球数制限を考える 異なる事情、思い交錯 公立、私学、選手、指導者…

 熱戦が繰り広げられている高校野球の第101回全国選手権神奈川大会。梅雨の影響で1、2回戦11試合が順延され、8校が2日間の連戦を強いられた。投手の負担軽減に向けた球数制限の是非が議論される中、現場の指導者や選手からはさまざまな声が聞かれた。

 連戦に対応せざるを得なくなった県相模原は2回戦で4投手を起用。エース天池の登板を回避して翌日の3回戦にぶつけた。佐相真澄監督(60)は「勝ち抜くためにことしは初めて6投手をベンチに入れた。それでも、絶対的エースがいれば頼ってしまう」と打ち明ける。

 今春の関東大会では5連戦という過密日程が組まれ、東海大相模は計6投手をつぎ込んで初の栄冠に輝いた。球数制限導入の論議とも無関係ではない。佐相監督は「東海はどの投手もレベルが高い。そんな投手は何枚もうちに来ない。公立の立場からは(球数制限は)きつい」と話す。

 球数制限問題は新潟県高野連が100球までの制限導入を表明したことで本格的な議論が始まったが、第2シード・藤沢清流の榎本正樹監督(31)は「制度として導入しなくても、投手を酷使する気はさらさらない。指導者自身が選手を守ってあげられるようにしなければ」と訴える。

 好左腕のエース渡辺を擁した藤沢西・三宅裕太監督(30)も、「夏に全てを懸けてやっている子もいる。30球と決めたら30球しか投げられない肩になってしまう。公立、私学と事情は違うし、全てを統一するのは難しい」と導入には否定的な立場だ。

 比較的前向きな意見もある。「新潟の件は、方向性としてはこうあるべきなのかな」とは、市ケ尾の菅沢悠監督(32)。同校では普段の練習から独自の球数ルールを導入している。ただ、「システムとしてうまく回ればいいが、100球などと限定すると難しくなる。もっと議論を重ねていくべきだ」とも語る。

 実際にプレーする球児の思いも無視できない。今大会2完投の横浜商・エース篠崎は「球数で負けるなんて嫌だ。先生が疲労の具合を聞いてくれて、いいコミュニケーションでやれている」。一方、初戦で完封した元石川の右腕新保は中学時代に野球肘になった経験があり、「答えは出せないが投げすぎはよくない。一番大切なのはけがなく野球をすること」と実感を込めた。

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