二回2死一、二塁。9番森川の浅い左前打に、向上が誇る「走塁グループ長」の三塁コーチャー鶴田がぐるぐると腕を回した。
二走はピッチャー松村だったが、鶴田が「レフトの肩は強くない」とナインと共有していたデータに基づき、松村は自信を持って滑り込む。背番号1が先制のホームを踏み、「足攻ショー」が幕を開けた。
四回には1死一塁から、国崎が二盗成功。さらに浅めの中飛で果敢に三進し、石坂の適時打で生還する。桐蔭学園とは昨秋、今春と県大会で戦っており、「データはたくさんあった」と鶴田は笑った。
131人の大所帯の向上には、レギュラーでなくても部員全員に役割がある。選手たちは「走塁」「守備」「打撃」のグループに分かれて日々プレーを研究し、昨年5月からグループ長を務める鶴田は毎日30分の走塁練習で「失敗を恐れるな」とナインを鼓舞。大会前には相手投手の癖や、外野手の送球などを1日3時間かけて分析してきた。
今春のセンバツ出場校に、圧巻の計6盗塁で走り勝ち。鶴田は「打撃に盗塁を加えると攻撃力が『掛け算』になる。どんな相手も圧倒できる」と胸を張った。