西武に12球団最大級“新道場” 球団フロントの思い「打撃の強さにつながるのでは」

二軍施設を紹介する西武の球団本部本部長補佐・広池浩司氏【写真提供:埼玉西武ライオンズ】

本拠地をイメージできる練習環境に打撃レーンは4か所、最新映像機器も設置

 西武の本拠地、メットライフドームエリアは改修工事が進められているが、この度、新しい選手寮、室内練習場が完成した。新施設の建築に携わった球団本部本部長補佐、広池浩司氏にそれぞれの施設でこだわったところや新施設への思いを聞いた。

 新施設を建築するにあたり一番こだわったところは、室内練習場に広い空間を創出することだ。これまでは、マシンでバッティング練習ができる場所は2か所しかなく、時間によっては順番待ちの列ができていた。

「広さは12球団有数だと思います。50メートル四方のスペースの中にダイヤモンドがすっぽり入っています。人工芝もメットライフドームと全く一緒で、アンツーカーも同じです。そのため、ファームにいるときから、メットライフドームをイメージできる練習環境が整っています。バッティングレーンは4か所あります。ブルペンは5か所あり、うち1か所にはトラックマンと、フォームを数秒遅れで映像で確認できる装置を設置予定で、自分の感覚と客観的な数字を確認しながら練習することができます」

 さらに、現在の寮の跡地にサブグラウンドを設置し、投手が自分の投球に集中できる環境を整える。

「バッティング練習をしていると、ピッチャーはボールを避けながら練習しなければいけません。私たちのチームの課題は投手の育成です。1つ1つの練習に集中できる環境ができるのは、投手力の育成には大きいと思います」

 また、ファンが練習を見学できるスペースも新たに設けられ、親近感を持って選手を応援してほしいと広池氏は話す。
「キャンプではファンの方に近くで見ていただけることはありましたが、ファームの施設にはそのスペースがありませんでした。頑張っている選手を『1軍で活躍してくれたら』という気持ちで応援してもらえたらと思います。選手も『見られる』という緊張感をもって練習して欲しいです」

新選手寮はコミュニケーションと食事にこだわり「食堂で野球の話がしたい」

 新しい選手寮には、監督、コーチや選手同士がコミュニケーションを取れる場所を作った。食堂は居心地のいい空間になるよう心掛け、選手たちが「部屋に戻るよりも食堂で野球の話がしたい」と思える空間づくりに力を入れた。

「これまでの寮には、腰を落ち着けて話をする場所がありませんでしたので、そういう場所を作りました。食堂も、今までは食事が終わるとみんな部屋に戻ってしまっていたのですが、新しい食堂は景色が良く居心地がいい。『ここにいたいな』と思える場所になってくれればと思います」

 今季からチームには管理栄養士が帯同し、きめ細やかなサポートを行っている。選手たちにとって、体調を維持するために食べることは非常に大事だ。そのため「いっぱい食べたい」という気分になれるよう、使用する食器にもこだわった。
 
「選手たちは、食べることが基本です。食堂に入るたびに『ここでご飯を食べたいな』と思える、食事が楽しくなるような雰囲気づくりはできています。今シーズンから1軍と2軍に1名ずつ管理栄養士がついていますが、選手の小さなところも見逃さずに、食べるタイミング、水分の取り方、食べるものなど話をしてくれています。そういう効果も出てくると思います」

 西武は本拠地のメットライフドームと、2軍が使用する西武第二球場が隣接している。そのため、1軍で活躍する主力選手が、試合が終わってから室内練習場のマシンを打ちにいくこともある。

「自分たちよりも何倍も実力のある選手が、遅い時間までバッティング練習して、休みの日も出てきて打っている。そういう姿を若い寮生が見たらどう思うか。そこに居合わせると一緒に練習ができ、ものすごい財産になります。練習熱心で、惜しみなく教えてくれる選手が多いので、そういうところがチームのバッティングの強さにつながるのではないかと思っています」

 2軍で汗を流す選手にとっては、メットライフドームは近くて遠い場所かもしれない。1軍のグラウンドに近い練習環境が整備されたことが、少しでも選手たちの励みになり、多くの若獅子たちが1軍のグラウンドに羽ばたいてくれることを期待したい。(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)

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