県内人口、広がる地域格差 「地方創生」後 かながわ参院選2019・足元から

2015~19年の人口増減の状況

 神奈川県内市町村の人口増減の傾向が変わらず、増加の目立つ横浜、川崎両市と、減少が続く横須賀三浦(4市1町)、県西(2市8町)の2地域との合計人口の格差が広がっていることが分かった。安倍政権の掲げる「地方創生」が実質的にスタートした2015年の横浜、川崎両市を合わせた人口は2地域の4.85倍だったが、19年には5.04倍に拡大。都市部への人口流出に歯止めが掛からない状況が続いている。

 毎年の人口増減を捉えた県の統計によると、15年1月1日時点で371万1千人だった横浜市の人口は、今年1月1日で374万人に増加。146万1千人だった川崎市も151万7千人に増えた。

 少子高齢化を反映し、横浜市は既に自然減(死亡が出生を上回る状態)に転じているが、それ以上に社会増(転入が転出を上回る状態)が多い状況だ。川崎市は自然増(出生が死亡を上回る状態)と社会増が重なり、武蔵小杉駅周辺で開発が続く中原区をはじめ全7区で人口が伸びている。

 一方、横須賀三浦は15~19年に71万5千人から70万1千人に減少。県西も35万人から34万人に減った。この両地域は、県全体では年間5万人前後の人口増が続いていた1990年代にいち早く人口減が始まっており、回復への道筋が見えない状況が続く。

 市町村別でも、減少ペースが速い自治体は両地域に集中する。2014~18年中に県内の市区町村別で人口減少率が上位5位以内となった自治体は、三浦市と、大磯、松田、山北、箱根、真鶴、湯河原、愛川の7町、清川村だった。

 16~18年中に3年連続で人口減少率が県内トップだった山北町は、転入者数を19年度に333人に増やす目標を地方創生の総合戦略に掲げたものの、達成できていない。主に20代が小田原、南足柄両市などに転出する傾向に変化は見られず、同町は「公共交通の不便さが町を離れていく人の主な理由」としている。

 同様の課題を挙げる湯河原町も、小田急線ロマンスカーの湯河原駅への乗り入れ誘致を総合戦略に盛り込んだが、実現には至らないままだ。19年度には65歳未満の転入者を800人とする目標も定めているが、18年の実績では10歳未満~30代は転出超過で、60~70代を中心とした40代以上が転入超過だった。

 県内で唯一、過疎地域に指定された真鶴町は、空き家でのお試し移住体験をきっかけとした移住者が増えている。しかし、人口減を食い止めるまでの効果はなく、担当者は「出て行く人を減らさない限り問題は解決しない。定住し続けてもらうには、子育て中の女性らが働きやすい場が必要」と受け止めている。

 県全体ではなお人口増が続き、920万人に迫っているが、県は「三浦半島や県西地域の人口減の傾向は変わっていない」と現状を認識。「東京への転出超過を防ぐことと合わせ、引き続き課題として取り組む」としている。

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