廃棄するキャベツを使ってウニ養殖 市場で実験

トゲに絡みついたキャベツを口に運び、成長を続けている

 市場で廃棄するキャベツを使い、ムラサキウニの養殖を試みる実験が、川崎市地方卸売市場南部市場(川崎幸市場=幸区南幸町)で行われている。狙いは食品ロスの軽減とオリジナル商品の開発。緒に就いたばかりの試みは、魚介の“プロ”の仲買人たちからも関心を寄せられている。

 多くの仲買人が行き来する市場の一角で、プロジェクトはひそかに進んでいた。水槽内にはトゲを艶めかしたムラサキウニ。そしてキャベツの切れ端が浮いている。

 「食べているところが見えないので手応えはないけど、ちゃんと食べられるものになっているか楽しみ」。いとおしそうに水槽を見詰めるのは、発案者の同市場職員鈴木庸平さん(32)だ。

 市場では2016年から大型量販店との取引が進んだことで、キャベツの外葉など売り物にならず廃棄物として処理される野菜も増大。同市場によると、キャベツはひと月当たり800トンの入荷に対し、3~4トン程度廃棄されているという。

 「廃棄量が目に見えて増え、なんとかならないものかと思っていた」。状況を改善する一手として着目したのが、県水産技術センター(三浦市三崎町)が開発した技術だった。

 天然のムラサキウニは、三浦半島沿岸に広く生息するが、身が少なく、食用には適さない。一方、磯焼けの原因になるとし、駆除の対象となっていることから、同センターは三浦産キャベツを餌として養殖し、味を改良して流通を拡大する試みを進めている。

 知人を介して研究者を紹介してもらい、昨年、実験に乗り出したが、すぐに成功とはいかなかった。

 1年目は150~200匹飼育したところ、数日後に全滅。「明確な理由は突き止められていないが、人工海水の質がウニに悪かったのかと思う」。反省を糧に、2年目の今年は5月下旬に60匹に絞ってスタート。十数匹死滅したものの、まずは順調に育っている。

 水温を20度前後に保ち、水質、塩分濃度にも気を配らなければならない。「気温が高くなると気になって見に来てしまう」と鈴木さん。餌やりは週に2度ほど。キャベツを細かく刻んで水槽にまく。もっとも、ウニがキャベツを口に運ぶ様子は観察が難しく、成育の成否は「割って中身を見ないと分からない」という。

 プロジェクトは市場関係者からも注目が集まる。「水が冷たすぎなんじゃない? とアドバイスをくれる人もいる」と鈴木さん。養殖は今月上旬までの予定で、場内の鮮魚店にも声をかけ、プロの目で品質を確かめてもらうつもりだ。

 将来的には三浦にならい、柑橘(かんきつ)類を餌として試す考えもある。鈴木さんは「採算に乗せるのは大変だと思うけど少しずつ規模を大きくし、場内で売れるようにしたい」と収穫を心待ちにしている。

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