倍も高いのはおかしいんじゃないかと。そうしたら、結果的には半額になったんですよ。それによって国内でもこの薬を使える人が、何万人も増えました。

こうしたことはやはり、ひとりの医師の立場ではできないことで、政治だから、政治家だからこそ、取り組めることなんじゃないかと思います。国民の暮らしを阻む壁を政治で乗り越え、世の中の仕組みを変えていくことは、時間もかかるし結果もなかなか出にくいものですが、実現すると、数えきれない人の幸せにつながっていく。これはやはり政治にしかできないことだと、僕は思うんです。

一票で変わらない、と思えば何も変わらない。一票で変わる、と思えば政治を変えられる

‐‐ 選挙ドットコム
次は、2番が出ましたね。投票に行くかどうか迷っている人がいるとすれば、その人にどのように一票の重さを伝えますか?

小池氏
一票ってのはね、本当に重いと思っていて。それこそ1票差で選挙の結果が決まることもあるんですよね。
国政選挙ではあまりないけれども。
前回3年前の参議院選挙でも新潟選挙区では数百票差で自民党に対して野党の統一候補の森裕子さんが勝ったんですよね。
テレビによく出ていますがすごく元気な女性じゃないですか。あの人が国会にいるといないとでは大きな違いですよね。それが数百票で決まる訳ですからね。やっぱり一票の力ってものすごく大きいと思います。

自分の1票くらいで変わらないかもしれない、とみんなが思ったらみんな選挙に行かないから。その人たちがみんな何とか自分の一票が活きるかなと思ったてみんなで行けばそれは何百票、何千、何万票になる訳で。
ぜひせっかくの、貴重な権利ですから、そして18歳まで選挙権が広がっていますから。
その最大の権利を活かそうじゃないかと。2000万円貯めるより1票で政治を変えようと。一票ってのはそれだけの重みがあるんだということを私は訴えたいと思います。一票一票が積み重なって政治が変わっていくんだろうと思います。ぜひ投票に行きましょう!

© 選挙ドットコム株式会社