諫早の田崎さん抽象画展 地元の土、砂石を絵の具に 心象風景刻む40点 山下画廊で21日まで

2016年秋以降に制作した作品を披露した田崎英昭さん=諫早市、山下画廊

 長崎県諫早市周辺の土や砂石で作った絵の具を使い、自身の心象風景を自作のキャンバスに深く刻む-。同市在住の現代美術家、田崎英昭さん(78)の抽象画展が13日、東小路町の山下画廊展示ホールで始まった。「ミクストメディア」といわれる種類の異なる画材を使って描かれた約40点が並ぶ。21日まで。
 1940年、同市生まれ。64年、長崎大学芸学部美術科(当時)を卒業後、本県の公立中美術教諭に。県内外の公募展での受賞歴を誇り、定年退職後、自宅そばのアトリエを拠点に創作一筋の生活を送る。同画廊での個展は3年ぶり。
 「作品づくりはキャンバスと絵の具づくりから」-。ベニヤ板などを切り、布などを貼ったキャンバス。ふるいをかけた土や砂石に水などを混ぜて作る絵の具は、自然の色や質感を重んじる。「既製のアクリル絵の具や顔料なども混ぜるが、少しずつ違う色を重ね、画面の奥に引き込む深みと透明感のある色を狙う」
 幾重にも重ねた色の上から、心に浮かぶイメージを彫刻刀やきりで彫る。無意識に彫るうちに建物や植物などの形を成し、時には孫の顔も浮かび上がる。刻まれた凹凸の中に絵の具を差し込み、奥深い色と形の世界へいざなう。
 創作テーマは一貫して「生と死」。「想」「識」「楽」「衆」-。漢字一文字で表す題名は、自身の記憶や喜び、悲しみが込められている。縦横1メートルを超す大作の「祈(き)」は十字架を基調に、茶や濃紺、薄緑などの絵の具を重ねたり、散らしたりした。市芸術文化連盟の機関誌「諫早文化」第14号の表紙作「識(しき)」をはじめ、0号の小品も目を引く。田崎さんは「思い切り彫ったり、色を飛ばしたりするのは、自分と画面との勝負。作品を見て楽しいと思ってもらえたらうれしい」と話す。観覧無料。

© 株式会社長崎新聞社