100万円台でお値段以上の走りを味わえるスズキ・スイフトスポーツ/市販車試乗レポート

 オートスポーツ編集部web試乗企画第7弾は、スズキ・スイフトスポーツを取り上げる。スイフトスポーツは、標準のスイフトに対して、装いも動力性能もスポーツカーの要素を取り入れた国産ホットハッチだ。

 2005年に登場した初代スイフトスポーツから受け継がれているのは、『求めやすい価格でスポーツ走行が楽しめるコンパクトハッチ』というコンセプト。

スズキ・スイフトスポーツ(右斜め)
スズキ・スイフトスポーツ(サイド)
スズキ・スイフトスポーツ(左後ろ斜め)

 最大の強みは“欧州で鍛えられた走り”で、2017年に登場した現行の3代目は、より速さを追求するために、軽量高剛性の新プラットフォーム『ハーテクト』や軽量衝撃吸収ボディ『テクト』などを採用したことで、70kgの軽量化を実現している。

 また、優れたグリップ性を武器にする195/45R17サイズのコンチネンタル・コンチ・スポーツ・コンタクト5を標準装備するなど、これまで以上にスポーツ性を強調させている。

スズキ・スイフトスポーツ(フロント)
スズキ・スイフトスポーツ(リヤ)
スズキ・スイフトスポーツのホイール。タイヤは195/45R17 81Wのコンチネンタル・コンチ・スポーツ・コンタクト5

■現行型はターボエンジンに切り替えて、歴代最強のスペックを実現した

 現行モデルの最大のトピックは、ターボエンジンへ切り替えたこと。先代(ZC32S)までは1.6リッター自然吸気直列4気筒DOHCエンジンを搭載し、爽快で上質さを求める演出をしていたが、現行型はそれとは決別。

 力強い走りに磨きをかけるために、1.4リッター直列4気筒DOHCターボ(KC14C型)ブースタージェットエンジンを搭載。最高出力より最大トルクの増大を主軸に置いたエンジンで、スイフトスポーツ史上最強の最高出力140馬力、最大トルク23.4kgmというスペックを叩き出している。

1.4リッター直列4気筒DOHCターボ ブースタージェットエンジン

 サスペンション形式や米モンロー製のショックアブソーバーなどはこれまで通り。トランスミッションは6速MTと6速ATが用意されている。

スズキ・スイフトスポーツのシフトノブ。シフトカバーには赤いステッチがあしらわれている。

 今回はクルマ好きを唸らせる6速MT車の試乗レポートをお届けしよう。

■小さくても攻める走りを味わえる本命の6速MT車

 さっそくスイフト・スポーツに乗り込み、まずは一般道へ。このクルマは、アクセルを踏み込んだ瞬間から、湧き上がるトルクでクルマ全体に血が巡っている感覚を味わえる。『これぞ、スイスポだ』と自然に笑顔があふれる。

一般道でも不快な突き上げはなく、普段使いでも不便を感じることはないだろう。
ホールド性の良い専用セミバケットの乗り心地は、固すぎず、座り心地は良好

 ターボになったからと言って加速のターボラグは感じず、自然吸気エンジンのようにスムーズな走り出しをみせる。また、トルクが大きくなったため、1速の状態でも力強く加速していくので、マニュアル初心者でも発進に苦労はしないはずだ。スポーツモデルによくありがちな足回りの硬さに起因する不快な突き上げもないため、普段使いでも不便を感じることはないだろう。

助手席に座る森園れんさん

 加速もパワフルで、高速道路での合流もスムーズに行えた。車体は70kgの軽量化が施されたが、走行中にふわふわした感覚はなく、高速安定性は良好。道路の継ぎ目や段差の乗り越えシーンでもストレスを感じず、安心感の高い走りを体感できた。後席乗員からは、高速域での静粛性に不満も出たが、これはこのクラスにおいては許容範囲といえるだろう。

スズキ・スイフトスポーツのペダル

 峠道では、クイックで切れ味のあるステアリングのおかげで、クルマの挙動性もつかみやすく、軽い車体と高性能タイヤも相まって気持ちよくコーナーを曲がれた。やや右寄りに感じるペダルレイアウトを除けば、どこまで攻められるかと挑戦したくなる感覚を味わえる。

■使い勝手も室内空間も日常使いに申し分なし

 ボディサイズは全長3890mm、全幅1735mm、全高1500mmで、現行型から3ナンバーサイズとなり、ワイドトレッドに進化した。

 前席は専用のスポーツシートを採用。座面が硬めで、サイドサポート性も強いため、ドライビング時には身体をしっかりとホールドしてくれる。専用のメーター類も見やすく、インパネまわりのスイッチ類もすっきりと並んでいるため、操作に戸惑うことはないだろう。

スズキ・スイフトスポーツの前部座席
スズキ・スイフトスポーツ専用のシートには“Sport“のネームロゴが入る
フロントドアは大きく開くため足の出し入れがしやすく、乗り降りもしやすい。
スズキ・スイフトスポーツのスイッチ類
スイッチ回りは赤いドアリムガーニッシュ

 
 後席の居住性も良く、室内高が十分に確保されている。フロントシートの下に足を入れるスペースもあるので、頭上も膝回りも窮屈さは感じない。

スズキ・スイフトスポーツの後部座席
後部座席も広く、ゆったりとすることができる。

 ラゲッジルームも週末にスーパーマーケットとドラックストアのハシゴをするくらいの荷物は十分に詰める広さが確保されている。後席はワンタッチで前倒しできるので、荷物の量に応じてアレンジが効くのもうれしいポイントだ。

森園れんさんのトランクチェック
スズキ・スイフトスポーツのトランク
後部座席を倒せば積載性は大幅にアップ
トランクに入る森園れんさん

 インテリアは歴代モデルから継承されているブラック×レッドのコーディネートでまとめられている。質感も高く、目の肥えた層にも十分にアピールできる仕上がりだ。

スズキ・スイフトスポーツの車内(フロント)
スズキ・スイフトスポーツのハンドル
タコメーターはレッド、スピードメーターのダークシルバー。中央マルチインフォメーションディスプレイでは燃費や走行Gなどを把握することができる。

 インテリアの仕上がりは、スイフトスポーツらしさが一番強く表現されているボディ色のチャンピオンイエロー4とのマッチングも完璧。性能はもちろんだが、この独自のデザイン性の高さも、スイフトスポーツが高く評価されている要因だろう。

スズキ・スイフトスポーツのフロント部
スズキ・スイフトスポーツのフロントサイドのエアロ
スズキ・スイフトスポーツのロッカパネル
スズキ・スイフトスポーツのエンブレム
スズキ・スイフトスポーツのリヤランプ

■ライバル車以上の運転支援装備も完備。最大の強みは求めやすい価格設定

 最新モデルらしく、先進の安全支援装備もしっかりと用意されている。単眼カメラとレーザーレーダーで歩行者やクルマを検知する『デュアルセンサーブレーキサポート』はオプションで設定されている。8万6400円と求めやすい価格帯なので、積極的にチョイスしたいオプションだ。

カメラは4箇所に設置されており、パック時には全方位モニターで駐車も楽にできる。

 そして、スイフトスポーツの最大の強みが、その価格設定だ。車両価格は183万6000円(6速MT)~190万6200円(6速AT)で、国産ライバルのトヨタ・ヴィッツGR SPORT(車両価格:207万6840円)や、ホンダ・フィットRS(車両価格:198万720円/Honda SENSING未装着)よりも求めやすい。

 スイフトスポーツは高性能で走りの魅力が高く、所有欲をしっかりと満たしてくれながら、100万円台で購入できるため、コストパフォーマンスが高い。この抜群のコストパフォーマンスが、スイフトスポーツが歴代を通して高い人気を保持している理由だろう。
 
“楽しいクルマが欲しい”という気持ちは、クルマ好きなら誰でも共通する思い。スイフトスポーツはそんな願いを叶えてくれる1台だ。

森園さん次回は森園れんさんの試乗インプレッションをお届け

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